[4章3話-1]:そんなことしてどうするの?
そんな二人をずっと物陰から見ている二つの姿があった。
「なるほどぉ。こういう展開になったか……。でもここはデートでなくてもよく買い物に来ているはずなのに」
「もう、未来ちゃんたら、あの二人のデートをつけ回してどうするの?」
通路の隅で腕組みをしていたのは、健を見送ったはずの未来だった。
「だって、気になるじゃないですか。あの二人がどういうデートしてるのか。私だって参考にしたいくらいだし。里見さんは気にならない?」
「だって、あの二人はもう決まっているようなもんだし、今さらつけ回すのも趣味じゃないし」
もう一人、やれやれといった顔をしているのは、やはり珠実園の食事を預かる
実際問題、珠実園の中では健の彼女である茜音が登場したときから、二人のデートシーンというのはどんな感じなのかという話が良く出ていた。
茜音が珠実園に来ているときは、なるべく二人きりになることは避け、園の仕事を手伝うことに注力しているので、なかなかこの二人が言われているような恋人モードに入っている姿は見られない。
茜音の家に出入りすることができる未来ですらも、この二人がどのような会話をしているのかは聞いたことも無かった。
そこで、今回の二人のデートが決まったあと、未来が中心になって、二人のデートの追跡が健に極秘で計画された。
未来一人だけでは高校生二人の追跡をするには難しいことも考えられるし、何らかのトラブルに巻き込まれないとも限らない。茜音には健がついているからとしても、未来に誰もいないのではやはり不安だと言うことで、同行者を募ったのだが……。
『あんたもあきらめが悪いねぇ。今さらあの二人を邪魔する気?』
意外にも一番その話題に敏感そうだった高校生の組が真っ先に辞退した。
結局のところ、せっかく時間を超えて再会でき、幸せの絶頂にいる二人を刺激したくないというのが実際のようで、彼らと年が近いほどその傾向が強いようだった。
その下の中学生組にしても、茜音たちからのプレゼントをいろいろもらっていることもあって、いくら未来の頼みと言えども、素直に賛同できなかったらしい。
そこで白羽の矢を立てられてしまったのが、茜音や健と昔からの付き合いがある里見。
彼女もその話を持ちかけられた当初は同じように二人をつけ回すことには反対していた。
しかしそれでも未来が諦めないところを見て、さすがに卒園者兼現職員の一人として中学生を夜まで一人歩かせるわけにはいかないと、仕方なく説得に応じたのだった。
『いい未来ちゃん、その代わり条件があるからね』
出発前、里見は未来に言い聞かせる。
『あの二人のデート、絶対に邪魔するようなことはしてはダメ。もし少しでもそうなったら、無理矢理にでも帰るからね』
里見の普段見られないような大まじめな雰囲気に未来も頷くしかなかった。
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