34話 ストレージ
普通ならテントはきれいに折りたたむべきだとは思うけれど、せっかくストレージなんてものがあるんだし、俺はテントに手を触れてストレージに収納してみることにした。
だが残念なことに《大地に固定された物は収納できません》とのメッセージが表示されてしまった。
そこで次はペグとか言われているテントを固定するために地面にぶっ刺すデカい釘を抜いてみる。すると今度はあっさりと収納できた。便利は便利なんだが、結構いろいろと制約があるよなあ、このストレージ。
さらに壊れた馬車もストレージに収納した。ツクモガミに出品はできなくても収納はできる。仮にこれが他人の私物だと収納できないと思われるが、この馬車はもう親父さんに譲られて俺のモノだしな、ふっふっふ。
とはいえ、いちおう持ち運びはするものの、村に着いたら馬車は返そうと思っている。これからしばらくお世話になるつもりだし、壊れた物を俺が持ってるよりも、修理してクリシアの家で使ってもらったほうがいいだろう。
こうして後片付けも終わった。向こうの方では親父さんはすでに起きており、クリシアから水桶を渡されている姿が見える。
少し時間が余ったのでヤクモにツクモガミを通して、どうしてストレージに他人の私物が入れられないのか聞いてみた。ちなみに当のヤクモはまたどこかに姿を消していて見当たらない。
『ストレージはその気になれば盗みにも使えるからなー。世界のためとはいえ、善き人の子らの秩序をむやみに乱されるのは困るのじゃ。まあ事前にワシらがお前の魂を審査した結果、お前が巨悪に染まることはない、との判断がされとるんじゃけどな』
『マジか。もしかして俺って神様から評価が高い?』
『アホウ、悪くても小悪党程度だろうと思われてるだけじゃわい。とはいえ、人とは魔が差すこともあるからな、念のために機能制限しとる』
『あっそう……。まあ逆に言えば収納できるものは誰のものでもないってことだから、その判別をストレージがしてくれると思えば俺も気軽に使いやすいし、要は使い方だよな』
『そのとおりである。なんじゃイズミ、頭も使えるではないか』
『うるせえわい。ところでヤクモ、お前今どこにいるんだよ? 軽く朝食を食べたらそろそろ移動するぞ』
『森の方におる。すぐ戻る』
『森? なんでそんな所に』
『別にどうでもええじゃろ』
『なんだよ、そんな言い方されると気になるな』
『お前が知る必要はない』
『おいおい~。隠し事はナシで頼むぜ~?』
『花摘みじゃ! やっぱりお前はアホじゃわいっ!』
そのメッセージを最後にモニターがかき消された。おおう、これは俺が悪かったよなあ。後で謝っておこう。……というか、神様でもさすがに食ってりゃ用を足すんだな。
◇◇◇
どこか不機嫌な銀狐姿のヤクモを引き連れ、クリシアと親父さんのいる焚き火跡へと向かった。
「おかえりイズミ。あっ、ヤクモちゃんもいるんだ。逃げちゃったのかと思ってたんだけど、本当にイズミに懐いてるんだね」
クリシアがヤクモを見て嬉しそうに笑った。昨日の宴会時にクリシアにはすでにヤクモを紹介している。
昨日の記憶はないって言ってくせにずいぶん都合のいい記憶喪失だなと思ったけれど、すでに都合のいい記憶喪失をしている俺には何も言う権利はなかった。
「ただいま。親父さんもおはよう」
「おうっ、昨日は楽しかったなイズミ!」
親父さんもいっぱい飲んだわりに、元気ハツラツといった感じだ。
「親父さん、キュアを使ったのか?」
「ん? 俺はキュアなんて使えないぞ? まあ実は今修練中だから、もうすぐ使えそうではあるがな。あれを覚えたらもっと酒を飲んじまいそうだ!」
ガハハと笑う親父さん。どうやらクリシアと同じく酒が残らない体質のようだが……あれ? 本人が覚えていない魔法も俺が覚えることもできるのか? またヤクモに聞きたいことが増えたな。道中にでも聞いてみようか。
それから軽い朝食を取ることにした。と言っても、俺が昨日買った《パンギフト 食べかけ》にパンが四つ残っていたので、それを提供しただけだが。
親父さんが甘いものは苦手ということで、二人と一匹で四つを分けることになった。謝罪の意味を込め、ヤクモに二つ献上したことは言うまでもない。
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