第21話 乳神様

「クラスチェンジおめでとう」


「ありがとうございます」


俺は感謝の言葉を口にする。

素敵な乳を拝ませてくれた事に対する、感謝の言葉を。


「ぶれないわねぇ」


人生の目標。

俺の生きる――死んでるけど――意味だ。

早々簡単にぶれるわけがない。


そう!

これが俺の生き様だ!


「ああ、そ」


呆れた様に乳神様が溜息を吐く。

例え神とはいえ、女性に男のロマンを理解しろというのは土台無理な話なのだろう。

まあそんな事よりも。


「新狩場オネシャス!」


「狩場ねぇ……ここからは少し厳しくなってくるわよ?」


厳しく。

必要経験値が跳ね上がりでもするのだろうか?

上位職になっても、特にそれ程急激に必要経験値が増えた様な気はしないのだが。


「問題は必要経験値じゃなくて、敵の強さよ。あんたのガールフレンド達、レベル的に上級職を狩らないともう殆ど経験値が入らないでしょ?」


ゆくゆくはと考えてはいるが、面と向かってガールフレンドと言われるのは照れ臭いな。

何だかこそばやくて、体をもじもじさせてしまう。


「人の胸ガン見しておいて、この程度で照れてるんじゃないわよ」


それはそれ。

これはこれである。


だいたい乳神様の胸は、極まれの夢の中でしか見れないのだ。

照れている暇などない。

一秒でも長く眺めて、脳内メモリーにがっつり保存しておかないと。


「まあいいわ。候補は二つよ」


乳神様は右手の人差し指と中指でピースサインを作り、此方に突き出す。

それが視線を遮って彼女の胸が見ずらくなるので、さっさと引っ込めて欲しい所だ。


「……一つは北にある、アスカロンの丘よ」


俺の心の声は聞こえている筈だが、無視されてしまった。

手は此方へと突き出されたままである。


「アスカロンの丘はアンデッド。それも上位のデッドマンなんかが出る狩場よ。正直敵はかなり強いわね。でもアンデッド系は経験値が多いから、狩れれば美味しい筈よ」


口振りからすると、狩る事自体がきつそうに聞こえるな。

俺は不死身だからいいけど、ポチやベア子に万一の事があったら一大事だ。

きつい狩場は出来れば避けたい。


「もう一つは東の山ね。こっちのモンスターはアンデッドに比べれば大した事はないわ。でも数が少ないから、レベル60を目指すには大分かかると思うわよ」


安全だけど時間はかかる……か。


まあかかる時間次第ではあるかな。

数十年とか言われたら流石にシャレにならない。

俺はアンデッドだから平気だけど、そんなに時間を掛けたらポチ達が皺くちゃのお年寄りになってしまう。


――ガールフレンドが老婆とか絶対嫌だ。


「心配しなくても、流石にそこまで掛からないわよ」


なら東の山に決まりだ。


「アドバイスありがとうございます!」


「ま、精々頑張りなさい」


乳神様がやる気なさげに手を振ると、そこで俺の意識は途切れた。

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