第七話「苦手な娘に嫌われても、問題はない」

ゴールデンウィーク前に同期会という名の飲み会が開催された。


「おう! ひらめ。あいかわず派手なカッコしてるな」

「待て待て、恭子ちゃん。全然、派手じゃないでしょ? どこ見ていってる?」


「確かに・・・金髪じゃなくなってるし、ちゃんとスーツ着てる・・・。なんだろうね。派手な感じがする・・・」

「あはははは。わけが分からん」


「「お疲れっ!」」


「ひらめくん。ひさしぶり」

「うん。あきちゃん、全然、会社で合わないね」

「そうね、お昼のシフトも違うからかな?」


「ひらめくん。元気だった〜?」

「おう、さやかちゃん。ひさしぶり! この間、琴音さんと飲んだよ」

「琴音さん、きれいだよね〜」

「マジで惚れそうだよ。お姉さんって感じがいいよね」


「相変わらず、おさかんですな」

「おお、恭子ちゃん、すげ〜人数集めたね」


「いや〜男子を集めるのに苦労したよ。ほとんど連絡先知らないし」

「そうか、恭子ちゃんにケータイ教えてなかったね。交換しよう」


一緒に新人研修を受けたほとんどのメンバーが来ている。


当然、真央も参加している。


ひらめがいる下座は女子が多く、上座は男子がメイン。真央は上座側。


(真央さんには、嫌われたな・・・)


「どうした? マナちゃん、元気?」

「あっ、ひらめくん。うん、元気だよ」

「良かった。なんかずっと静かだったからさ」

「うん。ありがと」


入社から一ヶ月しか経っていないのに、新人たちは、それなりに社会人っぽくなってきた。


「終わり〜。一人三〇〇〇円。女子は二〇〇〇円ね〜。ひらめくん。そっちの分集めて〜」


「面倒くさ〜い」


「あ、いいよ。私が集める」

「仁美ちゃん、ありがと。優しいね」


「ひらめ〜。働け〜!!」


店の前で二次会組と帰宅組に別れる。


「お疲れ!」「じゃあね」


ひらめは、さりげなく帰宅組に混じろうとしていた。


幹事の恭子が、ひらめに声をかける。


「ひらめくん。二次会行く?」

「ごめん。今日はパス。また飲もう。電話する」


「二人で?」

「そうそう、デートのお誘い」


「ひらめくんと二人で飲むと妊娠させられそう・・・」

「待て待て。やることやらないと妊娠しないでしょ?」


「えっ? 何をやるの?」

「恭子ちゃん・・・。実はいま、妄想もうそうしたでしょ?」


「してないわっ」


「あはははは。またね」

「うん。じゃあね〜」


恭子に別れを告げ、ひらめは帰宅組の女子たちと駅に向かう。


「俺、上り。さやかちゃんも上り?」

「うん。新宿乗り換え。真央は下りだよね?」


「今日はちょっと用事があるから、新宿に行く」

「じゃ新宿までは一緒だね」


(真央さんも一緒か・・・。なんか気まずい・・・)


「ひらめくん。なんで金髪やめちゃったの?」

「金髪だと根本が黒くなってくるとプリンみたいになってくるでしょ? なんか、毎月、染め直しに行くのが面倒くさくて・・・」


「ふ〜ん。金髪、注意されたから染めたのかと思った」

「確かに、注意はされたね。染め直してからは、全然言われなくなったよ」


「嘘だぁ〜。そんなに明るかったら、絶対に言われるでしょ?」

「それが言われないんだよ。逆に落ち着いたなんて言われる」


酔ってバカな話をしながら、楽しく帰っていると社会人だということを忘れてしまいそうになる。


ひらめは、新宿で女子たちと別れ、ポケットに手を突っ込み、埼京線のホームに向かう。

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