第4話 入学式
開式の言葉から始まり、来賓なり、校長の長い話が終わると、生徒会長の話が始まった。
生徒会長は小柄な美少女が出てきた。けれど、平均的な女子の身長から少し低いだけなので、それ程小柄でもない。太陽達の身長が高く、その周りも身長が高いので相対的に低く見えてしまうのだ。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。私は本校の総生徒会長の
人前で演説するのには慣れているのだろう、ハキハキとした声が、ホールに響き新入生達の心に響かせる。中にはうっとりした表情で、会長を見つめている生徒もいるほどだった。
(巳森……か。面倒だな)
そんな中、辰馬は美人な先輩に見惚れるでもなく、観察するような視線で吹雪を見つめている。ふと、前方に座っている心美が目に入った。隣には太陽の妹たちもいて、心美も同じように彼女に観察の視線を向けている。
すると、今度は大本命、新入生代表の挨拶になった。
月隠兄妹たちの手に力が入る。まるで、狙撃手のように真剣な表情で朝日の登場を持つ。すると、朝日が出てきた。
その瞬間、明らかに、ホール中の空気が変わる、呼吸すら忘れたように会場が静寂を包む。まるで、女神が降臨したような、神聖な空気で満たされていく。
その中心にいる朝日は緊張は顔に出さず、一歩一歩、段上中央に用意されている演壇の前へ向う。やがて到着し、台紙を広げ祝詞でも上げるかのように厳かな空気の中で喋り始める。
「本日はこの場に上がらせて、貰えた事を大変光栄に思います。そしてこの高校に入学できたからには、それで踏みとどまるような事はせず。学友となる皆様、父兄の皆様、そして学校関係者の皆様のお力をお借りして、日々精進に努めていきます。そして、より充実した将来の為に皆平等に与えられた機会を無駄にせず、より一層の努力を重ねていきたいと思います。これにて新入生代表の挨拶と致します。新入生代表 月隠朝日」
綺麗な声で新入生代表の挨拶を締める。すると、一瞬の静寂の後に、割れるような万雷の拍手が鳴り響く。
朝日は綺麗な一礼をしたあとに、踵を返して袖へ戻っていく。
朝日が去った後も拍手は鳴り響いていたが、少し待ったあとに司会役の教員から止めの合図がなされる。それで拍手は鳴り止みまた会場を静寂が包む。
そこからは出涸らしの様な閉式の挨拶がなされる。そのまま大した盛り上がりも見せず、卒業式は閉式された。
「太陽、ちゃんと撮れたか?」
「ふっ、全十二箇所の別カメラ達も正常に撮影を終了した。大成功だ」
「回収はちゃんと出来るのか?」
「さっき回収し終えた」
太陽と辰馬はいまいち、要領を得ない会話をしながら撤収準備に入る。太陽は手早く機材を片付けるとボストンバックに詰め込む。片付けが終わると、データカードを専用のケースへしまい懐へ納める。バックを背負うと次の目的に向かって歩き始める。
「よし、次は何だっけ?」
「申請書類一式の提出と学生証の交付だ」
「俺もついていっていいか?」
「ええよ。早めに行くか」
「おうよ」
「分かった」
決めると早いか、さっそく行動を移す一団。奇抜な格好をした生徒を先頭に学生証交付所を目指してい移動を開始した。
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