第66話 独創的な感性

 頭が痛い。

 また二日酔いよ。


 キズシヨク星の門出を祝う、という名目で飲みすぎたわ……


 つい先程、また辞令が出て、管理する星を変更することになったのよ。


 今度は、ジユイゲという星を管理するのことになったのよ。

 コーンカツ星とよく似ている星で、人間も住んでいるわ。

 文明レベルは、相当高いみたいよ。


 他の詳しい情報は、天使たちが調査中よ。


 さて、今回は、どんな星なのかな?

 まあ、どんな星であろうと、がんばるしかないけどね。



「神様ー!大変ッスよ!」


 マイケルがやって来た。


 かなり慌てているわ。

 どうやら今回も問題のある星のようね。


「神様!ジユイゲ星が突然爆発しました!!」


「爆発!?いきなり!?それで原因は、なんなの!?」


「不明ッス。ジユイゲ星を調査しようとしたら爆発してしまったので、何も分かっていません」


「ジユイゲ星は跡形もなく消し飛んだの?」


「はい。原因の調査は難航しそうッス」


「それなら、私の神の力で調べましょう!」


「流石神様!よろしくお願いします!!」


「私に任せておきなさい!」


 では、発動よ!


「な、なんだと……!?そんな理由で!?」


「分かりましたか?」


「ええ、分かったわ。漫画の取材のためだそうよ」


「漫画ッスか!?」


「ええ、リアルな爆発を描くために、実際の爆弾を爆発させたそうよ。その爆弾の威力がありすぎて、この様というわけよ。この威力だと、ジユイゲ破壊爆弾と名付けても問題なさそうね」


「それ、ひどすぎませんか?」


「ひどすぎるでしょ!」


「人間たちは、どうしますか?」


「そうね。変なのが一人いただけみたいだし、元に戻しましょうか。もちろん爆弾は戻さないけど」


「そうッスね」


 では、実行しましょうか。


 神の力でジユイゲ星は元に戻った。


「これで問題ないでしょう」


「では、改めて、この星を調査して来ますね」


「ええ、お願いね」



 ……調査結果が来るまで暇ね。


 私も人間の世界を見てみましょうか。


 エ!?

 ナニコレ!?


 世界各地に変わった置物がある。


 なんというか抽象画を立体にしたみたいな、ワケの分からない置物よ。


 これって、どう鑑賞すれば良いの?


 何を表現しているのか、サッパリ分からないわ。

 何のための置物なの?

 意味不明ね。


 他の建造物も独創的なデザインをしている。


 人間たちの着ている服も、奇抜なデザインのものばかり。


 なんなの、この星は!?



「神様!お待たせしました。報告書ッスよ!」


「ありがとう!」


 ちょうど良いタイミングで報告書が来たわね。


 さっそく読んでみましょう。


 この星の人間たちは、芸術活動に夢中である。

 すべての人間が、何かしらの芸術活動を行っている。

 そのためか、皆、感性が独特である。


 あぁ、なるほど。

 だから世界中が、あんなワケの分からない状況なのね。


 変わり者がたくさんいる。

 先程のような爆発が、再度起こる可能性があるため、注意が必要。


 まだ危険はあるのね。

 気を付けないといけないようね。


 生活のすべてが機械化されているので、景気の問題はない。


 男女の仲は悪くはない、少子化は起こっていない。


 なるほど、変わった芸術家がいること以外はまともね。


 でも、その変わり者が極めて危険で、この星を想像以上に危険な星にしているみたいね。



 さて、また人間の世界を見ましょうか。

 いや、もう監視すると言った方が良いかもしれない。


 ん?


 なんだか騒がしいわね。

 天使たちが何かをしているみたい。


「神様ー!」


 またマイケルが来たみたい。


「神様!!また爆発が起こりました!ジユイゲ星が吹き飛びました!」


「また!?原因は分かったの!?」


「詳細は不明ッス!分かっているのは、絵画がメインの美術館で爆発が起こったということッス!」


「なんで絵画で爆発するのよ!?」


「不明ッス。星がなくなったので、調査が難航しています」


「それなら、また神の力で調べましょう!」


「流石神様!頼りになるッス!」


「当然よ!任せておきなさい!」


 では、発動!


