第9話 ケモナー道

「で?」


冷たい声が響く。

乳神様の声が凄く怖い。


でも俺は負けない!


「ですから、亜人系への変異クラスチェンジの方法を教えて下さい!」


クラスチェンジには2種類ある。


一つは進化。

レベルを上げる事で自然と行えるクラスチェンジだ。

条件はレベルを上げるだけと、シンプルで分かりやすい。

だが基本的に、種族事の系列種にしかなれない。


レベルは10、30、60でそれぞれ行え。

クラスは下級、上級、最上級と上がっていく。


もう一つは変異と呼ばれるものだ。


此方は進化と違ってレベルだけでは達成できない。

種族や特性を変える事ができるクラスチェンジで、その性質から、条件を満たす為の敷居もかなり高くなっている。


条件は変異先事に多種多様であり、俺の目指している悪魔系は悪魔の血エヴィルブラッドの入手が必須となっていた。

また共通の条件として、レベルが60以上、つまり最上級クラスになっている必要もある。


今俺が乳神様に聞いているのは獣系の亜人種、すなわち俺好みの獣人への変異方法だ。

勿論俺が目指すわけではない。


目指すのは――


「……つまりあなたはペットの犬を獣人にして、あれやこれやしたいと? 」


「イエス!!」


俺は迷わず答える。

勿論エッチな事などを無理強いするつもりはない。

駄目なら駄目で、それでも構わないのだ。

だが確率が0でないのなら、俺は挑戦してみたい。

それが男という生き物だ。


――あ、因みにポチは雌である。


最初は雄だと思いこんでポチと名付けたのだが、それは勘違いだった様だ。

どうりでチンチン無かった訳だ。

俺としたことがうっかりだぜ。


それで名前も可愛い物に変えてやろうとしたのだが……


長い間ポチと呼んでいたせいか、その名前以外に反応してくれないので――ゾンビの言葉でもちゃんと理解していた様だ――今は諦めてそのままにしてある。

まあそっちは獣人になった暁にでも、付けなおしてやればいいだろう。


「言ってて恥ずかしくないの?」


「まあちょっと恥ずかしいですけど、背に腹は変えられません」


悪魔の血エヴィルブラッドの入手難度はSランクであり、悪魔への変異は難易度としては最難クラスにあたる。


最上級までレベルを上げて。

最高難度アイテムを手に入れて。

更にレベル1から最上級までレベルを上げ直す。


この3ステップには相当な時間がかかるはず。

それを頑張る為には、幸福を感じられる中間目標が必要不可欠だ。


共に再レベル上げを頑張ってくれる美少女!

そう、獣人に変異したポチが!


ん?

何で再度レベル上げが必要なのかって?


それは変異を行うと、最下級クラスのレベル1に戻ってしまうからだ。

勿論能力もリセットされる。

まあ別の種に変わる分けだから、そこは仕方ない事だろう。

但し取得しているスキルは残るっぽいので、そこまでレベルの再上げは厳しくないと俺は踏んでいるが。


そう言う訳で。

悪魔系最上級クラスのインキュバスを目指すには、再度レベル上げを頑張らなければならないのだ。


「ふぅ……仕方ないわねぇ。いい、亜人系への条件は――」


溜息を吐き、呆れつつも乳神様は変異条件を俺に教えてくれる。

その際、仮にポチが不細工になったとしても、責任をもってちゃんと面倒を見る様釘を刺されてしまった。


だがその点は大丈夫だ。

ちょっとくらい不細工でも、余裕でイケル。

28歳童貞をなめて貰っては困るぜ。


え?

物凄く不細工だったらどうするかって?


その時は――泣く。

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