223話 大きくなれよ~
子供が好きな食べ物といえばハンバーグだ。ハンバーグが嫌いな子供なんて存在しない……はず!
さっそく俺はツクモガミでハンバーグの材料――ではなく、レトルトハンバーグの検索を始めた。
……いやね、やろうと思えばミートミンサーで魔物肉をミンチにして、自家製ハンバーグだって作れると思うよ?
でもね、俺だって今日はかなり疲れているのだ。朝イチから狩りに行って、魔物を狩りまくって、そろそろ帰ろうとしたところでララルナを拾ってさ? それから魔物に追われながら帰ってきて、体力気力共に限界なワケだ。
あまりだらしないところを見せるとララルナも心細くなるだろうし、助けた手前それなりに気を使ってるんだが、本当は今すぐカップラーメンを食って寝たいくらいなんだよな。
などと、どこか言い訳がましい気分になりながらレトルトのハンバーグを検索していると、いい感じのレトルトハンバーグを発見した。
六個で1780G。レトルトにしては結構高めの値段なので、それなりの味が保証されているとみていいだろう。
それをポチッと購入。後はこれを
少々シンプルすぎてもの寂しい気がしてきた。ここはもうひと手間くらいはかけることにしよう。……そうだな、
俺はさらにツクモガミで検索を続け、訳あり野菜販売アカウント【おやさい天国】でレタスとトマトを、たまに朝食に利用している【手作りパン屋さん♪ハニーブレッド♪】でパンの詰め合わせを購入した。
後はチーズがあれば完璧なんだけどな、しかし生モノなのでさすがに無いだろう。……と思いつつも、念のために検索にかけたところ、チーズソースなるものを発見した。
これはマヨネーズのようにチーズがチューブの中に入っていて、好きなだけチーズをかけることができるという代物のようだ。なかなか便利なヤツである。もちろんコイツもポチッと購入。
ひと通り購入した俺は、パン詰め合わせの中から丸い物を選び、横に包丁を入れて真っ二つに切る。そして下半分のパンに温めたハンバーグと手でちぎったレタス、輪切りトマトを乗せ、さらにチーズソースをかけて――
「ファイアーボール」
ソフトボールくらいのファイアーボールを創りだした。そして俺の目の前でふよふよと浮いているファイアーボールに、パンを乗せた物をゆっくりと近づけていく。
ジジ……とチーズが軽く焦げた音がして、香ばしい匂いが辺りに漂い始めた。
そのチーズの匂いが漂ってきたのだろう、焚き火のそばでこっくりこっくりと船を漕いでいたララルナがこちらに振り返り、俺が持つパンへと視線を向けた。
「イズミ、すごくいい匂いがする。それなに?」
『うむっ、なんじゃそれ!』
俺は残りの上半分のパンを乗せ、軽く押さえつけるとララルナとヤクモの元へと近づく。
「これはハンバーガーって料理だ。このまま掴んで食ってくれ。まずはお客さんからな」
「ん!」
俺からハンバーガーを両手でしっかり受け取ったララルナは、美人な顔が台無しになるくらいあんぐりと口を開けてかぶりついた。
「ん~!!」
そして顔を蕩けさせながら、地面に座ったまま足をパタパタと動かす。というか椅子もなにも用意してなかったな。まあハンバーガーだし、このままでいいか。
ララルナは夢中で二口三口とハンバーガーを口に運んでいる。どうやら好みに合ったようだ。やはりハンバーグ、そしてハンバーガーが嫌いな子供はいないね。
『次ワシ! 次ワシな!』
俺の足元をヤクモがぐるぐると周りながらうろつく。口元には当然のようにヨダレをたらりと垂らしている。
「はいはい、ちょっと待ってくれよー」
一度作ってしまえば二個目からは簡単だ。俺は二つ同時に作りあげると、ひとつをヤクモの皿に乗せてやった。さっそくヤクモがかぶりつく。
『おお、美味いのじゃ! これならトマトとレタスも食えるぞい!』
ソースで口をべっちゃりにしながらも器用にハグハグとハンバーガーを食べるヤクモ。どうやら野菜嫌いの傾向があるヤクモでも、ハンバーガーなら食べられるらしい。
それならいっそタマネギも入れてやればよかったかもなあ。……って、狐にタマネギはいいんだっけ。いや、コイツは見た目だけで、別に狐ではないらしいんだけど。
……まあ、そんなことはどうでもいいか。それより俺もハンバーガーだ。ほんのりと温かいハンバーガーを大口を開けてバクリといただく。
するとハンバーグの肉とソースの旨味、トマトの酸味にレタスのシャキシャキ食感、チーズの香ばしさが俺の口の中で一気に広がっていった。うん、ウマイ!
ハンバーガーっていうのは、同時に食べることでそれぞれの素材の一番良いところを引き出してる感じが最高だよなあ。ざっくりと作ったわりにはうまくいったぜ。
問題があるとすれば、フライドポテトが欲しくなってくることくらいか。今度、から揚げのついでに作ってみようかね。
……とはいえ、今回のところはこれで満足だ。
もぐもぐと口を動かすララルナと、尻尾を振りながらハンバーガーにかぶりつくヤクモを眺めながら、俺は二口目を口に運んだのだった。
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