214話 ボーナスステージ
「イーグルショットオオオオー!!」
湿地帯に俺の声が響き渡り、緑を
俺は倒したバジリスクの元へと近づき、もはや尻尾しか残らなかった死骸をツクモガミで売っぱらう。
【バジリスクの尻尾 1個 取引完了→75000G】
尻尾だけでもこの値段だ。正直かなりウマい。
そりゃあ接近戦で形をなるべく残したまま倒すほうが稼げるけれど、毒を吐く魔物とか面倒すぎるからな。それならイーグルショット一発でぶっ飛ばしたほうが効率がいいと思う。
なにより単価が高いので、こんな手抜きでも結構な儲けになるのだ。
そして今回のバジリスクの売却で、ついに俺の所持ゴールドが百万Gを超えた。さらには
これだけあれば、しばらくはお金の心配なんていらないだろう。ライデルの町に戻ったら、長期休養なんてのもいいかもしれない。
ヤクモがうるさく言うだろうが、これまで働きすぎたからな。そろそろゆっくりと町の観光なんかもしてみたい。
そんな予定を密かに考えつつ、俺は最後のひと踏ん張りとばかりに、新たな獲物を求めて湿地帯をひたすら奥へと進んでいったのだった。
◇◇◇
奥地に侵攻すればするほど、ソードフロッグの発見数は増えていった。やはり浅い場所はほぼ狩り尽くしてしまっていたということだろう。
そうして湿地帯を進んでいくと、やがて遠くの方に川が見えてきた。
昨日ヤクモから聞いたエルフの話はもちろん覚えている。なのでもちろん向こう岸に渡るつもりはないが、川の近くにもソードフロッグはいるに違いない。俺は川沿いを歩きながらカエル狩りを敢行することにした。
◇◇◇
思ったとおり、川沿いはボーナスステージだった。川沿いを歩いているだけで、わんさかとソードフロッグを見かけるし、たまにバジリスクもいた。
川沿いは木々や垂れ下がった枝なんていった障害物も少なく、まず間違いなく弓矢で先手が取れるので、ガンガン討伐数が増えていく。うまい、うますぎる。
そうしているうちに、あっさりソードフロッグ百匹という目標は達成した。……したんだけれど、狩れすぎて止め時が見つからない。
とはいえ、そろそろ戻らないと日没には間に合いそうにないんだよなー。
そんな嬉しい悩みを抱えながら川岸を歩いていると――
「ん?」
【空間感知】になにかを発見した。
……これは魔物じゃないよなあ。
「どうしたんじゃ? イズミ」
「んー。なにか人っぽいのがぽつんと倒れているみたいなんだけど……」
「むむ、シグナ集落の連中かのう? とにかくこの辺は魔物もウジャウジャじゃ。早く様子を見に行ったほうがよかろ」
「あいよ、わかってるって」
不審な目で見られたりはしたが、別に恨みはない。助けられそうなら助けてあげたいよな。俺はすぐさま反応のあった場所へと駆け出した。
ほどなくして目的地の川岸に到着すると、そこにはうつ伏せに倒れた人の姿があった。ずぶ濡れで沿岸の泥で汚れており、川からなんとかここまで流れ着いて力尽きたように見える。
ヤクモの言うとおり、この周辺には魔物がウジャウジャといるはずだ。まだ無事ということは、流れ着いてそれほど時間が経っていないのだろう。
「あのー、大丈夫ですかー?」
おそるおそる声をかける。しかし、反応がまったくない。
とりあえず、うつ伏せはよくないよな? 俺は意を決してしゃがみ込むと、その人物の肩と太ももを掴み、ごろりと仰向けに転がした。
「うっ……」
仰向けにすると、その人物はかすかに声を漏らした。どうやら生きてはいるようだ。
顔は泥で汚れていたが、薄緑色のスカートと緩やかに上下するかすかにふくらんだ胸から、女の子であることは確認できた。
まあ性別はどうでもいいんだけどな。とにかく水死体じゃなかったことにホッと胸をなでおろした。
『むっ……コヤツ……』
念話でヤクモが呟く。その視線の先にはあるのは、女の子のぐっしょりと濡れた金髪と、その間から飛び出ていた――長い耳。
えっ、ウソでしょ。この子、エルフじゃん。
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