お疲れ社会人が中学生の双子と
~お疲れ社会人が中学生の双子と~
「ユミ、おつかれさま」
「ユミカちゃん、毎日お仕事ごくろうさまです♡」
双子のささやきに挟まれて、ユミカはゆったりと目を閉じた。
右耳のお姉ちゃんイチカはふにふにと肩をもんで、左耳の妹ちゃんミクルはちゅっちゅと唇で愛してくる。
左右の癒しを独り占めするユミカは、夜遅くまでの仕事で溜まりに溜まった疲労がほろほろと溶け落ちるのを感じていた。
大人になるまで好きでいたら一緒になるという幼気な約束は、ユミカが高校生であったときから今になってもまだ形を保っている。とっくに成人済みの身でこうしてその好意に甘えるのはやや気が引けたが、仕事の疲れはそんなささやかな理性から気力を奪うには十分すぎた。
「ふたりとも……いつもありがとうね……」
「ううん。いいんだよ。ユミがキモチいいと私もうれしいから」
「ユミカちゃんにはわたしたちをもらってもらわないといけないんですから。いまのうちにいっぱいお金を稼いでいてくださいね……♡」
ふゅふゅと吐息が耳介をくすぐると、わりとひどいことを言われている気がしてもどうでもよくなってしまう。むしろ家に帰ればいつでも愛おしいふたりが待っていることを考えると仕事で家を空けてほしくない。なんなら自分も仕事に行かずに延々とらぶらぶしていたい。
そんな心地よい妄想を繰り広げるユミカに、双子は顔を見合わせて笑う。
「そうだ。ユミユミ、今日なんの日か知ってる?」
「今日?」
「うふふ♡ユミカちゃんのためにトクベツなご奉仕を用意したんですよ……♡」
そう言ってふたりが取り出すのは黒っぽいパッケージのポッキー。
そういえば今日は
「ユミも、きて?」
「ユミカちゃんも来てください♡」
「え。こ、こう?」
ポッキーゲームの中間に混ざるという斬新すぎる体勢。
けれどどうやらそれは正解だったらしく、ふたりはユミカをじぃぃと見つめながら、さく、さく、と少しずつポッキーを食べ進む。
当然そんな体勢でやっていればすぐにふたつの唇は真ん中の唇にたどり着いく。
そもそもどうやって動けばいいのかも分からずちゅちゅっと触れるくちづけを受け入れるユミカに、双子のくすくすというさざめきが触れる。
「「わたしのかち」」
両の耳から脳に響く勝利宣言。
一瞬で負け犬になったユミカは、ももをなでさする優しい手つきにゾクゾクと震える。
「ユミ、罰ゲームね♪」
「ユミカちゃん、おしおきですね……♡」
もうとっくに、自分のほうがふたりから離れなくなっているなと。
左右からもてあそばれながら、ユミカはぼんやりとそんなことを思った。
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