第24話 ラントピア
ピコッタはミレンちゃんと遊んでいる。
私はルドアとラントピア狩りの打ち合わせに余念がない。
基本、一匹のラントピアに対して複数人で当たると言う事になっている。
それだけの強敵と言う訳だ。
ただでさえ水中でこちらは、分が悪い。
魚の魔物に水中で挑む事自体に、無理があるのだけど。
餌で誘きだしてなんて作戦は通用しないとか。
歴戦の言い伝えによると、相手はそれなりの知性も、持ち合わせているらしい。
正々堂々、正面から向うのが1番効果的なのだとか。
まず、私が危惧するのは、魔法が水中でも威力を、保てるだろうかと言う事。
魔法が通用しなければ、私の出る幕はない。
これは、実験してみるのが早そうだ。
あとは、2人の伝説の銛漁師の影の活躍に期待が高まる。
切り札的なものがあるといいのだけど、これと言ってそうそう転がってるものではない。
ラントピアの攻撃は鋭い牙を使った噛みつきと、刃物のような鋭いヒレだ
防御力も強くて、体表をヌルヌルした膜が覆っていて、刃物を逸らして躱すらしい。
目、エラ、腹の皮が柔らかい急所を槍で突くと言うオーソドックスな戦法が推奨されている。
当然、ルドアもその戦法で行くと、決めているようだ。
騎士同士の決闘でもあるまいし、魔物相手に正々堂々を誇ったところで、殺られては意味がないように思えるが。
ルドアにそのつもりがなくても、私は勝手に策を講じる手立てを考えるべきだ。
サーヴァント魔法で凄腕銛漁師2名様に活躍してもらうのは確定してる。
想定されるラントピアほ2匹として、ルドアを入れて3名が、矢面に立つとすれば、最低でも一匹は仕留められるだろう。
その後にテイム魔法で加勢させれば、残る一匹も安定して倒せると筋立てする。
問題は、ラントピアが2匹以上だった場合、若しくは他の魔物も攻撃に加わっていた場合だ。
最悪、ゲレンザ族の剣士ホルアークを呼ぶ事も考えられる。
ところで、私はサーヴァント魔法で何体の影を呼べるのだろう。
これも確認しておく必要がある。
本番で一か八かやってみたら駄目でした、なんて無責任過ぎる。
異世界転生物の主人公なら、土壇場で新たな技でも繰り出せるかもしれないけれど、現実はそんなに甘くない。
と言うより、得てして状況は悪い方にしか傾かないものと思った方がいい。
ルドアとの打ち合わせを切り上げて、湖の畔に立つ。
ピコッタはミレンちゃんと、お家で遊んでいる。
腹がへったら、買い食いするよう銀貨を数枚、渡しておいた。
「闇よ、親愛なる闇よ、その力を見せよ
ダークランス 」
ーーーボシュッ!
上げた私の手の更に上に黒い槍が現れる。
振り下ろす手に応呼するように槍は打ち出される。
僅かな黒い煙が風に巻かれて散った。
水面に突き刺さり、水を掻き分けるように進んでいく。
空中より抵抗があるのか、スピードは幾分落ちるように見える。
ダークボールは、水面に突入する際、盛大に水しぶきを上げたが、それだけ威力があるようにも見えた。
水中でも闇魔法は大丈夫そうだ。
「魔道士と言うのは満更、嘘でもなさそうだ…… 」
見ていたルドアがそんな言葉を漏らす。
彼から槍と銛を借りる。
サーヴァント魔法で話に聞いた漁師の、影を呼び寄せた。
左右の手から銛と、槍を影に渡した。
空中を槍が舞う。
銛が、目にも止まらぬ速さで突きだされ、振り上げられ、大きく回転して、払われる。
槍は何かの型の演舞でも、しているかのようだ。
"収納" から券2本だして、更にサーヴァント魔法を唱えた。
ゲレンザ族の剣士の影も現れる。
2本の剣が踊るように、空中を舞いはじめた。
「お前、すごいな…… 」
いや、更にテイム魔法も使いたいのだから、まだまだ十分ではないのだけど。
そのうち、銛と槍が、打ち合いをはじめた。
影達には、その力を見せよとしか命じてない。
ひょっとして、父と祖父が、腕試しをはじめたのだろうか。
そこへ、2本の剣も割り込んだ。
仲裁するかと思えば、一緒になって打ち合いに参加している模様。
根っからの戦闘好きばかりらしい。
辞めるよう命じて武器を返させた。
「あの、槍の動きはオヤジの決め技じゃないか? お前、知ってるのか? 」
「知らないけど、 槍が覚えてるんじゃない? 」
「そうか、槍がか…… 」
手渡した槍を嬉しそうに見詰めるルドア。
槍も銛も父から受け継いだ物だと聞いている。
別に槍を2本用意しておこう。
その日は、準備に充てて、翌日の昼に決行する事にした。
最悪、私も水に入るかもしれない。
流石に下着だけでは心許ないので、 ルドア達、漁師が見につけているような短パンタイプの服も買い求めた。
水辺の正装だ。
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