第10話
「「「「いただきます」」」」
「い、いただきます」
父さん、母さん、俺、雪菜。
そしてかおるを交えて5人で食卓を囲む。父さんが会社の後輩なんかを連れてくることがたまにあるけど、久しぶりに誰か他の人が居る晩飯だ。誰か来ると、母さんが張り切ってご飯を作ってくれるから嬉しい。今日も明らかに気合が入った品数である。
「かおるちゃん、お味はどうかしら」
「お、美味しいです。このカボチャ、めちゃくちゃ美味しいですね」
「あら〜ありがとう。やっぱり?今日のは特に自信あったの」
なんか母さんすごいイキイキしてるな。家の中でさっきまで料理してたのにちゃっかりメイクまでしてるし……。
隣に座る雪菜に視線で問うと「そりゃ、お兄ちゃんが女子連れて来るとか初めてだし」と返される。あれ、そういえばそうか。あんまり女の子と仲良くなると面倒だなと思って、中学の頃は家に呼んだことないんだった。
「でも良かったわ、拓人ったら幹夫さんに似て奥手だから。高校で女の子と仲良く出来るか心配だったのよ」
「は、はぁ……奥手?」
かおるがこちらに白い目を向ける。俺と父、浅川幹夫は黙々と食べている。いいんだよ母さんの中ではそうなんだよ。父さんも若い頃は割と遊んでたらしいけど、それは男と男の秘密なんだよ。
雪菜も心なしか目を輝かせて口を開く。
「で、やっぱり樫峰先輩ってお兄ちゃんの……」
「友達!ただの友達ですクラスメイトです!」
「んで同じ部活な。これからもテストとか忙しい時は、母さんに弁当頼もうかと。良いよね母さん」
「もちろんよ!任せといて」
考えてみると、迎えの車が来た時からやけに緊張されていた。まぁうちの車は無駄にデカいから、ちょっと怖いかもしれない。2500ccなんて市街を走るだけなら明らかにオーバースペックだ。母さんにも運転しづらいと文句を言われながらも、懲りない父さんは俺の大学進学と同時にさらにデカい3000ccを買い、こいつは俺が貰い受けることになる。
無駄にデカい正門にも驚かれた。今日かおるの家に行ってみて分かったが、本当に無駄だ。暮らしはコンパクトであればあるほど良いと思う。早く俺も一人暮らししたい。庭だけは、気に入ってるけど。
ただいま、とドアを開けるとすぐに「お兄ちゃんの彼女!?」と言って雪菜が飛び出してきた。
「うぇえ!?」
「雪菜、クラスメイトの樫峰だ」
「こほん。失礼、妹の雪菜です。で、お兄ちゃんの彼女さんですか!?」
「ち、違います……けど」
俺を横目で、ちらと確認しながらかおるが言う。なんだよ、クラスメイトだろお前は。
それから居間のソファで、雪菜に質問責めにされる。会って2ヶ月でそんなに話すことも無いだろうと思っていたら、今度は中学時代の俺のことを様々かおるに聞かせ始めた。
ええいやめんかと止めようとするが、逆に「タクトはあっち行ってて」と追い出されてしまいった。仕方なくキッチンで母さんの手伝いをして、晩飯が出来たら配膳して、今に至る。
「そう言えばそろそろお兄ちゃんの誕生日ですよ、7月1日です!先輩の誕生日はいつです?」
「あ、そうなんだ……わ、わたしは10月、の13日です」
……ふーん。まぁ覚えてたら覚えといてやるよ。
飯の後は風呂に入って、かおるを客室に案内しようとしたが「いえ先輩、私の部屋で寝ましょう!まだまだ色々聞きたいですから!」と雪菜に布団を持っていかれてしまった。
友人を家に呼ぶのもなかなか楽しい。クラスの男子にはオタクも多い、俺が話しについていけるようになったらうちで作品鑑賞会に誘ってもいいな。
「今度は香夜も呼ぶか」
「あー、いや、香夜はほら。男の家なんて部長が厳しいんじゃないかな門限もあるし。こんな気軽に誘えるのフットワーク軽い私くらいだって、うん」
「それもそうか。じゃあ今日のことは俺たちだけの秘密な」
指を唇の前に立てて、しーっとジェスチャー。少し子供っぽかっただろうか。かおるの顔が赤い。
雪菜は変に上品なお嬢様ぶるということもなく、普段から年相応に
去り際二人が何か言っていたような気がする。が、今は借りた漫画を読みたくて仕方ない。意気込み自室に戻る。さて、今夜は長いぞ……!
「お兄ちゃんそういうとこだよ、変わってないなぁ……」
「中学からアレだったのね……」
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