第104話 成長率

「なかなかやるべな――けど、敵じゃないっペ!!」


ベーアは群がる悪魔達を一人で捌く。

悪魔は赤い爬虫類の様な皮膚をしており、その背には蝙蝠の様な翼が生えていた。

典型的なザ・悪魔と言った見た目だ。


地上にいる者はその鋭い爪による近接戦を。

空にいる者は、その口から紅蓮の炎をベーアに向かって容赦なく吐きかける。


「おらぁ!」


ベーアは空から降り削ぐ火球を、結界を頭上に展開して防ぎ。

襲い掛かる地上部隊をその拳で粉砕していく。

悪魔達はその数を次第に減らしていき、最後の一匹を叩き潰した所でベーアは膝に手を突き荒くなった息を整える。


「どうだべ!?」


「どうだべと言われても、意見は変わらないけど?」


「なんだべと!?じゃあ直接勝負だべ!」


そう言うと、ベーアはファイティングポーズを俺に向かって構えた。


「やれやれ」


事の発端は、ベーアのレベルが80に上がった事だった。



◆◇――回想――◇◆


「レベルが80に上がったべ!」


魔物を倒し、レベルが上がって興奮したのかベーアが右手を掲げてガッツポーズする。

彼女がここ迄感情を露にするのは初めての事かもしれない。

まあそれだけレベル80達成が嬉しかったと言う事だろう。


「おめでとう、ベーア」


竜人は魔物ではないが、亜人としては最強クラスの強種族だ。

その為レベル60を超えたあたりから、レベルアップに必要となる経験値が最上級モンスター並みに跳ね上がる。


普通にやっていたら数年。

下手したら数十年かかるであろう道のりだ。

それをこの短期間で辿り着けたのは、全ては最上級塗れのこの深淵の洞窟ディープダンジョンのお陰だった。


「カオスはレベルいくつだべ?」


「ん?俺?俺は68だぞ」


「低いベな。これならもう、カオスにも後れを取らないべ」


ベーアはその大きな胸を張ってどや顔で俺を見て来る。

彼女の中では、どうやらもう俺と並んでいる事になっている様だ。


確かにそのファンタスティックな胸は俺を遥かに凌駕するが、残念ながら強さに関しては別だった。

致命打やリポップを抜きにしても、俺の方がまだ上である。


というか――


「いや、こう言っちゃなんだけど。差は開く一方だぞ?」


「なんだべと!?」


俺のレベルは全然上がっていない。

別に魔物を倒していない訳ではないし、寧ろスキルポイントで取っている経験値上昇の効果で、誰よりも経験値は手に入っていた。

レベルが余り上がっていないのは、カオスというクラスが他の最上級モンスターよりもレベルアップに多くの経験値を必要とするからだ。


「12も差があるのに!そっちの方が強くなってるっていうべか!?」


「レベルが上がり辛いのは、それだけ1レベル毎に上がる能力値が大きいからだぞ? 」


ベーアは確かに強くなった。

今なら、レベル70だったヴァンパイアのブラドの奴よりも上だろう。

そして彼女はブラドと俺の戦いを見ている。

だからこそ、勘違いしてしまったのだ。


もう俺に並んだと。


「レベルが上がり辛い分、1レベル毎に滅茶苦茶能力が上がるからな」


確かに俺のレベルはあれから6つしか上がっていない。

しかしカオスの1レベル当たりの成長は、他の最上級モンスターの何倍にもあたる。

そのため上がったのが6つでも、実質30-40レベルに匹敵する能力上昇を果たしていた。


「だったら私の力を見せてやるべ!!」



◆◇――以上、回想終了――◇◆


「仕方ないな……良いだろう!」


久しぶりに、ベーアのブルンブルンを目の前で堪能するのも悪くはないだろう。

いや、寧ろ望む所だ。


「かかってこい!ベーア!!俺がお前の成長を確かめてやる!!!」


俺は両手を広げて、全てを受け止める。

彼女の全て。


そう、ブルンブルンの全てを!


いただきます!!

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