第55話 今度こそ見つける

 頭が痛かったわ。

 またまた上司にぶん殴られて、研修期間が延長になってしまった。


 賭けに負けたら、ゲンコツのプレゼントなのね。

 こんなギャンブルは、もうやりたくないわ。


 ブルギン星の人間たちは、完全に狂ってしまったようで、神の力で元に戻しても、なんらかのギャンブルで何度も全滅するから、最終手段を使ったわ。


 人間は文明レベルが高いと、おかしくなるのかもしれないわね。


 今のブルギン星には、新しい人間たちが住んでいて原始的な生活をしている。

 当然、ギャンブルは存在しない世界よ。


 とても平和で、素晴らしいわね。

 めでたし、めでたし。


 そして、また管理する星を変更することになったのよ。


 今度は、メチャクラヤスという星を管理するのことになったのよ。

 コーンカツ星とよく似ている星で、人間も住んでいるわ。

 文明レベルも同じくらいよ。


 他の詳しい情報は、天使たちが調査中よ。


 さあ、今度はどんな問題を抱えた星なの?


 今度こそ、絶対に全滅を阻止してやるわ!!



「神様ー!」


 マイケルが来たわね。


「報告します」


「ええ」


「この星は至って平和でした。少子化も起こっていません。絶滅はしなさそうッスね!」


 今までの経験から考えると、問題がないなんてありえない。


 絶対に何かある。


 見つからなかったということは、何かが隠されているのね。


「絶滅の要因は見つからなかったの?」


「はい。まったくありませんでした」


「全滅の要因の方はなかったの?」


「ありませんでしたよ」


「メチャクラヤス破壊爆弾はあるの?」


「ありませんでした。この星は、それを作り出せるほど軍事技術は高くないッスよ」


「じゃあ、いったい何で全滅するの!?」


「神様、落ち着いてください。そんなの見つかりませんでしたよ」


「そ、そんなバカな!?何か、何かあるはずよ!?ずっとそうだったでしょ!?」


「落ち着いてくださいって!確かにそうでしたけど、この星は何もありませんでしたよ!」


 そんなことはない!

 ありえない!


 絶対に何かがある!


 絶滅する要因か、全滅する要因の、どちらかが必ずある!

 天使たちに見つけられなかっただけで、必ず何かがある!


 天使たちはごまかせても、神(見習い)である、私の目はごまかせないわよ!!


 探し出してやる!!

 意地でも探し出してやるわ!!


 そして、必ず阻止してやるわ!!


 まだ見ぬ原因め!

 首を洗って待ってなさい!


 さっそく探索開始よ!


 人間の世界は、本当に平和そうに見えるわね。

 誰にとっても、とても暮らしやすそうに見えるわ。


 景気は良い。

 住んでいる人間たちは、みんな優しい善良な方々みたい。


 食べ物は美味しいと人間たちに大好評。


 どの町もきれいでゴミ一つ落ちていない。

 自然豊かで美しい場所が各地にある。


 男女はそれなりに仲が良い。

 不倫している人間はいない。


 結婚に高望みをしているわけでもない。

 少子化でもない。


 ストレスはたまってない。

 不景気になる気配はなく、将来的にも安心。


 無気力でもない。

 ギャンブル狂いはあまりいない。


 度を越した変態はいない。

 爆発しそうな新型エンジンはない。


 メチャクラヤス破壊爆弾はない、作れそうもない。



 み、見つからない……

 相当探したのに何も見つからない。


 どういうことなの?

 本当に平和だというの?


 いや、それはない!

 絶対にない!!


 今までの星は、全部問題があったし。


 こうなったら、今日は徹夜よ!

 見つけるまでやってやるわ!!



 次の日。

 見つからない。


 人間たちは、みんな平和そうに暮らしている。

 全滅しそうにはない。


 こんなに探しても見つからないなんて、とてつもなく厳重に隠してあるのね!

 こうなったら、今日も徹夜で探してやるわ!



 次の日。

 おかしい。

 何も見つからない。


 そんなバカな!?


「神様ー!いつもの店から良い酒を入荷したって、連絡がありましたよ」


「私は残業があるから、止めておくわ。みんなで行って来なさい」


「了解ッス!神様、無茶はしないでくださいね!」


「分かったわ。ありがとう」



 次の日。

 まったく見つからない。


 おかしすぎるでしょ!

 こうなったら、見つかるまで徹夜してやる!!



 次の日。

 サッパリ見つからない……



 次の日。

 ヤッパリ、ミツカラナイ……


 ナゼ?

 ドウシテ?


 イッタイ、ドコニ、ゼンメツノ、ヨウインガ、アルノ?


 モウ、ツカレタ……



 次の日。

 返事がない。

 ただの寝ている神(見習い)のようだ。



 次の日。


「神様ー!起きてください!辞令が出てますよ!」


「ふぁ?私、寝てたの?」


「寝てましたよ!徹夜しすぎッス!」


「見つからなかったのだから、仕方ないでしょ」


「体には気を付けてください。それと辞令が出てますよ」


「え?辞令が?」


 なんで、こんなタイミングで辞令が出るの?


 とりあえず、見てみましょうか。


 ええ!?

 管理する星を変更する!?


 なんで!?


 私は何も問題を解決していないわよ!?


 この星の人間たちは、まだ一回も全滅してないわよ!?


 どういうことなの!?


 結局、この星の問題はなんだったの?

 この星は本当に平和だったの!?


 私が疑心暗鬼になっていただけなの!?


 おのれ!人間どもめ!!


 こうなったら、自棄酒しかないわ!!

 飲みまくってやるわよ!!



 次の日。

 人間は全滅しなかった。


 メチャクラヤス星は、本当に平和な素晴らしい星なのだ。

 ミャリュエルが、この星の管理者になったのは、ただのミスだったのだ。

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