238話 火照る身体
「あぁ……。んっ、んくっ……。あっ、ああっ! いい、いいわっ、そこっ……!」
まだ朝の空気が漂うエルフ村。窓を締め切り部屋を照らす光球が消え失せた薄暗い室内には、ママリスの途切れ途切れの声だけが響いていた。
「はあっ……、はっ、すごっ……いっ! すごいわっ、イズミ君……あっ、あっ、ああっ……!」
俺の動きに合わせ、ママリスが上擦った声を上げた。その瞳は熱に浮かされたように潤んでおり、きめ細かい肌からは玉のような汗があちらこちらに浮かんでいる。
俺は自らの本能の赴くままに、優しく、時には痛いほどの刺激を与え、ママリスの身体を支配していた。
「あっ、あっ、ああっ! イズミ君、イズミ君……!」
感極まった様子で俺の名前を何度も呼ぶママリス。そんな最中、ママリスからふわりと漂ってきた濃厚な汗の匂いに、彼女の身体が俺を受け入れる準備を整えたことを察した。
俺はママリスの柔肌に優しく指を添えると、そこから目的地に向かって指をスーッと滑らせていく。
――その箇所は、まるで俺からの刺激を期待しているかのようにコリコリと固くなっていた。
「ふふ、ママリスさんのココ……こんなにも固くなってます……よっ!」
俺があえてきつく摘み上げると、ママリスが首を仰け反らせて声を上げた。
「ひぎっ……! ああっ、そんなこと言わないで……恥ずかしいわっ……!」
「恥ずかしがることなんてないですよ。最近はずっとご無沙汰だったんでしょう……?」
そう言いつつ、俺は強弱をつけながら行為を続ける。するとママリスは羞恥に耐えるように眉を寄せながら声を漏らす。
「あっ、あっ……! そっ、そうだけどっ。でもっ! こっ、こんなの初めてっ! イズミ君、上手すぎようっ!」
俺が始める前に、彼女は旦那さんとの行為について語ってくれた。旦那さんはかなり上手かったと聞いていたのだが……。そう言われると、俺にも嗜虐心が湧いてくる。
「……へえ? もしかして旦那さんより、俺の方が上手いのかな……?」
俺は手に込めた力を少し緩めながらママリスに問いかけた。すると焦らされたと思ったのだろうか、ママリスがぶんぶんと首を振り、汗に濡れた首筋がぬらりと光った。
「いいっ……! いいのっ、主人よりっ! 主人よりもいいっ……! ねえイズミ君、お願いっ! これ以上、私をじらさないでっ! もう、我慢できないのおっ!」
首を振るたびに汗が飛び散る。白かった肌はすでに桃色に上気し、その視線はどこを見ているのかもおぼつかない。もはや限界が近いのだろう。
「ははっ、そこまでおねだりまでされちゃ……仕方ないですね。それじゃあいきますよ……!」
「お願いっ、早くきてっ……!」
ママリスが口から銀色の糸を垂らしながら懇願する。その姿に俺は口元を吊り上げると、ママリスを押し倒すように全身を預けながら――その首筋に全体重を乗せて力いっぱいに揉み込んだ。
「ああっー! いいっ、気持ちいいのお~~~~!! イズミ君、マッサージが上手すぎるわあ~!」
身体を仰け反らせ声を上げるママリス。効果はバツグンだ。凝りに凝った肩に血液が循環し、老廃物が流れ出していくのが【指圧】スキルで感じられた。
俺は達成感に満たされながらママリスに声をかけた。
「ママリスさん、ちょっと肩が凝りすぎですよ? カッチカチでしたもん。普段からもう少し運動したほうがいいんじゃないですかね」
これでようやくマッサージ終了だ。レクタ村では爺さん婆さん相手にだいぶ経験を積んできたが、こんなに凝った肩にお目にかかったことは初めてだ。
さすが百歳どころでないお年寄りともなると身体の凝りもハンパではないらしい。入念に入念を重ねて全身をほぐし、それからようやく本命の肩の施術に入るまでに、ここまで時間がかかるとはなあ……。
「はあ、はあ……。こんな不養生なところを見せちゃうなんて、ほんと恥ずかしいわ~……」
未だ息を切らせてぐったりとしているママリスを横目に、俺はママリスのスキルをチェックしてみることにした。
ついつい本気で指圧に取り掛かってしまったが、こちらが真の目的である。
スキル習得を狙いママリスの身体に触れようと、「俺、指圧が得意なんです。一晩お世話になったお礼によかったらどうですか?」と言ってみたところ、彼女は食い気味に乗っかかってくれたのだ。
聞けば旦那さんが指圧が上手かったらしいのだが、子供たちと一緒に新しい村に行ったらしく、最近は不養生を重ねて身体の調子もあまりよくなかったそうだ。
『やれやれ、本当に時間がかかったのう。ほれ、姫様のほうはまた寝ておるぞ』
