第5話 もう少し弱く

 頭が痛い。

 また上司に殴られてしまった。

 ついでに研修期間も延長になった。

 人間たちは、上司の力で元通りになった。


 それから心も痛い。

 こうやって、何度も失敗すると、流石の私も落ち込んでしまう。

 自分の未熟さを痛感する。


 あー!

 こんなの私らしくない。

 落ち込むの中止。

 今日も元気に、最高神を目指してお仕事しましょう!

 がんばろう!


 さあ、反省会よ。

 やはり敵が強すぎたのと、数が多すぎたみたいね。

 私は今の人間なら、このくらい倒せると思ったけど……


 どうやら私は、まだまだ人間を理解しきれていないみたい。

 こういうところを、直さないといけないようね。

 暇を見つけて、人間について勉強しましょう。

 反省会はこんなところね。


 さて、今回はどうしましょうか。

 そういえば、前回の方法では、吊り橋効果を確認する暇もなかったわね。

 この効果を利用するというのは、良いアイディアだと思うのよ。


 というわけで、今度はもっと弱い敵を用意しましょう。


 良い感じの敵はいないかな?

 調べてみましょうか。


 ワヨワヨイという星に生息している、この生物なんて良さそうね。


 特徴は、雑食性の人型生物で、そこそこ狂暴。

 繁殖力が高く、数が多い。

 一体見たら、一万体はいるらしい。

 知能は高くない。

 大きさは、成人男性の身長の半分くらい。

 名前はヨワリンだそうよ。


 この生物なら人間が、すぐに全滅することもないでしょう。


 でも、念には念を入れて、ごく少数を試しに連れて来てみましょうか。

 とりあえず、一万体くらいで良いかな。


 では、実行しましょう。

 神の力発動。


 ……コーンカツ星の各地に転移完了と。


 それでは、観察しましょうか。


 あ、あそこでヨワリンが人間に襲いかかっている。

 ヨワリンが人間に殴られて、踏まれて、あっさりと倒された。


 うーん、これは弱すぎない?

 これでは、吊り橋効果は期待できなさそうよ。


 あ、また倒された。

 これで、連れて来たヨワリンは全滅ね。


 さて、これはどうしましょうか?


 一回で判断するのは、気が早いかな。

 もう一回、連れて来て、様子を見ることにしましょうか。

 今度は十億体よ。



 次の日。

 各地で、人間とヨワリンの戦いが続いている。

 ヨワリンの数が多くて、駆除に手間取っているようね。


 肝心の吊り橋効果は出てなさそう。


 男性しか戦っていないから当然だけど。

 女性は後ろで文句を言っているだけで、反感を買っているようね。

 これって、前よりも仲が悪くなってない?


 この作戦は失敗かな?


 でも、まだ始まったばかりだし、もう少し様子を見ましょうか。


 ん?ヨワリンが各地で繁殖をしているようね。



 三日後。

 まだ人間とヨワリンの戦いが続いている。

 大量に駆除したはずなのに、まだ続いているなんて、ヨワリンの繁殖力ってすごいのね。



 さらに三日後。

 あれ?これって、なんかマズくない?

 ヨワリンが増えまくって、農作物や家畜を荒らす被害が各地で出ている。

 このままでは、人間が餓死するかもしれない。


 あ、人間がヨワリンの肉を、調理して食べている。

 これなら餓死はしないかもしれない。

 もう少し様子を見ましょうか。



 その二日後。

 人間は全滅した。


 死因は中毒死。

 ヨワリンの肉には遅効性の毒があったのだ。



「なんでこんなことになるのよーー!!!」


 私は思わず叫んでしまった。


「ヨワリンの肉に毒があるなんて、資料に記載されていないでしょ!!」


「神様~。調査した結果、資料に記載漏れがあったみたいッス」


 な、なんだってーー!!

 これは、おしおきをしなければいけない。

 いつも私がされているみたいに、頭をぶん殴ってやるわ。


 はっ!

 こ、これは殺気!!


 あぁ、まずは私からおしおきなのね……

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