第85話 小さな冒険者

「どうじゃ!」


私は買い揃えて貰った装備を身に着け、皆にお披露目する。


「サラ様、とてもお似合いです」


白いシャツの上から唐草色のジャケットを羽織り。

綿のズボンにひざ丈迄あるブーツ。

腰にはSサイズの鞭をかけ、極めつけつは唾の長い帽子だ。


何処からどう見ても立派な冒険者ルック。


そう!今日から私も晴れて冒険者となったのだ!


あの後、カオスに色々と錬金術関連の書籍を買って貰ったのだが、どれもこれも初歩の初歩しか記されていなかった。

とてもではないが錬金少女には程遠い物である。


――レベルを上げて、物理で殴る。


何とかならない物かと知恵を絞って行きついた答えがこれだ。

カオス曰く。

錬金術の深奥は、レベルを上げる事で培われる。


だ、そうだ。


早々に飽きて放り投げられた感もあるが、言っている事は間違ってはいないだろう。

どの様な力であろうと、それを扱うには高い能力が必要とされる物。

だから私は冒険者になり、まずはレベルを上げる事にしたのだ。


「なんか冒険者っつうよりも、探検家みたいな格好だべな」


「ふふん、探検家も冒険者も似たような物じゃ」


ベーアが突っ込んで来るが、それは些細な事だった。

そもそも私自身は戦わないので、動き易ければそれでいいのだ。


「頼んだぞ!ティラ、ケラー!」


小ドラゴン達の名はティラとケラー。

本当はドラとゴンにする予定だったのだが、カオスが駄々を捏ねたので仕方なしに彼の考えた名前を採用してやったのだ。

何せ私は大人だからな。


「ぎゃおお!」


「ぎゅうう!」


二匹が楽しそうに跳ねる。

見た目は鶏サイズだが、腐ってもドラゴン。

カオスが言うには並みの上級モンスターより強いらしい。


「いい返事じゃ!やる気があってよい!」


因みに鞭を携帯してはいるが、私にとっての実際の武器となるのはこの2匹だ。

通常、経験値を得るには魔物を倒す必要があった。

だがテイマーは特別で、使役している魔物が敵を倒せばその半分が私に手に入る仕様である。


私はこれを大いに活用するつもりだ。


「ではいざゆかん!」


既にクエストは受けていている。

討伐系クエストだ。

本来F級スタートなので討伐依頼などは受けられないのだが、カオスのパーティーメンバーという事で、Aクラスパーティー扱いで仕事を受ける事が出来ている。


少し狡い気もするが、ちまちまランク上げ等やってられん。

命短し恋せよ乙女という奴よ。


「ポーチ様。どうかサラ様を宜しくお願いします」


ニーアがポーチに声を掛けるが、その姿は見当たらない。


「任せるでござる」


天井の辺りから返事が返って来たので、ポーチはきっとその辺りに居るのだろう。

どうも最近彼女は特殊な本を読んで感化されたのか、にんにん言いながら姿を隠して行動する事が多くなった。

本に毒されるとは彼女もまだまだだ。


「バックアップ頼んだぞ!ポーチよ!」


「にんにん」


今回彼女は、私のクエストに護衛として陰ながら付いて来てくれる事になっている。

天才錬金少女(仮)とは言え、冒険者としてはビギナー。

クエストに彼女が同行してくれるのは心強い。


というかポーチが同行してくれるからこそ、ニーアが冒険の許可を出してくれたと言っても過言ではないだろう。

どうも彼女は心配性で困る。


この際今回の冒険でドバっとレベルを上げ、彼女より強くなった私の雄姿を示してやるとしよう。


因みにニーアのレベルは20。

私は2。

丸一個分ぐらいの差ならきっと余裕だろう。


「さあいざゆかん!未知なる冒険!そしてその先に待つ錬金術の深奥へ!」

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