第4話 レストランにて

 VWDLでのレベル爆上がり問題。レベリング要素なくなってしまう問題。

 一度ダンジョンを出て、フィードバックを送ってから、考え直すことにした明理は、現実世界に戻っていた。


「おまたせしました。明理さん、陸さん。車に乗ってください」

「すみません。ありがとうございます」


 奏の車に乗って、東京都内の外れにあるアパートから数十分。店舗は違うが、小さい頃よく通っていた、イタリアンレストランに辿り着く。

 時刻は12時。子供連れの家族が多く目立ち、店内はとても賑わっていた。


『巣籠様、三名様、こちらの席へどうぞ』


 店員が窓際の席へ案内する。さっき走った道路は、今も途絶えることなく車は行き交っていた。


「明理は、いつものドリアにするかい?」


 私の前に座る兄・陸がメニュー表のミートソースドリアを指さして確認してきた。

 なぜか分からないが、陸が窓側、奏は通路側に横並びで、私だけ向かい合って座っている。


「ううん、今日はスパゲティにする、シーフードの。あとドリンクバーも、エスカルゴとかも食べたい、ここの安いから」


 ついつい、横文字メニューを並べてしまった。そんな私を奏は、


「明理さん、リアルではとても可愛いらしい話し方をするんですね」

「あ、はい。ゲーム内と同じ話し方をすると、家族に迷惑かなって。なので、リアルでは普通に話すようにしています」


 私は上手くまとめて説明。最終的に、明理がシーフードスパゲティ、陸がチーズハンバーグプレート、奏がペペロンチーノの大盛り。


「じゃあ、先にドリンクバー行ってくるね」


 と、一言伝えて席を立つ。ドリンクコーナーは入り口のすぐ近くにあった。

 コップをケースから取り出し、ぶどうジュースを注ぎで席に戻ると、ちょうど陸が、サラダを取り分けていた。

 

「では、次は私が行ってきます。そしたら、少しだけ、明理さんの隣に座ってもいいですか?」

「良いですよ」


 理由は、陸が取りに行けるようにするためだ。

 少しして、エスカルゴとシーフードスパゲティが到着。奏もコーヒーカップを手に、私の横へやってくる。


「最後は俺ですね。行ってきます」


 サラダを取り分け終えた陸が、席から離れる。二人だけになったので、私は料理が冷めないうちに口の中へ。


「明理さんは、普段ゲーム以外に何をしているんですか?」


 スパゲティを頬張る私に、奏が切り出す。


「ゲームだけです。高校は入ってすぐに退学しました」


 嘘は言ってはいけないと、赤裸々に伝えると、横目で見えたのは、残りの料理を持った店員。


『チーズハンバーグプレートと、ペペロンチーノ大盛りになります。以上でよろしいでしょうか?』


 注文内容の確認をしながらをテーブルに並べ、注文表を置く。


「はい。ありがとうございます」


 いつの間にか、席に戻っていた陸が応えた。時間は緩やかに、そしてあっという間に過ぎる。

 兄妹の話、奏の家族の話、陸の大学の話。さらに、奏の大学時代の話もした。

 私にとっては、分からない言葉が多くて、話についていけたり、いけなかったりだったが、それでも楽しい時間だった。


――ポポロン~……。


 鳴ったのは、明理のスマホの着信音。私は手に持つドリンクを、スマホに持ち替え、メールを開く。そこには、


〈巣籠明理様、いつもご協力をいただきありがとうございます。VWDLの方は、順調でしょうか?〉


「明理さん、これはなんですか?」


 向かいに移動していた奏が、私のスマホを覗き込み、耳元で囁く。顔を上げると、陸も食べ終わった皿を片付け、身を乗り出していた。


「アプリストア運営からのメールです。私は、無職ニートですがゲーム警察として、ゲームの審査誘導をして稼いでいます」


 この発言に、目の前の2人は顔を見合わせた。


「今のところ4社と仮契約していて、報酬として、1タイトル20万ですね」

「メールの続きも、見せてもらってもいいかな?」


 声を小さくして詳細も伝え、画面をスクロール。


〈本題に入ります。本日、無許可でサービスを開始したアプリ・ソフトが、新たに5件確認されました。時間がある時で構いませんので、対応をお願いします〉


「一度に5件ですか……。そういえば、今現在、明理さんが遊んだゲームは、どれくらいですか?」


 これで何回目だろうという、奏が質問してきた。


「詳しく数えていないんですけど、多分60から80タイトルはやってると思います」


 今は11月、誕生日過ぎて16歳。この仕事を始めたのが5月なので、間違ってはいないだろう。メールに戻り、続きを読み進める。


〈1.ファミリーファーム

 2.…………

 3.…………

 4.バイクレーシング

 5.リズムギャンブル

 上記5件です。よろしくお願いします〉


 気になる名前はなかったが、新しい依頼がきたからには、やるしかない。


「明理さん、このゲーム全部やるんですか? 私たちも手伝いますけど……」


「いいんですか?」


 奏の言葉に、聞き返すと目の前の二人が頷いた。時計の針は14時を過ぎ。支払いは兄がしてくれた。車に乗ってアパートに帰る。

 車内で話し合った結果、三人で同じゲームをプレイ、情報交換を行う。まずは、ファミリーファームから始めることにした。

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