ヤクモが呆れたような声で念話を届けてきた。最初は興味深そうにマッサージを見ていたララルナだったが、見ればこっくりこっくりと椅子に座ったまま眠っている。
まあ今は起こしてやる必要はないだろう。あまりに声を漏らすので締めさせてもらった窓を開けながら、俺はママリスのスキルを見てみることにした。まずは戦闘スキルからだ。
《戦闘スキル》
【槍術】【弓術】
モブググも槍が得意だったが、ママリスは弓術も得意らしい。エルフといえば弓と思っていたけれど、初めて本当に弓が得意なエルフにお目にかかれたな。まあ既にどちらも覚えているのでサクッと次だ。
《魔法スキル》
【ウィンドカッター】【アイスアロー】【ライト】
初めてみる魔法スキルは【ライト】。これが部屋を照らしていた光球の魔法のようだ。もちろん習得しておくことにした。
今後はLEDランタンを使う機会は減りそうでありがたい。アレは電池式なので普段から使っていると地味に金がかかるんだけど、魔力ならタダだもんな。
《特殊スキル》
【遠目】【魔力視】【乳の泉】
……ほう、【魔力視】か。さっそくタップしてみる。
《名前のまま、魔力を視ることができるスキルじゃ。ボインボインがワシの正体に勘付いておった要因はコレかの? じゃがワシは魔力なんて発した覚えは……いや、とりあえず習得してみてワシを視てくれんか? スキルポイント85を使用します。よろしいですか? YES/NO》
俺はYESを押し、かなり重めの衝撃に耐える。そして魔力視を発動させながらヤクモを見つめた。その姿は――
『えぇ……。なんだこれ……』
ヤクモからぴかぴかと輝くオーラみたいなものが揺らめいている。後光のようにも視えるので、大変ありがたいものを見たような気分になってくるよ、ヤクモなのに。
『なあおいイズミ、どんな感じじゃ?』
だがそんな状態にも、普段と変わらぬ様子で俺を見上げるヤクモ。
『なんかピッカピカの魔力みたいなのが、お前から漏れてるぞ?』
『むっ、そうなのか? それはおそらく神の持つ力、神気なのじゃろうが……。なるほど、それをあのボインボインが感じ取ったわけか。そういうことなら、これで――どうじゃっ!?』
ヤクモはピンと尻尾を立たせ、身体をこわばらせた。するとスーッと神気がヤクモの中に入っていき、やがて視えなくなっていく。
『おっ、視えなくなったぞ』
『ふいー、これでひと安心なのじゃ。まったく、我が身から神気がダダ漏れだったとは……。最近ワシ、自分が神なの忘れそうになるからのう。うっかりしとったわい』
ぐんにゃりとうなだれるヤクモ。このところ犬化の激しいヤクモであるが、本人にも多少は自覚はあるらしい。まったく話のわかるママリスでよかったな。
とはいえ、急に神気が視えなくなったらママリスも余計に変に思うだろう。俺はヤクモにママリスの前では適度に神気をお漏らししろと助言しつつ、さらにスキルを眺める。
【遠目】は習得済だし、残ったスキルは【乳の泉】だ。まあこれが何なのかはなんとなくわかっているが、一応ポチっと押してみる。
《常に乳が出るようになるスキルじゃなー。他人に自らの養分を分け与える、慈悲深きスキルとも言えるのう。どうする? 一応取っておくか? スキルポイント35を使用します。よろしいですか? YES/NO》
取るわけねーだろ。俺にそんな趣味はない。
◇◇◇
こうしてひと通りのスキルチェックを行い、ぼんやりしていたママリスも正気を取り戻した頃、外の方からなにやら話し声が聞こえてきた。その一人はモブググのようだ。
「――リギトト殿っ! 落ち着かれい!」
「これが落ち着いていられるわけねえだろうっ!? ララちゃん! ララちゃんはどこーーーーー!?」
「ですから昨夜は我が家で一泊していましたゆえっ!」
「だからようっ! せっかく昨日、ララちゃんが無事に戻ってきたっていうのに、朝にあの天使の寝顔を拝みに行ったら、ベッドがもぬけの殻だった俺の気持ちがお前にはわかるか!? わかんねえだろ! うわああああララちゃん、ララちゃあああああん!」
その声を声を聞いて、ママリスがため息をつきながら額を手で押さえた。どうやら新たな事件が発生しそうな雰囲気だ。これって俺は今すぐ隠れたほうがいいよな。
――後書き――
《身体スキル》は《戦闘スキル》に、《精神スキル》は《魔法スキル》に変更しました。きっとこちらのほうがわかりやすいと思いますので……!
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