102話 焚き火を囲んで雑談
夕食を食べた後は、焚き火を囲んで少し雑談。ラーメンのことも聞かれたが、特殊な製法で作っているので詳細は教えられないと言ったところ、それなら仕方ないと追及の手はあっさり止まった。
特許もなさそうな世界だけに、やはり情報を公開しない製法や技術なんてのも多々あるのだろう。この手はこれからも使えるかもしれない。
俺からも冒険者ギルドについていろいろと尋ねた。その聞き取りの結果、素材の買い取り、身分証明にもなるギルドタグ、安い解体費用と、やはりメリットが大きいように思えたので、町に着いたらそのままナッシュたちについていって冒険者ギルドに入会すると伝えた。
俺の知ってるラノベだと、新人はいろいろとトラブルに巻き込まれたりするが、腕利きと職員と一緒に行けばトラブル避けにもなるだろうからな。
アレサからはアドバイスとして、G級はさっさと卒業して昇級するように言われた。
最下層のG級にずっと留まっているのはゴロツキのような冒険者が多く、ギルドタグを見せたところで身分証明どころか逆に厳しい目で見られることも多いそうだ。そんなのを護衛に雇ったルーニーって一体……。
昇級は申請すればその時点での実績を精査されて合否を判定されるらしい。依頼をクリアすれば加点、依頼を失敗したりトラブルを起こしたら減点。
昇級することで受けられるようになる依頼があれば、逆に下位の依頼は受けられなくなることもあるので、ほどほどの等級に留まる者もいるそうだ。
気がつけば辺りはすっかり真っ暗になり、焚き火の明かりだけが周辺を赤々と照らしはじめた頃、ナッシュがパンと手を叩いた。
「さて、それじゃあそろそろ寝るかい。明日は太陽が昇ったらすぐ出発するからな? 俺がしっかり見張りをしているから、安心して寝てくれよ」
見張りか……。冒険者ギルドに入っても見張りが必要な仕事なんてする気はさらさらないが、どんなものなのか知っておくのは悪くない。ナッシュに頼んでみようか。
「ナッシュさん。俺も一緒に見張りをしていいですか? せっかくなんでナッシュさんから勉強してみたくて」
俺の申し出に、ナッシュはハンサムな唇をニヤリと吊り上げる。
「ほう、いい心がけだな。よし、それじゃあ俺がイチから教え――い、いや、今日は旅の初日だし、お前もいろいろ気疲れしただろう。明日教えてやるよ、そうしなよ。なっ?」
突然態度を急変させたナッシュが、目を泳がせながら話しだした。何度かチラチラとアレサの方を見ているが、アレサは特になにも言うことなく、涼しい顔で茶を飲んでいる。どういうことだ? でもまぁ別に急ぐことでもないか。
「わかりました、そうします。俺は天幕を持ってきているので焚き火から少し離れて寝ようと思うんですが、大丈夫ですか?」
「おっ、ここから離れるのか。好都合……じゃなかった、全然問題ないぞ! そうだな、あの岩の辺りまでなら大丈夫だ」
ずいぶんと焚き火から離れた、馬車と逆方向の大岩を指差すナッシュ。なんだか怪しくなってくるが、まあ俺も空間感知があるし、なんとでもなりそうだ。寝ていても大きな違和感があれば起きられるはず。
「アレサさんとルーニーさんはどこで寝るんですか?」
「わ、私? 私は焚き火の近くで毛布にくるまって寝るわよ」
「私も同じくなのだ! 天幕まで持ってきてるとは、イズミ君はデリケートなんだな」
アレサはなんだかぎこちなく、ルーニーは普段の様子で答える。
「そうですか。それじゃあ俺は向こうに行ってくるんで。おやすみなさい」
俺はナッシュの態度に首を傾げながらも、大岩に向かって歩き始めた。
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