183話 馬上トーク

 拳骨を回避した俺は、しばらくそのまま馬に揺られながら時間を過ごした。


 どうやらコーネリアはそれほどおしゃべりな方でもないらしく、一度話が途切れると俺が話しかけない限りは口を開くことはなかった。話しかければ気安く答えてくれるんだけどね。


 そうしてふと沈黙が流れた時、手持ち無沙汰になった俺は、取得したスキルのチェックを行うことにした。


習得スキル一覧

《身体スキル》

【棒術】【剣術】【短剣術】【大剣術】【斧術】【格闘術】【弓術】【イーグルショット】


《精神スキル》

【ヒール+1】【キュア】【クリーン】【アクア】【ウィンドカッター】【マジックミサイル】【ファイアボール】【警戒結界】


《特殊スキル》

【剛力】【俊足】【跳躍】【回避】【騎乗】【縄抜け】【夜目】【壁抜け+1】【粘り腰】【指圧】【釣り】【遠目】【解体】【料理】【裁縫】【掃除】【洗濯】【薬師】【聴覚強化】【危険感知】【気配感知】【空間感知】【気配遮断】【空間収納】【MP回復量上昇+1】【火耐性】【毒耐性】


 うーむ。スキルはかなり増えてきたな。特にマルレーンから色々と覚えられたのが大きい。


 昨日の移動中、見かけたフィールドウルフで試し撃ちしたマジックミサイルやファイアボールもなかなかの威力だったし、まったくマルレーン様様である。町に帰ったらまたおにぎりを奢りたいくらいだ。


 ただ、所持ゴールドは20万Gと相変わらず微妙に稼げていない。とりあえずエルダートレントの依頼のお陰で現金リンは稼げたので、そろそろゴールドも稼いでいきたいところだな。


 そしてスキルポイントは2000☆。こちらは使えずに貯まる一方である。


 スキルのレベルアップという使い道があるにはあるけれど、習得時の衝撃って死ぬほど苦しいからなあ……。よっぽど切羽詰まった場面に出くわさない限り、踏ん切りがつきそうにない。


 さて、ひと通りのスキルのチェックが終わった。しかし未だ沈黙が続いている。なんだか沈黙が気まずくなってきた俺はコーネリアに話しかけた。


「コホン。ところで……バジリスクってどんな魔物だったんですか?」


「ん? ああ、そうだねえ……。巨大なトカゲのような魔物だったよ。B級の魔物はこれまでも何度かやったことはあるんだけどさ、その中でも一番やっかいだと感じたね」


「どういうところがですか?」


「もちろんナッシュがやられた毒が一番の脅威ではあるんだけど、それだけじゃなくてねえ。湿地帯に足を突っ込んであたしたちの動きが鈍っている中、あいつだけはその巨体らしからぬ俊敏さで動くもんでさ。あたしもナッシュも思うように狙いがつけられなくてね……あれはまさしく完敗だったよ」


 背中越しにも気落ちしているのがわかるように、コーネリアは肩を落とし項垂うなだれた。


「そうですか……。その、ナッシュさんが回復したら再挑戦するんですか?」


「どうだろうねえ……。あたしゃどっちでもいいけど、ギニルのヤツは慎重だからね。意見が分かれるとヘタすりゃパーティ解散ってこともあるかもしれないよ。それくらい今回の敗北は深刻さ。……まあそういうのは、まずは何よりナッシュの容態次第だけどね――ほら、見えたよ。あそこだ」


 コーネリアが指差す方向には丸太が打ち込まれた高い壁が薄っすらと見える。どうやらあの向こうが目的地の集落らしい。


「さて、あんたのキュアに期待してるよ?」


 コーネリアは一度振り返って俺に笑いかけると、馬の腹を蹴り上げ、集落の入り口を目指して馬を疾走させたのだった。

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