第3話 ケチケチするな万倍だ

 頭が痛すぎる……

 また上司に殴られた。

 研修期間もまた延長されてしまった。


 でも、二度や三度の失敗程度で挫ける、弱い私ではない。

 さあ、今日も最高神を目指してがんばりましょう!


 ちなみに、世界も人間も、上司の神の力で元の状態に戻った。

 当然ながら、強欲な性格もそのまま。

 本当にケチな上司ね。



 では、前回の反省から始めましょうか。


 神の力は、万能で強大な力。

 コーンカツ星なんて、簡単に壊せるのよ。

 だからこそ、扱いに気を付けましょう。

 以上ね。

 うん、本当に気を付けないと。


 さて、今回は何をしましょうか?


 そういえば、前回はあんなことになったから、人間たちにお金を渡せなかった。

 お金を渡したら少子化問題が解決するかは、まだ不明なままね。


 というわけで、今回は違う方法でお金を渡してみましょう。


 といっても、何で渡しましょうか?

 あんなことがあった直後だし、直接はちょっと遠慮したいところね。


 ちょっと、人間の様子を観察してみましょうか。

 何か思い付くかもしれないし。


 ん?あれは?

 会社でお給料をもらっているのね。

 なるほど、人間はああやってお金を手に入れるのね。


 うーん、でも、あの人はあまり多くのお金をもらえていないようね。


 そうだ!お給料をもっと増やしましょう。


 神の力発動。

 会社のお給料を払う人は、もっとお給料を増やしなさい!!

 ケチなことをせずに、いつもの一万倍くらい払うのよ。


 さあ、人間の様子を観察しましょう。


 あれ?何も起こってないわね。

 どうして?

 ちょっと調べてみましょう。


 ああ、なるほど。

 お給料は一か月に一回払うのね。

 さっき払ったから、あと一か月は何も起こらないというわけね。


 それなら成果が出るまで、のんびりと待つことにしましょうか。


 あ、そうだ!

 それなら……


「マイケル~。今日、飲みに行きましょう!」


「良いッスね~。行きましょう。みんなにも声をかけて来ますね~」


「お願いね」


 せっかくのお休みだし、ゆっくりお酒を飲みましょうか。



 次の日。

 人間は全滅した。


 神の力のせいで、会社の経営者たちや経理の担当者たちは、正気を失っていた。

 彼らは従業員の給料を支払うために、金を集めだした。


 しかし、通常の一万倍もの金を集めなければいけなかったため、当然ながら集めきれなかった。


 その足りない分を補うために、各地の金融機関を襲ったのだ。

 その争いが徐々に拡大し、飛び火していき、戦争に発展した結果である。


 ちなみに、ミャリュエルたちは楽しくお酒を飲んでいる最中だった。



「なんじゃこりゃーーー!!!」


 荒れ果てた世界を見た私は、思わず神っぽくないツッコミをしてしまった。


 なんでこんな状況になってんの!?


 もしかして、神の力のせいなの?

 違うわよね?

 お給料を払うのは一月後だから、関係ないよね?

 これは人間が勝手にやっただけだよね?


「神様ー!戦争の原因が分かりましたー!」


 マイケルが報告にやって来た。


「え?なんだったの?」


「人間の一部が、お金を手に入れるために、各地の金融機関を襲ったためッス!」


 え?なんでそんなことを?

 そんなの普通なら起こらないわよね。


 なら、それって、やっぱり神の力のせいなの?

 私のせいなの!?


 そんなことを考えていると、ものすごい殺気を感じた。

 後ろに誰かがいる。

 多分、これは……


 あれ?なぜか思い出が頭をよぎる。


 あぁ、そうか……

 これが走馬灯なのね。

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