「はぁ!?そんな理由なの!?」


「分かりましたか?」


「ええ、爆発する絵を描いたそうよ。飛び出す絵だそうよ。内部に爆弾が仕込んであるわ」


「え?」


「だから爆発する絵よ!」


「意味が分からないッス!!」


「私も意味が分からないわ。でも、その絵のせいで爆発が起こったのよ」


「芸術って、よく分からないッスよ」


「私もよ」


「ところで、人間たちは、どうしますか?」


「そうね。爆発する絵以外は、元に戻しましょうか」


「そうッスね」


 神の力でジユイゲ星は元に戻った。


「戻したわ。監視を続けましょうか」


「了解ッス」


 さて、再開するとしましょうか。


 ん?あれは?


 いろいろな服が飾ってある。


 ここはアパレルメーカーのようね。


 それにしても、すごいデザインの服ね。

 斬新すぎて、意味が分からないわ。


 あれって、爆弾の着ぐるみなの?


 あんな服を誰が着るの?

 需要はあるの?


 この星の人間のセンスは理解に苦しむわ。


 ……まさかね。


 まさかとは思うけど、あれって爆発なんてしないよね?


 あれは、ただの変な服というか、着ぐるみよね?


 ちょっと調べてみましょうか。


 うげっ!?


 次の瞬間。

 ジユイゲ星が爆音とともに、まばゆい光に包まれた。


「神様!またまた爆発が起こりました!ジユイゲ星が吹き飛びましたよ!」


「ええ、私の方でも確認したわ」


「原因は不明ッス!」


「いいえ、分かっているわ。爆弾の服が爆発したのよ」


「爆弾の服!?意味が分からないッスよ!?どういうことッスか!?」


「爆弾みたいなデザインの服というか、着ぐるみみたいなものがあったの。その服には、本物の爆弾が内蔵されていたのよ。リアリティを出すためらしいわ」


「まったく意味が分からないッスよ!」


「私も意味が分からないわ」


「とりあえず、人間が爆弾を作って、爆発させたと解釈すれば良いッスか?」


「それで良いわよ」


「ところで、人間たちは、どうしますか?」


「そうね。爆発する服以外は元に戻しましょうか」


「そうッスね」


 神の力でジユイゲ星は元に戻った。


「戻したわ。監視を続けましょうか」


「了解ッス」


 さあ、再開よ。



 あそこで、書道をやっているわね。


 ……まさかね。


 まさか、ここでも爆発なんてしないわよね?


 そんな、まさかね。


 ちょっと様子を見てみましょうか。


 え?


 爆発という文字を書きだした!?


 ま、まさか、あれが爆発するというの!?


 そんなバカな!?


 ただの文字でしょ!?


 ちょっと調べてみましょう。


 良かった。

 爆発物は、いっさい検出されなかった。

 警戒のしすぎだったみたいね。


 まったく、もう、ややこしいことをしないで欲しいわね!!


 はっ!

 まさか私は、だまされたの?


 おのれ!人間どもめ!!



 夜になったわ。


 あ、花火が上がった。


 こんなのまであるのね。


 見事な美しさね。

 他のはいまいちだったけど、この芸術は理解できるわ。


 あ!


 なんだか猛烈に嫌な予感がしてきた。


 ちょっと花火を打ち上げている場所を見てみましょう。



 あ、あれは!?


 ものすごく大きな花火!?


 というか、あれはもうただの爆弾でしょ!?


 しかも、火が付いている!?


 嫌な予感しかしないわ!?


 神の力で火を消さないと……


 次の瞬間。

 ジユイゲ星が爆音とともに、まばゆい光に包まれた。


「間に合わなかったーーー!!!」


「神様!また爆発ッス!ジユイゲ星が吹き飛びましたよ!原因は不明ッス!」


「原因なら、ものすごく大きな花火よ」


「ええ!?花火!?」


「そうよ」


「それって、ただのジユイゲ破壊爆弾なのでは?」


「まさしく、その通りね」


「この星の人間たちって、何を考えているのか、サッパリ分からないッス」


「私もよ」


 その後も、爆発は続いた。


 アニメ、ゲーム、詩、陶芸、演劇、音楽、ダンス、映画などなど。


 様々な理由で爆発した。


 そして、とうとう私の怒りも爆発した。


 最終手段の使用に踏み切った。


 その後、私は自棄酒をあおった。

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