第15話 俺はお前を信じてたぜ
ワイルドベアーは相変わらず真っすぐ此方を見つめ、微動だにしやしない。
他にやる事のない暇人じゃあるまいし、頼むからどこかに行ってくれ。
そう俺はここの底から祈る。
以前試みた、移動して引き剥がす大作戦は3日間という激闘の末幕を閉じている。
勿論俺の完全敗北という形で。
結局一歩も動けていない。
熊のパワーと集中力えぐ過ぎ。
はぁ……諦めて1年間睨めっこするしかないか。
そんな事をぼーっと考えつつ、既に時は1月ほど経過していた。
後11ヵ月……
そんな事を考えていると、目の前で異変が起こる。
熊が動いたのだ。
それまで一時足りとも俺から目を離さなかったワイルドベアーが、唐突に俺に背を向けた。
全然リポップしないから、わざと背を向けて隙を作ったのだろうか?
俺のリポップを誘う為に。
これは所謂だるまさんがころんだ状態だ。
もしくは坊さんが屁をこいた状態ともいう。
ひょっとしたらもっと他の呼称もあるかもしれないが、暗愚な為、俺はそれ以上の呼び方を知らない。
まあこの際呼び方はどうでもいい。
例え相手の罠だとしても、乗るしかない――このビッグウェーブに!
そうさ!失うものなど何もないんだ!
いざ突貫!
「ん?」
リポップしようとした瞬間、気づく。
何か大きな影がゆっくりと此方へと近づいて来る事に。
「あれは……まさか」
そのシルエットには見覚えがあった。
しかしサイズが違う。
俺の知る、あいつはもう一サイズ小さかった。
だが俺には分かる。
間違いなくあいつだ。
俺はリポップする。
だがワイルドベアーは振り返ろうともしない。
まるで俺などに構っている余裕などないかの様に。
いや、実際にそうなのだろう。
奴は迫りくる敵影に、最大限の警戒を向けていた。
「我がマナよ、我が瞳に宿りて敵の力を暴き出せ!
俺は逃げる事も忘れ、Eチェックで影を確認する。
ワイルドウルフ・ポチ。
レベル35
間違いない。
ポチだ。
彼女は俺の為に強くなって帰ってきてくれたのだ。
思わず胸が熱くなる。
流石俺のガールフレンド候補第一号。
愛してるぜ!
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