第9話 神のフリをする神(見習い)

 頭が痛い。

 毎度おなじみの展開だから以下略よ。

 さっさと本題に入りましょう。


 では、反省会よ。

 前回はなぜ失敗したの?


 調査の結果、どうやら私が無名で影響力がなかったからみたいよ。

 いくら神(見習い)でも、信用されてなかったら、話を聞いてもらえないのね。

 なんて悲しいの。

 世知辛い世の中なのね。


 でも、そういうことなら、話を聞いてもらえる状況を作れば良いということよね。


 というわけで、今回はその状況を作りましょう!


 実はコーンカツ星にも、宗教があって、神もいるのよ。

 もちろん人間が勝手に作っただけで、実在はしないけどね。


 その中でも、最大の宗教が『ケッドウ教』というの。

 ダーマヤマーサという神が、信仰されているのよ。

 信者の数が、世界最多で有名だから、知らない人はこの星にはいないでしょう。


 今回はその神の姿を借りて、前回と同じ方法で、人間に警告しようと思うの。

 だますみたいで心苦しいけど、人間の未来のためだから、仕方がないことよね。



 その日の深夜。

 それでは、実行しましょう。

 変装して、後光っぽい照明を用意して、台詞も覚えてある、準備万全ね。


 では、夢の中に突入よ!


 さあ、ダーマヤマーサっぽく語りかけてみましょう。


「人間よ。私はケッドウ教の神ダーマヤマーサ。これは神託である」


 この台詞、実に神っぽいでしょ!

 良い感じに、神っぽい威厳が出ているはず!

 まあ、私自身が本物の神(見習い)なんだけどね。


「あなたたちはもうすぐ少子化で絶滅する。ただちに対策を取りなさい。人間は顔や収入がすべてではない、人柄を評価しなさい。愚かな高望みを止めて結婚しなさい。繰り返す……」


 よし!これで良いかな。


 我ながら、見事な名神託だったと思うわ!

 これなら人間の心を、わしづかみにしたはず!

 これから、どうなるのか楽しみね。


 それでは、撤収しましょう。



 次の日。

 各地で、ダーマヤマーサからのお告げがあったって騒いでいるようね。

 流石世界最大の宗教ね。


 私の時は、まったく影響がなかったのにね!

 うん、別に何とも思ってないからね。

 腹立たしいとか思ってないからね!

 おのれ!人間どもめ!とか思ってないからね!!



 その次の日。

 ダーマヤマーサが本物かどうか議論されているようね。

 一部の熱烈な信者が、あれは偽物の邪神だと騒いでいるみたい。

 私の発言が嫌味っぽくて、ダーマヤマーサらしくなかったとか。

 こんな状況なんだから、嫌味の一つくらい言われて当然だと思うのだけどね。


 そんなことよりも、少子化の方を議論して欲しいのだけど。

 そっちの方が重要でしょう?



 さらに三日後。

 少子化の議論が、まったく行われない……

 ダーマヤマーサ本物派と偽物派に分かれて議論されている。

 しかも結構もめてきている。

 そこって、そんなに重要なの?


「神様ー」


 あら?マイケルが来たようね。


「いつものお店から、良い酒を入荷したっていう、お知らせがきましたよ~」


 お酒!

 今日の仕事は、これで終わりにして飲みに行きましょうか。


「せっかくのお誘いだし、飲みに行きましょうか」


「オーケーッス。みんなも誘って来ます!」


 良いお酒楽しみね。



 次の日。

 人間は全滅した。


 ダーマヤマーサ偽物派が、本物派を邪教徒と認定し攻撃を開始した。

 本物派もそれに応戦し、戦争状態になった結果である。



「どうしてこんなことになるのよーー!」


 気が動転した私は、つい叫んでしまった。


 神が本物かどうかって、戦争する程のことなの?

 私からしたら、そんなの存在しないのよ、で終わりなんだけど。


 そんなことよりも、少子化の方が重要でしょ!?

 まだ私は、人間を理解できてないってことなの!?


 というか、私たちが飲みに行った時に限って、戦争するのもう止めてよ!!


 あ!

 いつものが来たようね……


 あぁ、こんなことを引き起こした、邪神な私は処分されちゃうのね。

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