第100話 依頼
「やれやれ、これほどまでとはな」
お供のカルラに支えられながら、苦い表情で皇帝が呟く。
「理解したべか?」
そんなグロッキーな皇帝相手に、ベーアがドヤ顔で偉そうに胸を張る。
マーベラス!
良い張りだ。
「ここまでの差を見せつけらてしまっては、言い訳のしようもない。やっと見つけた同族なのだがな……分かった、諦めよう」
人間諦めが肝心だ。
まあ皇帝は竜人だけども、その
勿論満面の笑みで。
イケメンざまぁ!
「ふむ、安物だな」
一勝負が終わったので中庭から客間に場所を移し、俺達はメイドさんの出した紅茶をすする。
皇帝の口にはどうやら合わなかった様だ。
パマソーはそういう事に金はかけなさそうなので、普段から高級品を口にしている彼には粗末な味に感じたのだろう。
「ははは、申し訳ない。陛下が来られると分かっていたのなら、最高級の茶葉を御用意したんですが」
「かまわん。勝手に押し掛けたのは余だ」
だったら一々人の出した物にケチ付けんなよ。
器がデカいのか小さいのか分かり辛い奴だ。
「しかし……驚くべき強さだ。最上級モンスターを葬っていたと報告が上がっていたから、かなりの強さだとは分かっていたが。まさかここまでとはな……」
ベーアを見るその眼差しには、熱い思いが込められている様に見える。
これからガンガンレベル上げして彼女は更に強くなっていく。
そうなれば皇帝との差はさらに広がる事だろう。
だから――「お前との差は開くばかりだから、未練は捨ててもう完全に諦めろ」と指差し言い放ってやりたい所だ。
まあ大人げないから流石に口にしないけど。
因みに、当の本人は皇帝の視線などそ知らぬ顔でもしゃもしゃお菓子を頬張っている。
齧る際にお菓子の粕がポロポロ零れているが、俺は特に注意はしなかった。
だってここ、俺んちじゃないし。
何より。
お菓子の粕が膨らんだ胸の谷間に溜まって行く様を眺めるのは、至福の極みだからだ。
逆に「大変よくできました」と花丸を上げたい位である。
「そなたのパーティーメンバー達も、そんなに強いのか?」
皇帝は俺達の顔を見て聞いてくる。
ベーアがそれに、口の中のお菓子を飲み込んで答えた。
「ポーチはライバルだべ」
「にんにん」
単純な戦闘力だけならば、多分ベーアの方が上だ。
だがポーチは幻術を始めとした、多彩なスキル群を習得している。
その辺りの総合力も含めての評価だろう。
「カオスは倒すべき目標だべ。悔しいけど、今はこいつを倒す為のレベル上げ中だべさ」
ふふふ、悔しがる必要は無いぞ。
俺はいつもお前のその豊満な胸にノックアウトされているているからな。
そういう意味では、ベーアは既に俺の上を行っていると言っても過言ではないだろう。
「サラは雑魚だべ」
「なんじゃと!?」
次は自分の番だと、すまし顔をしていたサラが驚いてソファから立ち上がる。
どうやら自分も凄いと言われると思っていた様だ。
どういう思考からその答えが導き出されたのか、果てしなく謎で仕方ない。
「まあ、テイムしている小ドラゴン達はそこそこだべが」
「ティラとケラーは妾の手足!つまりこやつらの強さは妾の強さなんじゃ!」
サラが気を取り直して無い胸を張るが、その理論であってもそこそこ止まりなのだが……それでいいのか?
「成程……パーティーとしては規格外レベルという訳か……」
皇帝は手で口元を覆い、何かを考える素振りを見せる。
その動きが一々様になっててムカつく。
これだからイケメンは嫌いだ。
「ではその力を見込んで、一つ仕事を請け負ってはくれんか?」
「仕事?」
カルラが冷え性だから、むき出しの上乳部分をその手で温めてやってくれとかだろうか?
それなら喜んで引き受けるが。
「首都の北にある
「それって、ダンジョン攻略って事か?」
ため口で返すと、皇帝の背後に控えるカルラが厳しい目で睨み付けて来た。
口を出さないのは今が仕事の交渉中だからだろう。
「うむ、実は少し前に魔王が復活したと言う噂が流れてな。まあそれだけならくだらない噂と一笑に付す所なのだが……ダリア王国でのエンシェント・ドラゴンの眼ざめ。それに数年前から始まった
それは単に欲をかいた人間が、あの山で穴掘りを始めたせいに過ぎない。
つまり魔王関連とは全然無関係な話だ。
噂の魔王についても、皇帝の言う通り只の下らない噂でしかない。
どうやらその根本は俺らしいが、何故そうなったのか意味不明すぎる。
まあ俺の場合、魔王に関わりが全くないかと言えば微妙な所ではあるが……
一応同じ異世界人らしいから、繋がりが無いかと言えば嘘になるだろう。
とは言え、世界の異変とやらに現状俺は何も関わってはいない。
俺が異変――いや、
つまり
まあ魔王復活は乳神様の太鼓判付きなので、あってるっちゃあってるが。
「この世界の未来に関わるかもしれん仕事だ。引き受けてくれんか?」
「わかった。引き受けよう」
魔王に関しては俺も気にはなっていた。
本当にあのダンジョンに封印されているのなら、その様子を一度ぐらい眺めに行くのも悪くは無いだろう。
そのついでに報酬も貰えるなら万々歳だ。
「但し、依頼は冒険者ギルドを通してくれ」
直で受けるよりも、冒険者ギルドを通してくれた方がランクに影響する。
俺のランクはまだA級だ。
上手くすれば今回の依頼でS級にまで上がる事も可能だろう。
中間を通す以上報酬は下がるが、さっさとSにした方が受けられる
――あと、Sランクの方がAランクよりモテそうだし。
「いいだろう。では後日正式に依頼を出す。無論お前達のパーティーを指名してな」
そういうと皇帝はソファーから立ち上がり、用は済んだとばかりにその場をさっさと後にする。
まあ一応国のトップな訳だから、きっとそこそこは忙しいのだろう。
さて、それじゃあ魔王の奴を一目拝みに行ってやるとしますか。
レベル上げもかねて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます