第105話 最深部

「…………なんか、変な感じがするな」


ダンジョン内の奥深くに、巨大な縦穴が口を開いている。

そこを覗くと、遥か下方に小さな光が見えた。


――その光から不思議な何かを感じる。


「ん?どうした?」


「どうしたじゃねーべ……」


「にんにん」


ベーアが眉をしかめ、淵から縦穴を覗き込んでいた。

普段は姿を消して忍者ごっこしているポーチも姿を現している。

口元の覆いを指でずらし、穴の中を見つめる彼女の表情もベーアと同じく渋い。


久しぶりに真面に顔を見たが、やっぱダントツだな。

ポーチの顔は。

胸が微妙Dなのが本当に惜しまれる。

なんとかもう一声ならん物だろうか?


「正直、あれにはあまり近づきたくありません。父上」


「同感だべ」


「え?なんで?」


二人して急に嫌々言い出す。

反抗期だろうか?


此処までは、もう随分と長く一本道だった。

その突き当りにある縦穴だ。

此処を進む以外道はない訳だが。


「本能が叫んでいます。絶対に近づくなと」


ポーチの言葉にベーアが頷いた。

彼女達は元野生の魔物だ。

それぞれが熊と狼。

その頃の野生の本能がブレーキをかけているのかもしれない。


俺はそういうの全然感じないけどな。

まあ元都会っ子だししょうがない。


「そっか。じゃあ二人は先に帰っててくれ。俺一人で見て来るよ」


下に魔王が待ち構えてて、いきなり攻撃される可能性もある。

2人は連れて行かない方が良いだろう。


因みに俺のレベルは71まで上がっている。

1月近く、深淵の洞窟ディープダンジョンで狩りに勤しんでいた成果だ。


最初は1週間もあれば踏破できると軽く考えていたんだがな……


このダンジョン、信じられないぐらい広くて滅茶苦茶時間がかかってしまった。

お陰で豊胸薬ガンダーラの完成が大幅に遅延しまくりだ。


まあ何が言いたいのかというと、乳神様の言った倒すのに最低限必要なレベル70はもうクリアできてるという事だ。

出来れば80は欲しいと言ってはいたが、今のレベルなら逃げ出す事ぐらいは出来るだろう。


「父上、一人では危険です」


「ふ、俺を誰だと思ってるんだ?不死身のカオス様だぞ?問題ない」


ちょっとカッコつけてみた。

偶にはいい所見せないと、彼女達の中で俺が巨乳好きの変な奴でイメージが固定されかねない。


名付けて、不良がちょっと猫助けた程度で凄く良い人に見えて来る謎現象作戦だ。


クラスの陰キャを散々なじったり、周りに迷惑をかけまくっている奴が善人な訳がない。

にも拘らず、ちょっと良い事しただけで見直されてしまう。

これはそんな世の中の理不尽な心理を突いた作戦である。


つまり俺の普段のセクハラ的言動は、この格好つけ一つでチャラという訳だ。


「作戦内容が口から全部駄々洩れだべ。後、その程度でチャラになる訳ねーべよ」


どうやら口から漏れ出ていた様だ。


「ふ。実は駄々洩れにさせる事で剽軽ひょうきんなお兄さんと思わせる作戦なのさ」


うむ、我ながら完璧なフォローだ。

カッコいいは駄目でも、剽軽者に着地できたならまだまだ挽回可能だろう。

少なくとも巨乳フェチよりは覚えが良い筈。


しかしチャラにはならんのか。

なんだ、ヤンキー全然だめじゃん。

全く使えない奴だぜ。


どうやらハーレムエンドの為にも、他の作戦を考える必要がありそうだ。


「父上……どうかお気を付けて」


ポーチが不安気な表情で、心配そうに俺を見つめる。


「大丈夫だ、心配するな」


彼女を安心させるために、笑ってその頭を優しく撫でてやった。

本当はオッパイを撫でながら「大きくなーれ」と唱えたかったが、俺だって空気を読む事ぐらいは出来る。

それはまたの機会にするとしよう。


「んじゃ、サラと一緒に待っててくれ」


行先をパマソーの研究室に指定し、ポーチ達を転移させる。


「さて、行くとするか」


俺は地面を蹴り、穴の中に飛び込んだ。



★☆★☆★☆



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