第2話 金だ、金、金持って来い

 頭が痛い。

 クソ上司にぶん殴られた。

 なんという直球のパワハラ。

 こういうところはブラックだ。


 さらに、研修期間も延長されて、最高神への道が遠のいてしまった。

 でも、一度や二度の失敗で諦めたりしないけどね。


 ちなみに宴会に参加した天使たちも、全員殴られて気絶している。


 人間とエルフは、上司の神の力で元の状態に戻された。

 ただ傲慢で強欲な性格も、そのまま残っているみたい。

 ついでに直してくれれば良いのに。

 ケチで嫌な上司ね。


 さて、気を取り直して、コーンカツ星の問題を解決しましょうか。


 まずは反省会をしましょう。

 議題は『前回はなぜ失敗したのか?』ね。


 とりあえず、お酒を飲んでいて、人間たちの様子を見ていなかったことでしょう。

 これは次から気を付ければ良いことね。


 後はエルフとの相性が悪かったことでしょう。

 お互いの性格を考慮しなかったのは、良くなかったと思う。

 プライドの高いエルフに、上から目線の態度では怒って当然だった。


 それなら性格が合う人を用意すれば良い、ということになるのだけど。

 でも、それってどんな人なの?

 そもそも、そんな人いるの?

 あいつら無駄に態度がデカくて、性格悪いし。


 ……うーん、すぐには思い付かないなぁ。

 この件はいったん保留にしましょう。

 反省会も以上で終了ね。



 さて、反省を踏まえて、何をするのか考えましょう。


 そういえば、報告書に人間はお金を求めているという記載があったような。

 特に女性はお金にこだわっているって書いてあったわ。


 お金を渡せば、良いのかな?

 やってみましょうか。

 失敗しても、神の力でお金を消せば良いだけだし。

 うん、そうしましょう。



 人間の世界には、『ユドル』というお金が流通しているの。

 その最高額面である、一万ユドル札を神の力で大量に作って、人間にプレゼントすることにしましょうか。


 それでは、さっそく実行しましょう。

 神の力発動よ。


 さあ、人間たち、あなたたちの大好きなお金を上げるから、さっさと結婚して、子供を生みなさい!!



 次の瞬間。

 人間は全滅した。


 突然現れた、大量の一万ユドル札に押し潰されたのだ。

 ミャリュエルが力加減を間違えたのである。


 お金に埋もれての死。

 人間たちにとっては、ある意味、幸せな最期だったのかもしれない。



「ぎゃあああああーーー!!!やっちまった!?」


 慌てた私は、ついつい神っぽくない台詞を叫んでしまった。


 これはマズい!

 出し過ぎた。

 コーンカツ星がお札だらけだ。



「人間が全滅!?」

「他の生物にも、多数の被害が出ています!!」

「なんであんな大量のお札が!?」

「原因はなんだ!?」

「こんなことできるのは、神様くらいしか……」

「まさか神様が!?」

「でも、そうとしか考えられない……」


 天使たちも大慌てのようだ。

 しかも、もう私の仕業だとバレている!?


 そうだ!神の力を使おう!!

 神の力を使って、世界を元に戻そう。

 証拠隠滅よ!


 さっそく実行……


 はっ!

 こ、これは殺気!!


 いつの間にか、私のそばに上司が立っていた。

 当然ながら、鬼のような形相をしている。


 あぁ……

 辞世の句を考えておいた方が良かったようね。

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