第98話 プロポーズ②

「どうだい?丸裸だろう?」


偉そうに胸を張るパマソー。


ダンジョンをある程度探索した所でアダマンタイトが十分収穫できたので、俺とサラはパマソーの指導の元、錬金術のスキルである解析とうしを学んだ。

半分アンデッド――モンスター――であるため、俺の習得は困難かとも思われたが、既に習得している錬金術スキルを応用する事であっさり会得する事が出来た。


だが――


「天才である妾にかかればこの程度楽勝じゃ!」


サラが手にした鉱物に解析アナライズをかけて、キャッキャと喜んでいる。

まったくガキは無邪気で良い。


「丸裸って、透視する訳じゃないんだな」


アナライズは分析して、その結果を伝えるだけのスキルだった。

人間相手に掛けた場合、体が透けたりするのではなくその構成材質が表示されるだけである。


誰もそんな情報知りたくねーよ!

俺の全裸祭りの夢を返せ!


そう叫びたくなるのをぐっと堪える。

そんな事をすれば、俺の邪悪な企みがポーチ達にバレてしまうからな。


「誰か来たみたいだべ」


人様の研究室で、お菓子の粕をポロポロこばしながらベーアが口を開いた。

パマソーは気にしていない様だが、流石にその行動はレディーとしてどうなんだ?

いやまあ、姿形だけならサラと大差ないから、子供の微笑ましい行動と言えなくもないが。


「かなりの大人数だな」


気配から、研究所の入り口に大人数が群がっているのが分かる。

その大半は武装した人間の物だった。


「はて?誰だろう?」


パマソーは小首をかしげる。

この様子では、約束を事前に取り付けていた相手では無さそうだ。


「パ、パマソー様!お客様がいらっしゃいました!」


少しすると、メイドがノックも無しに慌てた様子で研究室に小走りに駆け込んで来た。

まあノックしようにも扉は吹き飛んでいて――研究で吹き飛んだらしい――影も形もない訳だが。


現れたメイドさんはかなり胸が大きかった。

しかし如何せん、年齢が初老に差し掛かるレベルなので俺のセンサーは微動だにしない。


20年遅い!


「どちらさんかな?」


「それが……その……」


「余だ」


メイドが答えるよりも早く、金髪の男が姿を現す。

男はギリシャ彫刻の様に整った顔立ちをしており――しねばいいのに。

身に纏う衣装も、ギリシャ人みたいな布を巻き付けた様な感じだった。

背中には蝙蝠の羽根の様な物が見える。


とりあえず――


「変な恰好してんな」


思っていた事を迷わず口にする。

俺は優男にはとことん厳しい仕様なのだ。


「げっ!?カオス君?流石に、それは皇帝陛下に対して不敬だよ」


「皇帝陛下?この優男が?」


パマソーが嘘をついている様には見えない。

だが、国のトップがいきなりこんな場所に現れたりする物だろうか?


「貴様!陛下に無礼であろう!」


赤い鎧を身に着けた女性が皇帝の後ろから飛び出し、俺に剣を突き付ける。

親衛隊か何かなのだろう。

その女性の胸はそこそこ――膨らみ具合から推定Dカップと測定――デカかった。


本来なら剣をへし折ってやる所だが、その胸に免じて許してやるとしよう。


「よせ、カルラ」


「し、しかし……」


「余が良いと言っている」


「は……」


女騎士は食い下がろうとしたが、皇帝に強く窘められすごすごと引き下がる。

折角のDカップが皇帝の影に隠れて見えなくなってしまう。

彼女にはもっと頑張って食い下がって貰いたかった所存である。


「陛下。本日はどういったご用件で、このようなむさ苦しい場所においででしょうか?」


パマソーがうやうやしく膝を付いた。

高貴な者に対する礼儀作法なのだろうが、俺は一々そんな真似はしない。

何故なら、俺が認める高貴な者とは巨乳オンリーだからだ。


男に屈する膝など、俺は持ち合わせてはいない!


後、足元にベーアの食べかすが転がっているので、膝着いたら汚れちゃうし。


「く……貴様ら」


この中で膝を折ったり、頭を下げているのはパマソーと飛び込んできたメイドだけだ。

ポーチとベーアは勿論の事、ハイエルフであるサラも敬意を示したりはしない。

そんな態度を見て、カルラという女騎士が凄い形相を俺達に向けてくる。


まるで今にも飛び掛かって来そうだ。

まあそれはそれでパイタッチチャンスなので、バッチ来いなのだが。


「カルラ、ここは宮殿ではない。此方が訪ねてきた身だ。約束も無く急に尋ねて来ておいて相手に敬意を示せなどと、余はそんな理不尽を求めるつもりはない」


「は……」


ちっ、折角のチャンスを……


おれは心の中で舌を打つ。

皇帝なんだったら、もっと傲慢な態度を取って欲しいものだ。

それこそ無礼者の首を切れとかいう感じの。


「今日ここに来たのは他でもない。彼女に逢うためだ」


そういって皇帝は一人の女性を見つめる。


それはポーチ……ではなく、お菓子をむしゃむしゃと頬張っているベーアだった。


「ムグムグ。何か用だべか?」


視線の先が自分である事に気づき、一旦口の中の物を飲み込みベーアは尋ねた。

序でに胸の上に載っていた食べかすを、彼女はパンパンと払う。

その度に豊かな膨らみがブルンブルン揺れて、イケメンを見てささくれだっていた俺の心を解きほぐしてくれる。


まじ女神。


「余の妃にならんか? 」


「——っ!?」


それは突然のプロポーズだった。

アレクに続いて皇帝とか。

この世界の人間は過程をすっ飛ばし過ぎじゃないか?


まずは清い交際モミモミからだろうに。


「寝言は寝てから言うべ。きもっ」


ベーアのフェイタルカウンター!

効果は抜群だ!

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