第7話 ペット

遂に乳神様の言っていた森に到着する。

鬱蒼と生い茂った木々が日光を遮り、まだ昼間だというのに森の中は薄暗い。

ここなら確かに冒険者も余り現れ無さそうだ。


後は魔物次第だが……


ガサガサと音を立て、藪の中から兎が飛び出した。

勿論只の兎ではない。

その額には立派な角が生えており、俺を見るその眼は弱者の怯えるそれでは決して無かった。


――明かにやる気満々だ。


ぷしゅーっと大きな鼻息の音が響き、角兎が真っすぐ俺に飛び掛かって来る。

だが俺に届くよりも早く、そいつは大型の四足獣に襲われてしまう。

そしてべきッという音と共に、兎は一瞬で息絶えた。


「うーあー(ポチ!邪魔スンナ!)」


でかい大型犬の様な魔物が角兎を咥え、俺の直ぐ傍に座る。

尻尾を振り振りして嬉しそうだ。


こいつの名はポチ。

何を隠そう、あの時レベル上げしてやった子ウルフだ。

俺を倒しまくって今や立派な体格に育っている。


何故か俺に懐いて付いてきたので、仕方ないのでペットとして飼ってやる事にしたのだ。

俺の肉を無限に供給してやれるから、餌には困らないからな。

決して1人が寂しかったからとか、そんな理由ではないぞ。


「ワウ!」


ふりふりふりふりふりふりふりふり。

ポチがちぎれそうな程、尻尾を激しく振り回す。

俺としては狩りの邪魔をされておこなのだが、どうやらこいつは褒めて貰えると思っている様だ。


だとしたらそれは大きな誤りと言える。

こういうのは最初が肝心。

がっつり怒って、きっちり躾けないとな。


「うーぁうぁうーーーー(ワウじゃねーよ!獲物横取りすんな!次やったらぶっ飛ばすぞ!)」


だがポチは俺の叫びなどお構いなしだ。

兎を咥えたまま頭をガシガシと俺の足に擦り付けてきやがる。

おもむろにその鼻先が俺の股間を捉える。


「あうあうあうあうあうあうあ(あ、そこはだめ!股間に鼻を押し付けてをクンクンすな!)」


まったく困った奴だ。

今回だけだぞ。

怒る気の失せた俺はポチの粗相を許してやり、頭をなでなでしてやる。


別に股間をクンクンしてくれたお礼ではない。

ほんとだよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る