第7話:尻尾切り・王妃視点

「御安心ください父上、あのような孤児上がりに負ける私ではありません。

 あのような者に味方するのは、卑しい新興貴族士族です。

 由緒正しい名門貴族士族は皆私の味方です。

 今度の討伐も喜んで集まってくれ、戦意旺盛です。

 賊軍など鎧袖一触で粉砕してくれます」


 フラヴィオは強がっていますが、私には内心の怯えが手に取るように分かります。

 侍女達が集めてきた噂話でも、嘘をついている事は明らかです。

 国王に無断で行われた婚約破棄騒動だけでも、もし私が謀殺した王子達が生き残っていたら、廃嫡されるほどの大失態です。

 まして国王の軍権を勝手に使った貴族軍の動員など、処刑されかねない大罪なのはフラヴィオも分かっているのでしょう。


「フラヴィオ、お前はいつから王になったのだ。

 貴族軍に動員をかけることができるのは、余独りだぞ」


「私は貴族達に動員をかけたりしていません。

 貴族達は孤児上がりのエドアルドが傍若無人に振舞うのを許せず、独自に集まって討伐軍を編成してくれたのです」


「それは、余に断りもなく、貴族共が勝手に軍を集めて戦争を始めるという事か。

 しかもそれを王太子であるお前が認めたという事か。

 思い上がるな、小僧。

 剣を向けられた程度で大小便を垂れ流すような憶病者など余の子供ではないわ。

 自ら軍の先頭に立つならばともかく、貴族共に徒党を組ませて自分はその後ろに隠れて吠えるだけか、恥を知れ恥を」


 国王が昔のように本気で怒っている。

 最近では政務も軍務を放り出して、後宮で酒と女に溺れるだけだったのに、眠れる獅子をフラヴィオの醜態が起こしてしまったようね。

 本当に昔の性格に戻ってしまったのなら、国王はフラヴィオを殺しかねないわ。

 私の可愛いフラヴィオを護るためなら、国王を殺してしまおうかしら。


 でも、今の国王にフラヴィオを殺してしまうほどの胆力があるかしら。

 一時的に昔のように振舞えても、長年かけて中毒にさせた薬に抵抗できるとは思えないし、もう少し様子をみるべきね。

 フラヴィオは王の血を継いだ唯一の子供なのだから、なかなか殺せないはず。

 中毒で気力を奪っているから、時間をかければ胆力を失うはずだわ。

 今国王を殺してしまったら、エドアルドやアウレリウス・ジェノバ公爵家を敵に回すだけでなく、近隣諸国まで攻め込んで来るわ。


「国王陛下、王権を勝手に使うなど絶対に許されない事でございます。

 幾ら国王陛下の血を継いだただ独りの王太子だと言っても、許される事と許されない事がございます。

 フラヴィオには厳しい罰を与えるべきでございます。

 北の塔に幽閉して、王の威厳をお示しください。

 貴族達が勝手に集まった軍に対しては、王命で解散させてはいかがでしょうか」


「……それでよい、今直ぐフラヴィオを北の塔に幽閉しろ」

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