第32話 冒険者
「なんとか登録出来たな」
帰り道、ポチ改めポーチに声を掛ける。
本来は身分証が必要だったらしいが、S級冒険者の推薦という事ですんなり登録をすます事が出来た。
困った時はいつでも声を掛けてくれと言っていたが、あの男にはこれ以上近づかない様気を付けなければ。
――あの男は危険だ。
あの視線・
奴は俺にとって、とんでもない強敵になると。
「ポーチ。あの男には絶対気を付けろ」
彼女にも強めに忠告しておく。
「心得た」
何故ならあの男は――イケメンだからだ。
俺には分かる。
あいつはポーチ狙いだ。
だが彼女には、俺のガールフレンドになって貰わなければならない。
折角亜人に変異したのに、あんなどこの馬の骨ともわからないS級冒険者に持っていかれて堪るか!
「しかし父上。あの男はそんなに危険なのですか?」
ポチは俺の事を父と呼ぶ。
勇人かカオス、もしくはダーリンと呼ぶよう頼んだが頑なにそれを拒まれてしまっている。
父は父だから、と。
どうやら俺の事を、本当の親の様に思ってくれているのだろう。
それを嬉しく思う反面、きゃっきゃうふふに持ち込むには相当な意識改革が必要となりそうでげんなりする。
「ああ」
「ならば、殺してしまっては如何でござる?」
流石魔物上がりだけあって、言う事が物騒だった。
そして喋り方が少し変だ。
ベア子といい、ポーチといい。
これは魔物としての特徴なのだろうか?
「ポーチ。軽々しく殺生を口にしたら駄目だ。人間に関しては基本殺しはタブーで」
「心得た」
俺達はこれから冒険者として、人間の社会で生きていく。
気に入らないからと言ってバンバン殺していたら、あっという間にお尋ね者だ。
因みに、今の俺の姿は生前と全く同じ人間の姿をしている。
これはカオスのスキル、リミットフォームというスキルの効果だ。
これを使えば俺は色んな種族の姿に変身する事ができた。
今はそれを使って人間の姿に化けているという訳だ。
このスキルの欠点は、種族は選べてもその容姿の細かい点が変更できない所である。
その為、人間形態は前世の姿で固定されてしまっていた。
出来ればイケメンが良かったが、まあこの際そこには目を瞑るとしよう。
後もう一つ。
変身中は、能力が大幅に制限されてしまうというデメリットもある。
本来これは大きな制限部分なのだろうが、実は俺にとって大きなアドバンテージとなっていた。
ある意味、この制限こそ俺にとってのリーサルウェポンと言っていいだろう。
最上級職は経験値の取得ペナルティが激しい。
レベルが1つしか違わなくとも、相手が上級職以下なら殆ど経験値が入らない仕様になっている。
その為、最上級モンスターは同じく最上級であるモンスターを狩らなければレベルを上げる事が難しい。
特にカオスは出鱈目に強い分、その制限が他よりも激しかった。
同じ最上級職同士でもペナルティが発生する始末。
それでなくとも最上級の魔物は数がいないのだ。
そこに強いペナルティまで課せられてしまっては、とてもではないがレベル上げ等出来たものではない。
そこで役に立つのが、このリミットフォームだ。
この状態だと能力が半減するおかげか、格下の魔物を狩ってレベルを上げる事が出来る様になる。
正に抜け穴的仕様と言っていいだろう。
さあ、冒険者になってがんがん経験値を稼ぐぞ!
え?何で冒険者になったのかって?
確かに魔物を狩るだけなら、冒険者である必要は無い。
一言で言うのなら……そう、ロマンだ。
具体的に言うと。
依頼の途中、美しく巨乳の女性を魔物から助けて恋に落ちる。
そしてハーレムIN。
そんな感じのロマンを俺は冒険者に求めているのだ!
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