飼い犬はサイコパス

柴チョコ雅

第一章 事件ファイル1

第1話 ここはA 1高校理科室2 数学班

「ここでものを食べるなと何度注意すれば止めるのだ!」


 私は、女子だが、声を荒げざるをえない時もある。


 ここA1高校理科室2は元、地学室だが、この高校から地学が消えたことによりすっかり理科倉庫と化してしまった。そこに科学部の数学的要素の先輩たちがひっそりとパソコンコーナーを作り、倉庫兼科学部数学班活動場所兼部室とされるようになっていた。


 3年と1年に数学班はいないため、2年の私、如月明(きさらぎ あかり)と今、クランキーチョコを食べている佐田幸太朗(さた こうたろう)の2人が今の科学部数学班だ。


 時折他の科学部のデータ入力や打ち出し、下手したら他の部活や先生たちからパソコン系の厄介事を引き受けている。まあ、そのために良いパソコン機器を揃えられているので仕方ないのだけど。


 天球儀、地質模型、岩石標本、地形図、自動温度計などの地学教材の他、何故かのワシや亀、たぬき、鹿の剥製、壊れたDNA模型、ガラス細工用バーナー、ふいご、色の褪せたホルマリン漬けの瓶など、なにやらカオスな一角もありパソコンとそれらを守るためにここは食事は禁止である。


「散らかさなきゃ大丈夫だし、お腹空くと頭動かないし、チョコ食べないとパソコン打ちたくなくなる。」


もぐもぐと口を動かしながら反論するこの男佐田幸太朗は同い年とは思えないほど横縦デカい。そしてよく食べ、期待を裏切りデブではない。身長は180を超え制服の外からでも窺える筋骨隆々な身体で剣道部であり、科学部でちまちまパソコンを打っていたりするのだ。通学のチャリと剣道の素振りでご飯分はエネルギーが無くなり、頭を使う分はチョコで補っているというわけ分からない解説を何度された事であろう。だが、食べるのは禁止だ。


「今、お前は何を打っているのだ?」


チョコ袋を無理矢理洗濯バサミ(このために常備されている)で閉じて奴のリュックに詰め込みながら聞く私を恨めしそうにみながら


「柔道部の部費管理帳と県大会出場オメのホームページ記事。」


と今やっていることを報告してきた。


「ほう、柔道部から頼まれたのか。」


「剣道部、同居してるじゃん。武道場。立派なのは強豪柔道部サマサマのおかげだから。

見て!このホームページ!」


嬉々として奴が見せるページが戴けない。


「幸太朗、これは却下だ。なんだい、このいかにもな所々赤い道着は?時折点滅して現れる髪に顔全面覆われた女子高生はなんだ!しかも芸が細かくうちの高校の制服をきて身体が透けてるじゃないか!どこからこんな素材を!バックのミュージックまでホラーじゃないか!直せ!うちの高校に入学生がいなくなるぞ。」


「えーダメだった?力作なのにー。ホラーじゃないとやる気うせる。帰る。如月、残りお願い。せっかく剣道部の休みを費やしたのにチェック厳しい。うるさい。」


「いや、待て、直せ。ほら、健全に、県大会出場!普通に打て。」


世話の焼ける。パソコンの腕は確かなのだが、ホラー好きでスマホの写真フォルダは目を覆いたくなるほどの画像の趣味で溢れてあふれてる。そんなに内臓とか赤い液体が好きなら生物班に入ってカエルやネズミと戯れれたわむれれば良かったものを理科室3(生物室)は小動物の霊が沢山いて相手が大変だとかフザけた事をぬかして数学班に落ち着いてしまった変な奴である。


そんな幸太朗に嫌疑がかかってしまったのが始まりであった。

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