79話 冒険者ギルドもあるらしい。
人を引きずってやってきた俺たちを見て、当然のごとく門番のおっさんは慌てふためいた。そんなおっさんにキースが事情を説明をすると、おっさんは以前のように門番の仕事を放棄しつつ村長へ連絡に向かった。
しばらくして戻ってきたおっさんの指示に従い、冒険者ドルフは村の犯罪者を閉じ込める座敷牢に連行。ドルフはそこに投獄されることとなった。
俺はてっきり以前親父さんが野盗相手にやったようにその場でぶっ殺したりするバイオレンスで無慈悲な展開がくると思っていたんだが、冒険者とそれを統率する冒険者ギルドがかかわってくると、そんな単純な話じゃなくなるそうだ。
ちなみにいまさらだが、この世界にもファンタジー小説の定番、冒険者ギルドがあるらしい。
そういうことでレクタ村から使いを出し、ライデルの町にある冒険者ギルドへ連絡することになった。しばらくするとドルフを引き取りに冒険者ギルドの職員がこの村にやってくるだろうとのことだ。
村からするとほぼ無関係のような今回の事件だが、それでもこの辺り一帯を治めている領主はいるし、その領主と協力関係にある冒険者ギルドにはなるべく便宜をはかったほうがよいのだそうだ。
あんまり非協力的だと、領主から目を付けられることになりかねないのだとか。
冒険者ギルドの職員がドルフを引き取りに来るまで、ルーニーはこの村に滞在することとなった。まあ俺としてはルーニーを助けてこの件は終わり、もう関わり合うことはないと思っていたのだが……。
◇◇◇
ルーニーが襲われた事件から一週間ほど経ち、キースと約束していた狩りの講習も無事に終了。俺もついに森で魔物相手にソロで狩人デビューをすることとなった。
だがその日の早朝、ヤクモと二人で教会からの坂道を下っていると、その一本道でルーニーが仁王立ちで待ち構えていた。
「おや、ルーニーさん。おはようございます」
「うむっ、おはようイズミ君っ!」
「こんなところで会うとは奇遇ですね。それでは」
俺はぺこりと頭を下げるとルーニーの横を通って坂を下りていく。するとルーニーが大慌てで後を追いかけて、再び俺の前へと回り込んだ。
「ちょっ、ちょっと待ってくれたまえっ! どう見たって私が君を待っていただろう? 話くらいは聞いてくれてもいいのではないだろうか!?」
「うーん、そう言われましてもねー」
実はキース伝いに内容は聞いているのだ。この眼鏡巨乳は例の森を探索し、薬草を手に入れたいらしい。護衛の裏切りのせいで未だに目的は果たせていないけど、もともとの目的が薬草の採取だもんな。
そこで眼鏡巨乳はまずキースの元を訪れ、護衛を頼んだのだそうだ。しかしキースは森の神の信徒として礼儀を尽くしたが、採取の手助けまではするつもりはないと拒否。次はお前のところにくるだろうなと忠告してくれていたのだ。
俺としても、これから一人で魔物とやりあうってところで、護衛が必要になるような人物を引き連れたくもない。さっさとおかえり願いたいところなのだ。
ルーニーは予想通り、薬草の採取に行きたいこと、護衛をしてほしいことを身振り手振りを交えて必死に俺に懇願した。だが俺の答えは決まっている。
「俺、これから一人で魔物狩りにいくんです。護衛とか無理ですよ」
「むうううう~! そこをなんとかお願いしたい! せっかくここまでやってきて手ぶらでは帰れないのだ! 君は相当の手練のようだし、私ひとりくらいの護衛なら、ついででなんとかなるんじゃないか? もちろん謝礼は支払う!」
なんとかなるのかなあ。なるかもしれないけど……それにこちらの貨幣ってさほど欲しいと思わないんだよな。こんな村だとほとんど買うものもないし。
俺の反応の悪さに、ルーニーはさらなる一手を打ってきた。
「そ、それならこれはどうだ? 君くらいの年頃なら興味があるのではないか!?」
そう言ってルーニーは肩から斜めにかけたバッグをガサゴソと漁る。ちなみにパイスラというやつである。禁欲生活は相変わらずなのでほんと勘弁してほしい。とはいえここまでの巨乳さんにはなかなかお目にかかれないのでガン見するけど。
するとヤクモからメッセージが届いた。
『おや、イズミよ。よくわかったな。こやつの持っている鞄は収納魔法を定着させた魔道鞄じゃぞ』
パイスラを凝視していただけとはいえない。しかしそうか、これが魔道鞄か、初めて本物を見たな。俺が見ても普通の鞄にしか思えないが、ヤクモには違いがわかるのだろう。
ちなみに俺は変に注目されないためにも、最近は村で唯一購入したダミーの鞄を肩にかけている。俺も斜めがけのパイスラだ。パイがなくてもパイスラと言ってもいいのかは知らんけど。
「むうう、安物の魔道鞄はこれだから困るのだ。もうしばらく待ってくれよ……っと、これだ!」
ルーニーはようやく鞄から取り出したものを俺に見せつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます