第3話 コンビ結成
「所長お帰りっす」
「お疲れ様です」
「二人ともお疲れ様です。留守中に何かありましたか? 」
「えぇ、所長、渡辺さんの奥さんの麻衣さんから真さんに対する不倫調査の依頼がありました」
「お受けしたんですか? 」
「勿論です」
「分かりました。ただし、堂園君も一緒に連れて行ってあげてください」
「所長と俺でお願いします」
「まぁまぁ、大杉君のかわいい後輩のためだと思って、ね? 」
「そうっすよ肇さん、こんなにかわいい後輩そうそういないっすよ? 」
「いやほんとに所長と俺だけでやらしてください。こいつが居たら対象に気づかれますって」
「その技術もしっかり教えてあげてくださいね」
こうなった所長は梃子でも動かない。しぶしぶ俺は了承する。
「了解です…一応麻衣さんにも2人分の料金でお伝えしていますし」
俺たちの事務所では2人体制で調査を行うことになっている。
「では、よろしくお願いしますね」
「お願いします、カッコいい肇先輩(笑)」
「所長に頼まれなきゃお前なんか絶対に連れてねぇからな」
「ひどいっすね」
「まぁ、とりあえずこの時間だと会社だな」
「行くんすか? 」
「いや、まずは今ある情報を整理しよう」
「俺、そういうの苦手なんすよぉー 」
「これも探偵の仕事のうちだ」
「分かりましたよ」
「しかし、互いに不倫をしてるってことだよな」
「そうっすよなんで言わしてくれなっかんすか? 」
「お前、守秘義務があるって言ってるよな? 」
「ああ!そうでしたね」
「先が思いやられるな」
「まぁ、ともかく会社から家までの距離を考えると」
個人情報が書かれた書類に目通す。書類には、住所や連絡先だけでなく、依頼人の身分証のコピーも張り付けてある。最重要書類だ。
「不自然ではないか」
「通勤に1時間すか」
「妥当だろう」
「そうっすね」
「しかし、リーマンも大変っすね」
「お前サラリーマンじゃないだろ」
「満員電車に毎日揺られて可哀想っすね」
「無視かよ。だがまぁそうだな」
「次は、証言だな」
「スマホを見てることと、見知らぬ女性との電話か」
「そうっすね」
「これだけでは、何とも言えないな」
「次は……」
「君、……君……大杉君?」
「あっ、はい所長なんでしょうか? 」
「私はもう一度ちょっと出てきますので、君たちも出かけるようならマスターに留守を頼んでください」
「了解しました。お気をつけて」
「所長いってらっしゃいっす」
「堂園君しっかり大杉君から吸収してきてくださいね。頑張って」
「はい! 」
「大杉君、堂園君のことをよろしくお願いしますね」
「分かりました」
「では」
カランと鈴の音を鳴らし所長も階段を下りて行ったようだ。
「さてと、次は、出掛けるか」
「どこいくんすか? 」
「家から会社までの経路で女性と密会できそうな場所を探す」
「今は、11時47分か、とりあえず昼にしよう」
「了解っす」
「あとはマスターに連絡だな」
「やっと会えるんすね」
「半年マスターには会ってないからな」
「俺は初めてっす」
「そうだったな」
と俺はスマホの電話帳を開く。この事務所の関係者は一つのリストにまとめている。
マスターと書かれた画面をタップし電話をかける。数コールの後、あの渋い声が聞こえる。
「もしもし?増田ですが」
マスターは増田と言う。マスターの増田さんだ。
「もしもし、竹久探偵事務所の大杉ですが」
「あぁ、久しぶりだね肇君」
「えぇ、本当にかれこれ半年ぶりですから」
「あぁもうそんなに経っていましたか。どうですか新人君は? 」
「今から初調査に。些か心配ですが」
「そうですか。それで、私に留守をと言うことですね? 」
「えぇ、お願いできますか? 」
「はい。大丈夫ですよ、何せ老人はやることが無くてね」
「新しく始めた喫茶店はどうされたんですか? 」
「あぁ、弟に任せています」
「そうだったんですね。じゃあ暫くウチでコーヒー淹れてくださいよ(笑)
新人が淹れたコーヒーは飲めたもんじゃないですよ」
「ははは、それはお困りでしょうな」
「ほんとですよ、所長に相談しようかと」
「そうですか。また、コーヒーをお出しできるのが楽しみだ。
っと話が過ぎましたね。ではそろそろそちらに向かいますので」
「あ、はい。ではよろしくお願いします」
「かしこまりました」
「では、失礼します」
そういって俺は、通話を終える。
「さて、行くか」
「俺の淹れたコーヒーはホントに不評っすね」
「悪かったって」
「とりあえず、昼にしよう」
「ですね、もうすぐ12時っすから」
~続く~
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