バスルーム

――その日の夕方、日が沈む頃。ローゼフは、ピノをお風呂に入れた。寝室の隣にある浴室で体を綺麗に洗ってあげた。ピノは初めて入るお風呂に無邪気に喜んでいた。まるで見た目は人間の子供のようだった。だが、少年には大きな秘密があった。それは見た目は人間の子供のようだったが、体の造りが人形だった。間接部分が人間とは異なり、人形特有の間接だった。そこに違いがあるのは見ても明確だった。ピノは人間ではなく、人形なのに人と同じ形で生きて喋って動いている。そして、体温も感じられる。まるで全てに、不思議な魔法がかかったようだった。ローゼフは初めは驚いたが直ぐに慣れた。彼は何も言わずに、ピノの柔らかい髪を丁寧に洗ってあげた。


「お前はホント、不思議だな。そして奇跡のようだ。私は生きた人形なんて見たことがない」


「本当に?」


「ああ、そうさ――。ピノ、お前は奇跡の子供だ。きっと世界中でどこ探してもお前みたいな生きた人形なんていないだろう。私はそこに奇跡を感じずには、いられないのだ」


「奇跡ぃ?」


「ああ、そうだとも」


 ピノには彼の話を理解するのは難しかった。だから首をかしげて彼の方を大きな瞳でキョトンと振り向いた。ローゼフはそう話すと温かいお湯を頭からかけて洗い流した。ピノは彼に体を洗われながら気持ちよさそうな表情をした。そして、湯船の中で浸かりながらリラックスしていた。


「ねぇ、ローゼフもボクと一緒にお風呂に入る? 気持ち良いよ?」


 ピノはそう言って無邪気に話しかけてくると、彼はそれを断った。


「いや、やめておく――。私は一人で入るのが好きなんだ。それに、もし一人で勝手に入ったらパーカスが怪しむだろうしな……」


「パーカス? それってだぁれ?」


 ピノは初めて聞く名前に直ぐ様、反応を見せた。


「ああ、私の執事だ。年が近いのか最近は口煩くてな、ホントあの男には困ったものだ」


 ローゼフはそう言ってピノに愚痴を溢すと、ふとため息をついた。


「ねーねー、執事ってなぁに?」


「そうだな……主人の身の回りの世話をすると共に、家全体の事や秘書として公私に渡り主人の補佐する。それが執事だ」


 ローゼフは何気無くさらっと話した。だが、ピノは意味が解ってないのか、口をポカーンと開けた。


「すまん、お前には少し難しかったな。簡単に言えば世話をする人だ。パーカスは私が小さい頃から、身の回りの世話をしているのだ。それこそあいつは私にとって身近な存在だろう。口煩くてもなんだかんだと、私はあいつに感謝をしているのは確かだ――」


 彼はそう話すと優しく笑った。ピノはその話を聞くと無邪気に聞いてきた。


「ローゼフはパーカスが好きなの?」


 そう言って尋ねると、彼は少し考えた後に「さぁ」と答えた。


「ボクね、その人に会ってみたいな?」


「えっ…――?」



 ピノがそう言って何気なく話すと、ローゼフは急に困った表情を見せた。



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