第10話 女子会での告白
◇◇二〇二五年十一月二十五日火曜日◇◇
昨日はさすがに疲れたため、普段より早く寝た私は、あまり行かない大通りを歩いていた。
〈ザ・都会〉と言っていいほど、ビルが建ち並ぶ通りには、若い人がカップ片手に道を塞ぐ。私は、「すみません」と言いながら、横切る人を掻き分けると、ようやく見えたカフェから、
「おーい、明理ぃ~、遅いよ~!!」
と、懐かしい友の声。
「ごめん。昨日、
「いいのいいの、そんなこと全部知ってるから。親友だから当然でしょ」
すぐに許してくれたのは、メールの差出人である、三上
「明理ちゃん、お久しぶりです。時間に遅れる時は、連絡してほしいです」
同じ同級生の、碓氷沙耶華。三人は、休憩時間に小さな勉強会を開き、先生気分で授業していた。輝夜が国語と理科、社会科の現代社会と公民、沙耶華は数学と英語、社会科の歴史担当。
私は、技術と保健担当で、パソコン室に行くと、パスワードの安全な保存法などを教えていた。
新規パスワードの安全性を高くする、文字の選び方もやっていたくらいだ。おかげで、キーボードの入力が速くなり、クラスでは一番。
私が入力を始めると、
『明理ちゃん、キーボード見なくて大丈夫なの?』
だの、
『明理さん、指先が完全に舞を踊っているみたいです』
だの、周りから注目を浴びていた。そんな思い出の旅をしていると、
「明理ちゃんは、確か高校辞めたそうですね。お兄様から聞きました」
沙耶華が、私の話題を始めていた。
「うん。私、昔から数学が苦手でしょ。だから退学したの、楽しかったけどね」
理由は、この言葉だけで全てが伝わったようだ。
「でも、明理。今から勉強すれば大学には行けると思うよ」
「大学は無理だよ。お兄ちゃんみたいには、絶対なれない」
と、首を横に振る。しばらく経ち、話題が変わる。
「そういえば、沙耶華。昨日新しいメンバーが入ったよね」
「あの男の子ですか? まさかの登場で震えましたぁ~」
二人だけの話なので聞き流し、私は店内に入って、ブレンドコーヒーを注文する。
砂糖やミルクは入れない、苦いブラックコーヒーは、小学校から飲んでいた。コーヒーを受け取り、外で花を咲かす二人のもとへ戻ると、
「その子、女って言ってたよ。ちょっと雑な感じだけど、男性的でかっこいいのにね」
(このセリフどこかで言った気がする)
まだ2人は、私の存在に気づいていない。
「名前なんだっけ? 確か……る……」
ちょうど席に着いた私は、名乗ることにした。
「ルグアのことでしょ。それ……実は……」
「そうそう、ルグアさん。ほんとかっこいいのに、もったいないです」
「あの、輝夜ちゃん、沙耶華ちゃん、ルグアは私だよ」
「あ、明理さんいつの間に戻っていたんだ。一人でどっかに行くから、心配したよ」
やっと、存在には気づいてくれた。だが、言葉の意味を理解してない。嘘は言っていないのに…………。
「あの、さっきからずっと言ってるんだけど、昨日入った【モードレッド】は私だよ!!」
三度目の正直。声量を抑えつつ、力強く言い放った言葉に二人が、
「「ないないない」」
と口を揃える。本当のことを伝えるには、ゲーム連携しているスマホが最後の手段。ポケットから取り出し、プレイ履歴を表示させて、画面を上にテーブルに置く。
そこには、
〈ルグアのVWDLログイン履歴〉
〈11月23日AM4:35〉
〈11月24日PM2:01〉
「ほんとにルグアさん……なんですね」
自分の情報が書かれた欄を覗く、輝夜と沙耶華。論より証拠はこういうことなのか、と安堵のため息をつく。
「まさか、こんな近くにいたなんて、びっくりです。雰囲気のギャップが大きすぎます」
それもそのはず、ゲームでの自分は現実逃避した自分と言っていいほどに、変えているのだから。
「ってことは……。割れてもいいよね。私がセレス、沙耶華はガロン。集まったから一緒に遊ぶ?」
輝夜の誘いに、私と沙耶華が頷き、解散。噴水広場集合で約束して、家に帰るとログインした。けれども、この時私は混乱していた。ゲーム内とリアルの差に…………。
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