第3話  幸太朗元カノ?に容疑者にされる

「警察沙汰になるのかい?」


「それが、物損、盗難かもと言っても、金額にして100円にもみたない。警備や監視カメラの映像的にも外部説は考えられない。校内の生徒の悪戯だと思えるからうちうちで解決したいと。」


写真には粘土で作られたと思われる人間の頭部に赤いものが無数に刺さってるものが写っていた。


「こっこれはなんだい?」


「赤いのは木管楽器に使われるリードってやつです。赤く絵の具で染められてまして。」


「趣味が悪いな」


「ここん所テスト前部活禁止期間で、その間にやられたみたいです。部員達のリードケースからこぞって使用中のリードが無くなっており盗難?となったのですが、どうもこの粘土に赤く染めて刺したみたいです。使用中のリードは部員達にとっては調整した大事な物ですが、値段はつきませんよね。」


現場写真を見せながら間中は説明を続けた。


「1番派手なのは楽譜があたり一面にばら撒かれ溶かされた松脂で汚されていたですかね。今無くなった楽譜がないか確認中です。その他、ティンパニのネジが全部外され、金管楽器の楽器ケースの持ち手も外されていっしょに袋に入って吊らされてた。吹部の験担ぎマスコットのマミュマミュ(南の国の呪術的人形)の精気が宿る髪の毛が丸刈りにされていたとか。」


「で、なんで幸太朗に容疑が?」


「この粘土細工みたいな気味が悪いものを作るのはこいつくらいだと2年1組のクラリネットの木原瑛里きはらえりから声が出たらしくて。」


その名前に覚えがあった。


「あれ?木原とは幸太朗にラブではなかったのか?」


手でハートを作って幸太朗に尋ねると、


「俺にSNS勝手に追加してきたくせに、最近、サイコパスって悪口いうから俺嫌い。俺は純粋なホラー好きなのに。」



ホラー好きに純粋もなにもないとは思うが。木原は確か昨年、幸太朗と同じクラスで、2年になってクラスが離れてからもしばらく幸太朗目当てに通ってくるのをよく見かけたものだ。幸太朗のSNSの画面が変なのは周知のはずだ。


「で、疑いは晴れたのか?」


「だって俺してないもん。犯人みつかるまで剣道部出禁くらったけど。」


「それ、疑い晴れてないな。しかしなんで剣道部出禁?科学部も出禁しなきゃなのか?」


そもそも出禁なんて処分誰が下すのかと真剣に悩んでると、間中が、


「幸太朗が犯人なら、何をやり出すか分からない。竹刀振り回して誰か怪我させたら剣道部も危ないからでしょ。犯人が見つからないで、この噂が浸透したらね。やばいですよね。」


とキャラメルチョコの包み紙でカエルを作りながら答えた。それをきいて幸太朗はまたしおしおとしぼみ始めた。鬱陶しいことこの上ない。


「仕方ない。やるか。」


と重い腰をあげれば、


「はい。そう言って下さると思ってました。」


間中はかしこまって答えた。


*リードとは楽器に用いられる薄片の事で、振動して音源となる。この高校の吹奏楽部だとクラリネット、サックスで使われる。各自購入の消耗品でありクラリネットで一箱10枚入り3千円くらい。暖竹製である事が多い。

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