第8話 クラスチェンジ

――遂に、遂にこの日がやって来た。


長かった。


獲物を見つけてはポチに横取りされ。

寝てる隙を見つけて狩りに向かうも、気づかれて邪魔され。

腕千切ってぶん投げて、それを追った隙に狩りに向かうも直ぐ追いつかれ妨害され。

狩りはもはや敵ではなく、ポチとの戦いだったと言える。


そう、俺は延々ポチに獲物を横取りされ続けて来た。


――だが遂に、遂に俺のレベルが10へと到達する!


達成感に打ち震えると同時に思う。

なんでレベル2こ上げるのに3ヵ月もかからにゃならんのだ、と。

マジで勘弁しろ。


「ワウ!」


「わうわうわー(だからワウじゃねーよ!)」


まあいい。

とにかく今は進化クラスチェンジだ。


どノーマルで、底辺のゾンビがなれるのは勿論アンデッド系列のみである。

種類は――


ゾンビアタッカー

単にレベル上限が解放されたゾンビに近い進化形態。

要は脳筋パワータイプだ。

実際パワーだけは中々凄いっぽい。


スケルトンウォリアー

骨の一部が剣や盾へと変化したスケルトン。

例えるならバランスタイプの剣士と言った所だろう。

最初はこいつにするつもりでいたが、諸事情により断念。


スケルトンメイジ。

魔法の使えるスケルトン。

声帯が無い為魔法が使えないらしい。


ザ・地雷。


完全に嫌がらせ以外何物でもない。

こんなの選ぶ奴いるのか?

でもまあゾンビとかスケルトンは基本頭パーだから、気づかず選びそう。


ゴースト

実体のない霊魂系モンスター。

リポップ待ちの俺に近いかも。

攻撃方法は念力とかで石を飛ばしたり、精神に働く攻撃をするっぽい。

こいつになれば風呂がさぞ覗き易そうではあるが、止めておく。


何故ならゴーストは日の光を浴びたら、それだけで消滅するという致命的な弱点を抱えているからだ。

日の光はアンデッド共通の弱点だが、いくらなんでも弱すぎだろ。


そして最後がゾンビメイジだ。

能力はちょっとした魔法の使えるゾンビ。

スケルトンと違い、一応声帯がある為魔法もちゃんと使える。


――そしてこれが俺の選んだ進化先だ。


正直ゾンビ系は足が遅いから、最初はスケルトンウォーリアにするつもりだった。

だが途中で事情が大きく変わってしまう。

理由はポチだ。


俺は飼い主として、ポチに餌をやる義務がある。

スケルトンになってしまうとおやつにはなってやれても、主食にはなれない。

まあほっといても自力で餌を取っては来るんだが、それは餌の豊富な森の中だからできる事。

新しい狩場に移動する時の事等を考えると、出来れば餌は確保しておきたかった。


ペットを飢えさせる様では飼い主失格だからな。

因みにアタッカーでは無くメイジなのは、獲物の取り合いで遠距離攻撃が出来た方が有利だと思ったからだ。


さあ!

いざクラスチェンジ!


クラスチェンジを望んだ瞬間、俺の全身から淡い光が溢れ出す。

やがてその光が治まり、俺の体は――


――まあ変化なしだ。


ゾンビが魔法の使えるゾンビになったからって、そりゃ姿は変わらんわな。

ちょっとがっくりしつつも、俺はステータスを確認する。


クラス:ゾンビメイジ

Lv:10

LC:19

MP:5

パワー:12

スピード:2

スタミナ:5

マジック:5

ラック:2


総合値:48


魔法:ファイヤー・ウォーター・エアカッター

スキル:魔法耐性1


うん、弱い!

しかも予想以上に!


初級魔法はMPを3消費する。

つまり今のままでは一発しか打てないという事だ。


魔法を連発するにはわざとやられてリポップ祭りが必要になって来るが、勿論そんな余裕はない。

何故なら、そんな事をしている間にポチが敵を始末してしまうからだ。


これならアタッカーの方が良かったような気がして来た。

まさか進化直後に後悔する事になろうとは……まあ悔やんでもしかたがない。

なんとか上手い事やって行けるよう頑張ろう。


ああ、言い忘れていたけど……


最下級職のゾンビやスケルトンにはクラス固有のスキルは存在していない。

その為、レベルアップでスキルを覚えるられる様になるのはここからだったりする。


進化で早速覚えた魔法耐性1は、名前の通り魔法に対する防御力を上げるスキルだ。

この狩場には魔法を使う奴なんていなから暫くは完全に死にスキルになるんだが、まあ無いよりは良いだろう。

後々役に立つかもしれないし。


「うおうおーう!(ではさっそく、魔法を試しに狩りに出かけるとしよう!)」


「ワオ!」


うん、元気な声。

ポチは邪魔する気満々の様である。


「うーわうー(よーし!じゃあ競争だ!)」


こうして俺のゾンビメイジ生活が幕を開けるのだった。

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