45話 弓がない!
【イーグルショット】か。必殺技みたいでかっこいいな。森◯君くらいなら簡単に吹き飛ばしそうだぜ。
とりあえずスキル欄に表示された【イーグルショット】を押してみる。
《通常の弓よりも長射程かつ高威力な一撃が放てるぞい! 後で絶対に覚えるのじゃ! スキルポイント50を使用します。スキルポイントが足りません》
ヤクモの説明からすると、かなりいいスキルなのも間違いない。しかし結構コストが高く、今は覚えられないようだ。
でもまあ、11☆足りないくらいなら1100G分なにかを買えばいいだけだ。戦闘系スキルのメドもついたことだし、久々にツクモガミを解禁してなにか買っちゃおうかね。
ちなみにスキルコンボは他人に触れても上書きされない。覚えたスキルのコンボで覚えるものだからな。覚えるのは後でも大丈夫だ。
と、いうことで、ひとまず戦闘スキルは覚えた。あとは【弓術】なんだから当然、弓と矢が必要になる。俺はさっそくツクモガミで弓と矢を検索した。
しかしツクモガミには弓道用の弓矢は出品されていたものの――めっちゃ高いし、実用的ではなさそうだった。
クロスボウも探してみたが、オモチャみたいな物しか出品されてないようだ。あまり殺傷能力の高いものは売られてないのかね? ナイフくらいなら売ってるんだけど。
こうなると、村の人に作ってもらうほかなさそうだ。しかし作ってくれそうな人か……。
って、あー! 作ってくれそうな人いたじゃん!
「爺さん、今日はもう終わりだよな? 悪い、用事ができたから先に帰らせてくれ!」
「あー、ええぞい。いいものを見させてもらったしなウヒヒヒ。また明日もよろしく頼むぞ!」
そういう目で見てるから兄貴から警戒されるんだよ! と言いたかったが、しゃべっている暇はない。俺とヤクモはすぐさま診療所から飛び出した。
◇◇◇
「いた!」
幸いなことに狩人兄妹はすぐに見つかった。横道に入らず通りをまっすぐ歩いていたのが幸いしたようだ。
「おーい、お二人さん! ちょっと待ってくれ!」
「む、なんだ、診療所の……」
兄貴が振り返り、俺を見て怪訝な顔を浮かべる。俺は立ち止まり少し息を整えた後、二人に向かって話しかけた。
「ハアハア……実は、お二人に頼みたいことがあるんですけど……」
「なんだ? どうやらお前の治療は確かなようだしな。ラウラも身体が軽くなったと喜んでいる。とりあえず聞くだけ聞いてやろう」
隣では妹さん――ラウラもコクリと頷く。
「実はですね……ええと……。そう、俺、少し弓に興味があったんですけどね、せっかく狩人のお二人をお見かけしたもんですから、一度俺に弓矢を作ってもらいたいなと思いまして……。お願いできないでしょうか? あっ、もちろんお代はお支払いします」
さすがに指圧に続いて「実は少しやってたことがあるんスよ」は自重した。
「弓に……興味が……?」
兄貴ことキースの眉がピクリと吊り上がる。
「は、はい。そのダメですかね……」
これでダメなら、他にも狩りをしてる人を探して回らないといけないな。キースの表情を見て、早くも半ば諦めつつ他の手段を考えていたのだが、キースは突然パアアアアアアアアと表情を明るくした。
「そうか! 弓に興味があるのか! この村じゃあ、狩人は俺らしかいなくてな、同志が増えるのは大歓迎だ! いいぞ! そういうことなら弓は俺が作ってやろう!」
「えっ、本当ですか。あ、ありがとうございます!」
「なんだ水臭い、弓の同志ではないか! 敬語なぞいらんぞ」
「おっ、マジで? じゃあ遠慮なく。それでキース、弓は作るのにどれくらいかかりそうだ?」
「切り替えが早いやつだな……まあいい。弓は……材料は自宅に置いてるからな、いまから作れば三日もあれば十分だ。しかし弓を作るにしても、お前に合わせたものを作らないとな。ちょっとみてやるから弓を引いてみろ。……俺の弓よりラウラの弓の方が体格的には合ってるか。ラウラ、貸してやってくれ」
「まったく兄さんは弓バカなんだから……。はい、これ」
軽くボヤいてラウラは俺に弓を差し出した。差し出された弓はキースの物よりも一回り大きい。どちらもとても使い込まれており年季を感じる。
「あの木を狙って撃ってみてくれないか? あそこなら外しても誰にも当たらないしな。とにかく思い切り引いてみてくれ。当たる当たらないより、どれくらい引けるのかをみたい。それを目安にお前の弓を作ってやる」
キースが村の外壁沿いにポツンと生えている木を指差した。ここからは二十メートルくらい離れてる。
俺は弓を手に持ち、弦に軽く触れる。……ああ、【弓術】スキルのお陰だろう、この弓を引くにはどれくらいの力が必要なのか、なんとなく理解できた。
次に的になる木を見る。離れているが、よく視える。これは【遠目】スキルの影響だろう。そして【聴覚強化】で風の音を聞く。弓に影響するであろう風向きと強さが把握できた。
「……ほう、引き方から教えないといけないかと思っていたが、随分と
キースが感心したように顎をさすりながら呟く。ほんとスキルのお陰です。とにかくこれならいける。
「それじゃあ撃ってみますね――っと」
弦を引き、矢を指から離した。
木に向かってまっすぐ飛んでいった矢は、俺の狙い通りに幹のど真ん中にあたり、カンと音を立てて突き刺さった。初めて矢を撃ったけど、なかなか気持ちいいな!
「なんと、イズミ、やるじゃないか! よし! 俺がお前にぴったりの弓を作ってやるからな! 楽しみにまってろ!」
弓マニアのキースが諸手を挙げて喜び、その隣ではラウラが目を丸くして俺を見つめていた。まあ素人だと思ってたのに、けっこういい撃ち方したらこういう顔になるよな。
それから代金や製作日数について話し会い、一通り決まったところで別れた。三日後に再び診療所を訪れた時に持ってきてくれるとのことだ。
そしてその日の夜は1500Gのワインを一本だけ購入。親父さんと二人で夜中にちびちびとそれを楽しみ、貰った☆で【イーグルショット】を覚えた。
◇◇◇
さらに日が経ち三日後。キース兄妹との約束の日だ。
――だがその日、待てども待てどもキース兄妹は診療所にはやってこなかった。
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