198話 死亡確認、ヨシ!
俺はおもむろに金属バットを取り出すと、倒れたバジリスクにそろりそろりと近づいた。そして金属バットを振り上げ、後頭部が裂けたバジリスクの頭に向かって思いっきり振り下ろす。
ゴンッと鈍い音が響き、手のひらにも重たい衝撃が伝わってくる。しかしバジリスクが動く様子はまったくない。
……死亡確認、ヨシ! ここで俺はようやく大きく息を吐き、肩の力を抜いたのだった。
『相変わらず、変なところで慎重じゃのう……』
『いいんだよ、これくらいで』
俺が金属バットをストレージに収納しながら狐マフラーと念話をしていると、コーネリアが興奮ぎみに目を輝かせながら走ってきた。
「おーいイズミ! なんだい、なんだい、あんた……すごいじゃないか! まさか本当にバジリスクを一人でやっちまうなんてさ!」
駆け寄ったコーネリアが嬉しそうに俺の背中をバンバンと叩く。俺としてはそろそろ「力自慢はだいたい背中を叩いてくる説」を提唱したい。
「いや、コーネリアさんも手伝ってくれたから一人じゃないですよ」
命がけの
「なーに言ってんだよ、あんなのは手伝いのうちに入んないっての! 実はね、あたしも加勢しようとバジリスクの背後から隙を窺っていたんだよ。でも、そんなのまったく必要なかったようだねえ、アハハッ!」
コーネリアは大口を開けて笑いながら両手剣を魔道鞄に片付ける。そして腰に手をあて、辺りを見渡した。
「それにしてもすごい大雨を降らしたもんだ。ナッシュのアクア以上じゃないか?」
「ああ、いや、これはそういう魔法じゃないですよ。これは収納魔法に入れていた大量の水を外に出しただけですから」
「へえ、そうなのか。……って収納魔法持ちだなんて、あたしに言ってしまってよかったのかい?」
俺を試すようにニヤリと笑いながら片眉を上げるコーネリア。
以前マルレーンから、収納魔法持ちは面倒な
「はい、コーネリアさんのこと信じてますんで」
「おいおい、嬉しいこと言ってくれるじゃないか。もちろん言いふらしたりしないよ、安心しなっ!」
コーネリアが少し照れたように鼻の下をこすると、また俺の背中をバンと叩いた。もう説立証でいいですよね。
……とはいえ、言いふらすような人間に見えないことは確かだが、一番の理由はストレージを隠すのが面倒くさくなってきたからだ。
例えばソードフロッグとか、一度手に持ってダミーの鞄に入れるの、すごい面倒なんだよな。ヌメヌメしてるし重たいし。その点、ストレージなら足で触れるだけ収納できるのだ。
そういうことで、これからはなるべく堂々と使っていこうと思う。もちろん人目が多いところではある程度自重はするつもりだけど。
俺はさっそくバジリスクの頭にちょんと足で触れ、ストレージに収納した――ん? 待てよ?
『なあヤクモ、生きてるモノってストレージに入らないよな?』
『うむっ。付着した微生物なんかはスルーするかもしれんが、基本的に本体そのものは死んでいないと入らないと思っていいぞい』
『そうか……。それじゃあ死亡確認もストレージでできるじゃんか』
『おおっ、なるほど! そういう手もあるのう! 相変わらず変わった使い方を思いつくものじゃなー』
感心したようにヤクモが言うが、俺としては今まで気づかなかったことに反省しかない。やっぱりスキルは使ってナンボだよな。使い続けるからこそ、新しい発見もあるのだ。
思わずため息を吐きながら、とりあえずバジリスクの販売価格を確認する。
【バジリスク 1匹 販売価格→400000G】
おおっ、これまでの最高額エルダートレント25万を越えるじゃないか。
バジリスクと同じB級でも、ロックウルフルーラーはイーグルショットで大部分を削ったせいで15万Gだった。それを考えると、やはり苦労はしたものの損壊を少なくして倒しただけの甲斐はあったな。
さっそく売却したくなるが、ルーニーが欲しがってたんだよな。値段の提示次第では
さてと、これでひと段落といったところかな。だが日が落ちるにはまだまだ時間がある。再びソードフロッグを探して回ろうか。
そう思い、コーネリアに話しかけようとしたその時――俺の【空間感知】は新たな魔物の接近を知らせたのだった。
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