200話 金策効率

 俺がストレージに弓をしまうと、それが合図になったかのように四匹のバジリスクはバラバラと倒れた。口をポカンと開けていたコーネリアが、かすれた声で呟く。


「な、なんだい、こりゃあ……」


「ええと、やっぱり弓が一番得意なもんで……」


「得意って、そういう次元なのかい、コレ……?」


 口元を引きつらせながら、コーネリアが死屍累々のバジリスクを指差した。


「そういう次元なんです。ちなみにこの技はナッシュさんにも見せたことありますよ」


「ん? あ、ああ……そういうことなのかい。実は昨日、ナッシュが起きたときに改めてあんたのことを聞いたんだけど、ところどころ口ごもったりしてさ、なにか隠してるように感じたんだけど……なるほどねえ……」


「あはは……。それじゃ向こうのヤツ、片付けてきますね」


 納得顔でうなずくコーネリアに愛想笑いをし、俺はバジリスクの死骸に向かった。



 連なって倒れているバジリスクを見て、俺はにんまりと笑みを浮かべる。


 これはいい臨時収入だよな。これなら苦労して倒した最初の一匹はルーニーに売っぱらって現金収入をいただき、まとめて倒した方でゴールドを稼ぐことができるだろう。


 イーグルショットでゴリゴリに削って倒したので買取価格は安いと思われるが、四匹もあればそれなりの額になるはずだ。こいつらはさっさとツクモガミで売ってしまおう。


 俺はさっそく四匹を収納し、一匹ずつ売っぱらった。値段はイーグルショットを最初に食らった先頭のバジリスクから順番に、


【上半身のないバジリスク 1匹 取引完了→130000G】


【上半身のないバジリスク 1匹 取引完了→150000G】


【首と両前脚のないバジリスク 1匹 取引完了→210000G】


【首のないバジリスク 1匹 取引完了→260000G】


 このような結果だった。先頭が一番損傷がひどく、最後方が一番マシだったので、やはり削られた部位が少ないほど高く売れるようだ。もしかしたら価値のある部位なんてものもあるかもしれないけど。


 合計の売却額は75万G。結局、苦労して倒した一匹(40万)の二倍近い収入を得たことになる。


 こういうことがあると、今回は大量に向こうから獲物がやってくる幸運(不運だったかもしれない)もあったとはいえ、やはり金策でもイーグルショットの攻撃力は捨てがたい気がするよな。


 今後も効率よく金策をするには、イーグルショットをうまく使っていく必要があるかもしれない。


 そんなことを考えつつ、コーネリアの場所に戻ろうとすると――


「おっとっ……」


 一瞬、体がふらついた。体力や魔力はまだ十分だと思うんだが、緊張を伴う連戦で精神的に疲れたのかもしれない。


「っと、大丈夫かい?」


 そんな俺を前から抱き抱えるように、コーネリアが体を支えてくれた。


 コーネリアの豊かな胸がむにゅんと顔に当たったわけだが、彼女は気にした様子もなく、俺の顔を間近で見つめながら心配そうに眉を下げていた。おっと、役得だなんて思ったら不謹慎だなコレ。


「なあイズミ、今日はもう帰ろう? 明日また……連れてきてやるからさ」


 まだソードフロッグを狩りながら、ついでに斧も探せれば……と思っていたが、たしかに無理して続けるのもよくないよな。斧はまた新しいのを買うことにして、素直にお言葉に甘えよう。


「明日もいいんですか? それじゃあお願いします」


 そう言ってぺこりと頭を下げると、コーネリアは自分の頬をかきながら言いにくそうに口を開いた。


「……なあ、イズミ。その敬語、止めてくれないかい?」


「え?」


「ついさっき、あたしに『いいから下がれ』とか言ってたじゃないか。あんな感じで頼むよ」


「あー、あれはすいません。ちょっと焦っていたもんで……」


「気にしないでいいって。冒険者なんて実力がすべてだからね。あんたみたいな強い男に敬語で話されると、こっちが恐縮しちまうし――」


 そこで一度言葉を区切ると、コーネリアはなんだか顔を赤らめてもじもじと足を動かした。


「歳下に軽く扱われるの、なんだかすごく新鮮でね……。さっきあんたみたいな歳下の新人にいきなり命がけのおとりを命令された時も、実はゾクゾクしてたんだよね……」


 うっとりした表情を浮かべるコーネリア。えっ、この人Mっ気でもあるの?


「それとも……あたしみたいな歳上とは仲良くしてくれないのかい?」


 うーん……これまでも何度かあったけど、敬語使うなって言われることが多いよな。コーネリアが言ったように実力社会ってことなんだろうが……。


 ……まあ本人がいいならそれでいいか。俺も実年齢考えると、コーネリアの方が歳下なくらいだしな。


「あー、そういうことならこれからはそうするわ。よろしくなコーネリア」


 俺の言葉に呆れたような声でヤクモが呟く。


『相変わらず切り替えが早いヤツじゃのう……』


「ははっ! そうこなくっちゃな! それじゃあ帰ろうかイズミ!」


 コーネリアはニカッと笑うと、またしても俺の背中をバシンと叩いたのだった。



――後書き――


 ついに200話到達しました! ここまで読んでくださりありがとうございます!

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