第2話 事件ファイル1「吹奏楽部」事件発覚初日5/27(木)

 何を隠そう私と幸太朗は同じクラスだ。従って幸太朗が生徒指導室に連れていかれ萎れしおれて帰ってきたのを私は見てはいた。面倒くさいので、放置しておいたら、剣道部をサボったのか出禁を喰らったのか今、理科室2でデカい身体をまるめて亀と鹿の間に挟まっていた。そのままドアを閉めて帰ろうとしたら後ろから生徒会会計にして科学部会計化学班の間中まなかに押されて一緒に理科室2に入ってしまった。


「間中くん、申し訳ないが私は急用を思い出して、失礼するところであったのだが。」


丁寧に告げて出ようにもドアを背に腕を組んでひょろりと立たれると出にくい。


「如月部長。あれ以外に急用はありませんよ。情報入手してきたんで、聞いてください。数学班の危機ですから」


あれと幸太朗を指差しながら眉毛一つ動かさずに白ーい顔で話されると、


「じゃ、ひとまず、座って。お茶でも。おーい幸太朗、出てこい。今日は特別にキャラメルチョコを分けてあげるし、ここで食べていいから。」


と言わざるをえない。しかもチョコときいてのそのそと幸太朗も出てきたわけで、3人で席に着く事となった。


お茶と言っても、各自持参の水筒をズビズビと飲み、私自腹のキャラメルチョコを摘むつまむのだが、幸太朗の摘みかたがいただけない。


「幸太朗鷲掴みわしづかみするんじゃない!」


いちいちしつけが必要である。


「で、何があったんだ?」


聞きたくもないが聞くしか無い。数学班の危機とあっては。


「吹奏楽部の活動場所、音楽室で猟奇的物損と盗難かもしれない事件が今朝発見されて現場の様子から幸太朗がやりそうだと噂になって事情聴取されたらしいです。な?幸太朗?」


間中が端的に説明を。


キャラメルチョコを飲みながら(味わえと言いたい)幸太朗はうなづいた。


「俺してないし。現場連れてかれたけど趣味悪いし、俺だったらもっと美しくするって言ったら怒られた。」


あーこいつは受け応えもなってない。


「現場写真撮ってきたんで、部長見て下さい。」

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