第97話 レベル上げ

「ぎしゃあああ!!」


最上級モンスター、ナーガクイーン。

上半身が人であり、下半身が蛇であるそれは奇声を上げて此方に突っ込んで来る。

俺はその顔面に容赦なく拳を連続して叩き込んだ。


「カオス・ラッシュ!」


俺の拳を受けた魔物は頭部が吹き飛び、その巨体は轟音を立ててその場に崩れる落ちる。


ナーガは上半身だけとはいえ、女性の人型で、しかも丸出しだった。

普段の俺なら殺すのを躊躇っていた事だろう。

だが今の俺に容赦はない。


何故なら顔が爬虫類の化け物みたいだったからだ!

後、胸が小さい!

巨乳美人に生まれ変わって出直してこい!


「成敗!」


最上級モンスターを倒した割に、経験値の入りは今一だった。

何故ならこの深淵の洞窟ディープダンジョンに居る魔物達は、結界から漏れ出る魔王の力の影響で強制的に進化させられた状態だからだ。

その為クラスは最上級であっても、レベル自体が低いため思った程経験値が入らない。


とは言え、腐っても最上級だ。

上級モンスターに比べれば遥かに美味い事に変わりはない。

此処はいい狩場になりそうだ。


乳神様曰く。


魔王のテイマーとしてのスキルと、召喚師としてのスキルが合わさって最強に見え――じゃなくて、その影響でモンスターが強制進化しているらしい。


「次はこっちの番だべな」


現れる最上級モンスターは俺、ベーア、ポーチのローテーションで狩っている。

そういった取り組みを決めたのは、ベーアの奴が無軌道に狩りまくろうとするからだった。

本当に油断も隙も無い奴である。


「童も最上級を狩りたいのじゃ!」


サラが我が儘を言い始める。

これだからガキは嫌いなのだ。


「上級は殆どサラが狩ってるだろ?」


此処の最上級モンスターは通常より若干弱めであるため、ティラとケラーなら問題なく狩れる。

しかしレベル的に、俺達3人はもう上級を狩っても殆ど経験値が入って来ないのだ。

上級の経験値を独り占めできる分、彼女には我慢してもらわないと。


「あんな雑魚が相手ではつまらないのじゃ!ティラとケラーも嘆いておる」


足元に転がっている石ころを楽し気にバリバリ噛み砕いている姿は、とても嘆いている様には見えない。

言葉が通じないと思って、適当な事を言っているのは見え見えだ。


「雑魚ねぇ。上級モンスターを雑魚呼ばわりするなんて、全くとんでもないパーティーだね。君達は」


パーマソーは呆れた様に声を上げる。

こう見えてこいつもそこそこ腕が立つので、実は上級モンスターの一匹ぐらいなら平然と相手できる実力を持っていた。

だがそれでもここにいる面子と比べれば――サラは兎も角――大人と子供以上の開きがある。


「この調子なら、アダマンタイトも直ぐに集まりそうだね」


疾風怒濤が命がけで回収した量では、残念ながら足りていなかったらしい。

その為引き続き俺達はこの魔王が眠るダンジョンで探索を続けていた。


「結構集まったと思うけど、まだ足りないのか」


「うん、まああと少しだね。予備分も欲しいし」


予備分とか聞いてないんだが?

まあ確かにアダマンタイトを集める約束の時に量は決めてなかったけど、普通皇帝からの依頼分って考えるだろ?

殆ど詐欺である。


まあレベル上げついでだから別に構わないけど。


「カオス。もう少し先に行くべさ。きっと最上級モンスターがうじゃうじゃいるに違いないべ」


確かにここに至るまで、奥に進めば進む程その比率は上がってきている。

さらに先に進めば、その殆どが最上級モンスターへと変わるだろう。


「それはいい!そしたら童達も最上級モンスターを狩るのじゃ!」


欲望丸出しのベーアの言葉に、サラが力いっぱい賛同する。

彼女はどうしても最上級モンスターを狩りたい様だ。


まあ4匹に一匹ぐらいの割合なら構わないと言えば構わないのだが……


「僕をきっちり守ってくれるなら、いくらでも進んでくれて構わないよ」


「安心するで御座る。にんにん」


ポーチもやる気満々の様だ。


「仕方ないな。けど、(サラとパマソーが)危なそうなら引き返すぞ」


俺は元より、今のベーアやポーチが危機的状況に陥る事は無いだろう。

だが状況次第で、足手纏い2人が危険に晒される可能性は十分考えられた。

なので万一の時の為に、十分な安全マージンは取っておく必要がある。


「帰りはカオスのテレポートがあるから、ガンガン進むべ!」


「おお!いくのじゃ!」


2人とも、俺の話をちゃんと聞いて無さそうだ。

若干の不安を覚えつつ、俺達は見た目幼女二人の主張によりは更なる深部を目指す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る