210話 技のデパート
俺はツクモガミを起動させると、まずは《身体スキル》から見ることにした。ツクモガミのモニターには――
《身体スキル》
【短剣術】【投てき術】
このように表示された。【短剣術】は習得済。そして初めて見る【投てき術】。とりあえず【投てき術】をタップしてみた。
《そのまんま、物を投げるスキルじゃ。お前はなんやかんやと物を投げとるからのうー。向いとるスキルじゃと思うぞい。スキルポイント15を使用します。よろしいですか? YES/NO》
ふむふむ、たしかにナイフやら斧やら投げまくってるしな。これがあれば俺の必殺斧投げもスキル分さらに強化されることになるのだろう。
スキルポイントは1500☆近くある。当然、悩むことなくYESを押した。すると――
《スキルコンボ発生》
《サイドワインダーを習得可能になりました》
おおっ!? クリーン以来となる、スキルコンボが発生したぞ! しかし名前からはどんなスキルなのか、まったく想像がつかないなコレ……。
俺はとりあえず名前をポチっと押してみることにした。すぐにヤクモの説明コメントがモニターに流れる。
《これはなー、物を投げた際に己の魔力を消費してな、狙った場所に当たるように自動追尾するスキルじゃ。これはすごいぞ、オススメじゃ! スキルポイント40を使用します。よろしいですか? YES/NO》
ほほう……。【投てき術】スキルで補正がかかったところで、さらに強化を被せてきやがったか。
ヤクモのオススメスキルってのはどうでもいいけれど、自動追尾というワードが気になるし、☆も余っているので習得しないという選択肢もない。もちろんYESをタップ。
その瞬間、俺の頭のてっぺんから足のつま先までビリッとした衝撃が通り抜け、自分の中にスキルが備わったらしいのを実感する。
俺は軽く頭を振って気分を落ち着かせると、【サイドワインダー】を試してみることにした。
辺りに誰もいないのを確認した後、地面に転がっていた石ころを拾う。
そして石ころをしっかり握り込むと、【サイドワインダー】を意識しながら遠くに見える木に向かって、
俺の手から離れた石ころは、まさしく暴投と言っていいくらいあさっての方角へひゅーんと飛んでいき――
そして物理法則を無視した、とんでもないカーブを描いたかと思うと、見事に木に命中し、コンッと軽い音を立てて地面に転がった。
「おおっ、このスキルいいんじゃね?」
「あったり前じゃい! スキルコンボにはこのように神々が苦心して作りあげたオリジナルスキルがたっくさん含まれておるからのう!」
自慢げに顎を突き出しながらヤクモが言った。威力の方は普通に投げたのと何も変わらないのだが、これはこれで使えそうなスキルだ。さらには魔力の消費も大したことないのもありがたい。
というか初めてヤクモの口から聞いたんだけど、やっぱりスキルコンボには特別なスキルが多いらしい。まあイーグルショットとか明らかにヤバいもんなあ……。
と、これで身体スキルのチェックは終わった。精神スキルはなんもなし。最後に特殊スキルをチェックしてみることにした。
《特殊スキル》
【遠目】【夜目】【跳躍】【気配感知】【罠感知】【縄抜け】【軽業】【泥苦手】【美声】
おおー、こいつはまさに技のデパート。やたらとスキルが多い。たしかにギニルは曲者っぽい髭のオジサマでジョブは斥候とのことだったが、それも納得のスキル構成である。
とはいえ、俺が習得しているスキルも多い。この中で未習得は……【罠感知】【軽業】【泥苦手】【美声】の四つか。
まず気になったのは【美声】。美声って……。そりゃまあたしかにギニルはイケボだったけどさあ。そしてその次に気になるのは【泥苦手】。
これはヤクモの説明によると、名前のまんま泥が苦手で身体能力が落ちるといったものらしい。
そういえば、ギニルが泥にハマったのが原因でパーティが半壊したんだよな。それにはこのスキルの影響もあったのかもしれない。
三人組のうちの一人が不調になるのはかなりキツいだろうし、シグナ湿地帯は『暁の光』にとってかなり不利な地形だったようだ。
さて、残りの【罠感知】はそのまま罠があれば感知ができるスキルらしいので、サクっと覚えた。そして【軽業】は身体を使ったさまざまな芸当ができるようになるのだとか。
つまりは小学生くらいの頃、一度は憧れたバク転やバク宙もできるようになるのだ。
まあ戦闘でもなにかしらの役に立ちそうだし、ちょっとワクワクしながらポチッと習得。
ビリッとした衝撃が収まった後、さて、バク宙でもしてキメ顔をしてみるか! と思いきや――ここで再びスキルコンボが発生した。
《スキルコンボ発生》
《フロートを習得可能になりました》
フロートとな。
フロートねえ……アイスクリームか? なんだこれ?
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