第21話 馬車の旅
「……と言う訳で、エルフの国に行く事になったんだ……」
「エルフの国、楽しみ…… いつ行くの? 」
「明日にでも…… 」
ええと、これはピコッタも行く気でいる?
「ピコッタ、君は、何処か身を寄せる処とかは? 」
「お兄ちゃん、置いてかないで…… 」
抱きついてくるピコッタ。
一人前に胸の膨らみあるようで、とても7歳児とは思えない。
獣人の体は良く分からない。
その夜、ピコッタは実力行使に打って出た。
既成事実を作ろうと、迫ってくる。
しかし所詮は7歳児。
それに、私は気持ち的に男でも女でもないから。
稚拙な手法に反応なんか……。
その夜は見事、ピコッタの勝利で決着がついてしまった。
私の腕枕で寝るピコッタ。
まるで恋人のよう。
7歳児じゃないと確信するに至った。
この娘も私の体と同じように、小さいままで大人なのかもしれない。
テクが子供じゃなかったし。
下半身がスッキリして、迷いが吹っ切れてしまった。
連れて行くしかないだろう。
全ては私の不徳の致すところ、ゆえ。
翌朝もそんな事、しなくていいのに、サービスしてきた。
異世界もののエッチな展開だと、女奴隷を買ってハーレム作って、昼も夜もみたいなピンク色な話もあるけれど、私は、そんな劣情に流されるつもりはないから。
とか言える光景ではないのは重々承知ですけど。
お兄ちゃんは、悲しい。
ピコッタにそんな要求した覚えはないのに。
7歳児の可愛い妹ぐらいにしか思ってなかったのに。
いつの間にやら大人の女性の顔していらっしゃる不思議。
背も同じ位だし。
"延長どうします?" とか、髪をかきあげながら、言いそうな雰囲気すら醸し出しているし。
魔性の女か。
きっとそうだ。
魔族の女とはちょっと違う。
「はい、お兄ちゃん…… 」
そう声をかけて、下着を穿かせて貰う。
もう何と言うか、彼女より、私の方が子供のような気さえしてきた。
きっと、年上だ。
きっとそうに違いない。
朝食の席でも相変わらず食べるのは早いピコッタ。
置いてかれまいと、片時も傍から離れない。
「じゃ、行こうか…… 」
「うん 」
なんでか、手を繋いでくるピコッタ。
周りからは、仲の良い兄妹にしか見えないはず。
それが、昨夜はこんな事やあんな事を……。
お兄ちゃんは、悲しい。
そう、とても。
ルリャーニさんの渡してくれたメモには、アグラメセア王国側の国境の町と、ジェネルゲア国に入ってから4つの町の名が記されている。
この順番で行けば目的の町にハズガズに行けるのだろう。
取り敢えず、目指すは国境の町リリングスとなる。
今度は身分証があるから、断られる事なく馬車に乗れた。
ピコッタは妹だと言うと大丈夫だった。
他にも客はいて、荷物を持った商人だったり、武装した男女だったり、子連れの親子だったり、色々だ。
馬車がゆっくり動き出す。
幌のかけられた車内からは前後の景色しか見えない。
後方に流れ去る町並みを見詰めるピコッタ。
何かしら思うところがあるのだろう。
私にしても、森を出て、町も出て、ドンドン世界が広がって行くのを感じざるを得ない。
ちゃんと人として、生きていけてる。
オマケがついてしまったが、仕方がないか。
背が低いのは、何も私達だけではなかった。
次の町にはドワーフがいた。
目線が、同じ高さだった。
手足が太くて毛深くてゴツいのには驚いたが。
夕方に着いた町では、屋台で買い食いして、店主のおばちゃんに宿屋を聞いた。
ダーベビルの町よりは、大きな町だ。
違いがあるとすれば、武装した者の姿を殆ど見ないところがだろうか。
魔物が出ない町なのだと思った。
魔物のない所に冒険者はいないと言う。
宿屋は特に変わったところも無く、拍子抜けするほど普通。
馬車で1日移動した程度では、大した距離は移動してないと言う事らしい。
電車や飛行機の旅と比較すると、びっくりするほど移動していない。
町ひとつ。
1日移動して、それだけだ。
馬車は遅いが、自分の足で歩くよりは楽。
そんな程度の乗り物だ。
騎士のように直接馬に乗ればもっと早いとは思うけど。
子供2人が、馬に乗る光景を想像すると、目立つ事請け合いだ。
難癖をつけて、馬を取り上げようとする者が後を絶たないだろう。
なら、魔物をテイムして乗れば良かったと、後で気付いた。
死骸でもテイム出来るのだから、町中では収納に入れておいて、町の外に出て乗れば目立たない。
道中は、見られても追いかけては来れないだろうし。
森から離れてしまった今となっては、叶わぬことだ。
湯浴みも、食事も終えて、手鏡を覗き込みながら、濡れた髪をブラシで梳かすピコッタ。
部屋には洗った下着が干してある。
何と言うか、同棲カップルの部屋のようで、居心地が良くない。
聞こう聞こうと思いながら、まだ、本当の歳は聞けてない。
きっとそのうち、分かるだろう。
馬車に揺られて尻が痛いので、早めに寝る事にした。
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