第99話 ボディブロー
「ふふ、流石は余と同じ竜人だけはある。そうでなければ余の妻は務まらぬな」
最大級のお断りを受けたにもかかわらず、皇帝は涼しげな表情だ。
流石に国のトップともなると、メンタルが他とは一味違うな。
俺ならキモイ呼ばわりされたら激しく落ち込む。
そしてお返しとばかりにデカ乳を睨みつける事だろう。
――って、今竜人っていったか?
背中から羽が生えているとは思っていたが、ベーアと同種だったのかこいつ。
「弱いオメェに、夫は務まらないべ」
話にならないと言わんばかりに、ベーアはやれやれと首を横に振る。
彼女の基準は強さだ。
仮に同じ竜人であっても最上級モンスターからの変異、しかもすでに高レベルに達している彼女から見れば、皇帝などまるで赤子同然にしか見えないのだろう。
って、結構レベル高いなこいつ。
さり気無くカオス・チェックを発動させてレベルを見て驚く。
皇帝のレベルは50を超えていた。
強種族である事を考えると、ちょっとした最上級モンスターぐらいなら普通に倒せそうなレベルだ。
「弱い……か。言ってくれる。余はこれでも、この国最強を自負しているのだがな」
まあ今まで見てきた人間の中で、最上級モンスターとやり合えそうなのは聖王女であるアリアか、辛うじてアレク位の物だ。
そう考えると、人間の世界では――皇帝は亜人だが――最強クラスというのもあながち嘘ではないのだろう。
だが、それでも今のベーアから見れば雑魚レベルでしかない。
「弱い人間相手に、最強を自負する事に何の意味があるべ?」
皇帝にベーアが辛辣な言葉を返す。
相手が誰であろうとも、変わらぬ自分を貫く彼女は素敵だ。
主に胸元が。
「小娘貴様!陛下に向かって無礼であろう!」
そこにカルラが参戦してくる。
突然の皇帝のプロポーズ発言に驚いて、ムンクの叫びの様な表情で固まっていた彼女だったが、正気に戻った様だ。
「事実だべ。雑魚を雑魚と言って何が悪いんだべか?」
「陛下の御力も知らぬ痴れ者が!表へ出ろ!私が身の程を教えてやる」
それは無理だ。
確実に。
止めとけ。
「カルラ、下がっておれ。これは余と彼女の問題だ」
「しかし陛―― 」
皇帝の様子に気づき、彼女は言葉と共に息を飲み込む。
さっきまで穏やかだった目つきとは違い、険のある鋭い眼差しがベーアへと向けられている。
雑魚雑魚言われてプライドが傷ついたのだろう。
流石にお怒りの様だ。
「弱い事が気に入らないと言うのなら、強ければ余の求婚を受け入れると言うのだな?」
「強いんならいいべ、強いんなら……な」
ベーアは口の端を上げて挑発的に笑う。
死ぬ程感じが悪い、完全に悪者の表情だ。
これが不細工貧乳なら顔面パンチ物だが、まあ可愛い巨乳なので全ては許されるという物。
「ふ、いいだろう。ならば見せてやろう。余の力をな。表に出よ」
「へ、へいか……それは……」
カルラが慌てて止めようとする。
だが皇帝は聞く耳持たずに言葉を続ける。
「数百年生きてきて、初めて見つけた同胞だ。逃がしはしない。趣味ではないが、力尽くでも手に入れさせてもらう」
数百年も同胞に逢えず、やっと見つけた異性……か。
それなら飛びつくのも無理はない。
だがベーアは変異で竜人になっただけなので、実際問題同胞かどうかは物凄く微妙だが。
それを伝えたらプロポーズが撤回される可能性はある。
だが変異は一般的ではない。
というか転生者の力でのみ行える儀式なので、ほぼ知られていないというのが実情だ。
話すと色々と面倒そうなので、ここはベーアにぼこぼこにされて諦めて貰うとしよう。
――結果発表!
ベーアのボディブロー一発で皇帝が沈む。
ベーアwin!
先に一発入れさせてやる、からの一発KOは伝説として長く語り継がれる事だろう。
イケメンざまぁ。
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