第30話 話が違う

「ちょっと!どういうことですか!?」


俺は目の前に広がる巨乳だいうちゅうに強い抗議の声を上げる。

まあ正確には乳神様に、だ。


「ガールフレンドの変異おめでとう。二人ともすっごく可愛いじゃない。良かったわね」


「いやー、そうなんですよぉ」


ポチは変異によって、美しい銀髪のおねぇさん――妖狐――へと姿を変えていた。

美人系ではあるが、キツネ耳と白銀の尻尾が違和感なくマッチしている。

間違いなく今までの人生の中で、彼女は断トツの美貌の持ち主だ。


懸念だった胸も100点満点は上げられないが、ペタン子というのだけは避けられた。

限りなくDに近いCカップ程度にはある。


ペロペロしたい。


片やベア子の変異は可愛い系のロリ――竜人――だった。

何でポチより長生きしている彼女の方が幼いのかは置いておいて、顔はかなり可愛い。

背中から生える翼も違和感なくマッチするゴスロリ仕様。

そして何より、特筆すべきはその巨大な胸だ。


まだ12-3歳ぐらいのビジュアルにも拘らず、とんでもなく御立派な物をお持ちで御座る。

軽くFはあるだろう。

そのアンバランスがとってもキュート!


モミモミしたい。


「良かったわね」


「ええ、まったく――」


確かにそれは良かった。

本当に生きてて良かった。


神様有難う!


「どういたしまして」


「って!そうじゃありませんよ!何で俺だけ変異できないんですか!」


そう、ガールフレンド(仮)は凄く可愛く変異できたのに、何故か俺だけ変異できずごつい化け物のままだ。

これでは俺のモテモテハーレム計画を進める事が出来ない。


俺の青春を――ハーレムの野望を返せ!


「ハーレムの野望を青春とは言わないわよ。だいたい2人も超級のガールフレンド候補がいるんだし、十分じゃない。量より質よ」


「俺は質も量も欲しいんです!」


質だけ。

量だけ。

どちらか片方だけよりも、俺は両方が――


そう、全てが欲しい!

欲張り仕様だ!


トム先生が何と言おうとも、俺は美人満載のハーレムという夢を追いたいのだ!


「贅沢ねぇ……」


乳神様は呆れた様に呟く。

そのアンニュイな感じの仕草から醸し出されるアダルティーな乳もいいが、今はそんな物に目を奪われている場合では無かった。


まあガン見するけど。


「兎に角!何で俺だけ変異できないんですか!」


「んー、まあ……なんて言ったらいいのか……」


「はっきりしてください!」


「実はあんたのクラス――カオスは、レベルMAXじゃないと変異できない仕様になってるのよ」


「ふぁ!?」


何ですと!?

そんな話聞いてないぞ!?

何で俺だけ!?

勝手に改造クラス押し付けておいて、それは余りにも理不尽過ぎる!


補填に詫びモミ寄越せ!


「そういう風に作ってるのよね。ごめんごめん」


詫びの部分は華麗にスルーされてしまった。

しかしこのデカ乳女神。

頼んでも無い魔改造クラスを騙し討ちで押し付け、俺の夢を妨害するとか鬼か何かか?


やっぱり詫びモミ寄越せ!


「まあ落ち着きなさい。改造にはちゃんと意味があっての事よ。仮にも女神なんだから、趣味で転生者のクラスを改造したりしないから」


意味?

俺の夢を邪魔する程の理由ってなんだよ?

世界平和の次ぐらいに重要なんだぞ?


「その世界平和の為よ。あんたの居る世界ね、いずれ魔王に滅ぼされる運命にあるのよ」


「魔王!?でも魔族っていないんじゃ?」


魔族はあの世界にいないと聞いている。

したがって、その王である魔王も居ないという事だ。


「魔王は邪悪な者の総称みたいなもんよ。細かい事は気にしない気にしない」


まあこの際、名称はいいだろう。

確かに細かい事だ。

そんな事よりも重大なのは――


「世界が滅ぼされるって本当ですか?」


「ええ、このままじゃ世界は魔王に滅ぼされるわ。間違いなくね」


「えぇ~」


とんでもない事だ。

そんな事になれば俺のハーレムの夢が……


「そこであんたの出番って訳よ。カオスの強力な力で魔王を倒し、世界を救う。そうすれば何も問題ないでしょ?そもそも貴方を転生させたのも、その為な訳だし」


「え!?」


人助けに命をかけたから、その健気な行動を称え転生させてくれたんじゃなかったのか?

てっきりそうなんだとばかり思っていたんだが。


「あんな下心丸出しの人助けでそんな恩賞貰えるとか、少しは厚かましいって考えない訳?」


「考えません!」


「あ、そ。まあ兎に角。ハーレムを作るにしても、魔王を倒さなきゃ話にならない訳だし。頑張ってレベル上げして魔王を倒してね」


「そんな馬鹿な!!」


俺のハーレムの夢が……


「まあでも……世界を救った英雄になったら、女の子にモテモテになるんじゃない?」


「おお!確かに!」


古来より英雄はモテるというのが通説だ。

英雄エロを好むって言葉があるくらいだしな。


ん、でも待てよ。

カオスとして魔王を倒すって事は、第三者からは化け物同士の殺し合いにしか映らないんじゃ?

それ、世界救っても絶対モテなくね?


「バレたか。まあガールフレンド達を守る為でもある訳だし、精々男を見せなさい」


乳神様はそう言うと、強制的に夢の世界から俺を追い出してしまった。


全く世の中理不尽だ。

詫び乳がもらえないとか、どうかしてるぜ。


後、亜人化した2人は何で最初っから服着てんだよ!


俺のワクワクを返せ!

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