第54話 平和すぎて

 あまりにも頭が痛かった。


 ボウソーバクハーエンジンのデータは、盗まれまくっていた。

 そして、各地で複製されては爆発を繰り返した。


 神の力で、キストッボ星を何度も直した。

 そのたびに爆発した。


 さらに、他のエンジンも爆発した。

 もちろん、星を吹き飛ばすような規模でだ。


 ダイド・カーンというロボットに搭載されたソノー・チドカーンエンジン。

 バクド・カーンというロボットに搭載されたバークーサイエンジン。


 などなど。

 とにかく、爆発した。


 そして、私は悟った。

 この星は、もうダメだと。


 というわけで、使っちゃいました。

 最終手段。


 キストッボ星では、新しい人間たちが暮らしている。


 今は原始的な道具を、作りながら生活している。

 生まれ変わっても、ここの人間たちは、モノ作りが好きなのね。


 お願いだから、もう爆発するようなものを作らないでね。



 そして、また管理する星を変更することになったのよ。


 今度は、ブルギンという星を管理するのことになったわ。

 コーンカツ星とよく似ている星で、人間も住んでいるのよ。


 ただ、文明レベルは相当高いわ。

 もう少しで、クヨリキム星になるのではないのかという程よ。


 他の詳しい情報は、天使たちが調査中よ。


 さて、この星は、どんな問題を抱えているのかなぁ?

 気が重いわね。



「神様ー!!」


 マイケルがやって来た。

 調査結果の報告ね。


 さあ、どうなる?


「神様、報告します!」


「ええ、お願い」


「この星では、少子化は起こっていません。絶滅の要因になる程の大問題も起こっていませんでした」


「本当に?」


「はい」


「本当の本当に?」


「起こってないッスよ!」


「本当の本当の本当に!?絶対に起こってないのね!?」


「しつこいッスよ!起こってませんでした!!」


「今度こそ平和な星で、宴会ができるのね!?」


「宴会は気が早いッス」


「えー」


「えー、じゃないッス。とにかく、この星は平和でした。こちらが報告書になります」


「分かったわ、ありがとう」


 本当に平和みたいね。

 今日は、仕事が終わったら宴会ね!

 あぁ、楽しみね。


 さて、仕事、仕事。

 報告書を読みましょうか。


 この星では、生活のすべてを機械が行ってくれている。

 ここは、クヨリキム星と同じなのね。

 でも、無気力には、なっていないみたい。


 人間たちは、娯楽に興じている。

 今、流行っているのはギャンブルみたい。

 世界各地にギャンブルができる施設が存在するのね。


 うん、確かに平和ね。


 でも、念のために、私も人間の世界を調査してみましょう。

 キストッボ星のように、天使たちが見逃しているものがあるかもしれないし。


 では、さっそく調査開始よ!


 本当に、生活のすべてを機械が行ってくれているわ。

 こういうところは、クヨリキム星と同じね。


 人間たちは、ギャンブルに熱中しているわ。

 それにしても、いろいろあるわね。


 生物や乗り物を競争させるギャンブル。

 カードを使ったギャンブル。

 ルーレットやスロット。


 ロボットの対戦まである!?


 ここのロボットは爆発しないでしょうね!?

 調べてみましょう。


 爆発はしないみたいね。

 変なエンジンは搭載されてないし。

 良かった。


 他の場所も、調査してみたが異常はなかった。


 安心したわ。

 本当に平和な星みたいね。


 さあ、そろそろ仕事も終わりだし、宴会に行きましょうか!!


「マイケル~!そろそろ宴会するわよ!!」


「了解ッス!みんなに声をかけて来ます!!」


 最高に良い気分だし、今日は飲みまくるわよ!!



 次の日。

 人間は全滅した。


 ブルギン星が爆発して消滅したからだ。



 ブルギン星は平和であった。


 そのために人間たちは暇を持て余していた。

 日々の生活にスリルを求めていた。


 だからこそギャンブルに興じていたのだ。


 しかし、最近は、それにも慣れてしまいスリルを感じなくなっていた。


 なので求めてしまったのだ。

 さらなるスリルを。



 そして、この日、人間たちは一線を越えてしまった。

 最高のスリルを求めて、命を賭けたギャンブルを行ったのだ。


 それはブルギン破壊爆弾を使った賭けだ。

 もちろん、負けたら爆発するというものだ。


 そして、この結果となったのだ。


 そう、ブルギン星の人間たちはギャンブル狂いなのだ。



「な、なんじゃこりゃーーー!!!」


 宴会をやってる間にブルギン星がなくなっていただと!?


 なんでじゃーー!?


「神様!原因がわかりました。ブルギン破壊爆弾が爆発したせいッス!」


「ブルギン破壊爆弾!?なんで、そんなものがあるのよ!?」


「賭けのために、作ったみたいッス!」


「私たちが調査している時には、そんなのなかったでしょ!?」


「宴会の最中に作られたみたいッス。文明レベルが高いと、こんなことを仕出かすこともあるんッスね」


「そ、そんな~」


 なんて技術の無駄遣いなの!!

 もっと役に立つことに使いなさいよ!!


 私のために絶滅を防ぐ道具を作りなさいよ!


 おのれ!人間どもめ!!



 は!

 こ、これは殺気!!


 そ、そんな今回は許されないの!?

 人間たちが勝手に全滅しただけなのに!?


 あ、もしかして、飲みに行ってたから!?


 そんなことを考えていると、いつの間にか私のそばに、いつもの鬼がいた。


 あぁ、私はブルギン星が平和である方に賭けたのに、負けてしまったようね。

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