6日目ーお礼とピンチ

フンッ、フンッ!

朝から庭で素振りをしている叶人。

昨日また愛梨に叩き出され新たな生物の討伐に向かった叶人は相変わらず実力不足を実感した。

「これはマズイな…」

そう思って今日から叶人は剣を持ち、素振りから始めることにした。

「98ッ…99ッ…100ゥ」

100回の素振りをし終わった叶人は汗だくだった。

ろくに運動をしていない叶人にとっては100回の素振りでも大量の体力を消費していた。

「これはまず体力をつけるところから始めないとダメだな…」

中庭の芝生の上で寝転がっていた叶人はフラフラと立ち上がってフラついた足取りで屋敷の中に入っていった。


屋敷の階段を上がり二階の自分の部屋へ戻った。

だが部屋の真ん中で愛梨が仁王立ちしていた。

「やっと帰ってきたわね。あんた素振りにどんだけ時間かけるのよ」

「なんでここにいんだよ…ってなんで俺が素振りしてるって知ってんだ?誰にも言ってないんだけど」

「ッ…そんなことどうでもいいでしょっ!」

一瞬明らかに動揺した愛梨は直ぐに話を切り替えた。

「とにかく。あんたに用があんのよ。着いて来なさい」

「俺を少しは休ませてくれよ…」

なんて俺の願いを聞く前に愛梨はスタスタドアへ向かって行きドアの前で振り返り

「早くしなさい」

と言った。

本当に兄のことを思ってくれない英雄だ。


仕方がなく着いて行った先は応接室だった。

「この先にあんたに用がある客がいるから対応よろしく」

「そんないきなり対応つっても…で、誰?」

「近くの村の村長らしいけど。じゃこれから用事あるからよろしくー」

そう言うと愛梨は駆け足で走って行ってしまった。

仕方ないのでドアを開けて入ると1人のおじさんが椅子に座っていた。

俺がドアを閉めるとこちらに気づきバッと立ち上がった。

「あなたがスネイダーを討伐したカナト様ですか?!お初にお目にかかります。私バナソルタ村の村長のタソマと申します」

タソマは深ーいお辞儀を繰り出してきた。

「あ、頭を上げて下さい。えーと。まぁ俺が叶人ですけど…一体どういったご用件で?」

「それはですね…」

声が聞こえたと思ったら顎に衝撃がはしる。

これがボクシングとかのアッパーなら気絶していたかもしれない。

勢いよく頭を上げたタソマが俺の顎に激突したのだった。

「いてーッ」

「痛た…申し訳ありません!私の不注意でこんなことに…。お怪我はございませんか?」

慌ててタソマが近づいてきた。

「だ、大丈夫。それより用って?」

「そうでしたね」

2歩下がったタソマは改まって再度頭を下げた。

「この度は私たちの村を守って頂き誠にありがとうございました!何かお礼をさせて頂きたく参った次第です」

「村を守った?何の話ですか?」

「あなたが倒したスネイダーは私たちの村へ度々やってきては荒らして去っていきました。それをカナトさんが倒してくれたので襲撃が無くなったんです!」

何気なく受けたクエストでここまで感謝されるとは思わなかった。

「いえいえ、たまたまスネイダーの討伐クエストを受けただけですから気にしないでください」

「しかし…それではお礼だけでも!今夜村で祭りがあるので是非来てください」

「じゃあ、祭りだけ行かせていただきますね」

(しかし丁度いいタイミングで祭りってマンガみたいだな。いや転生してる時点でもうマンガみたいなもんか。)だなんて思うがとりあえず祭りに行くことになった。

タソマは祭りの準備があるらしいので一時村に帰還。

俺も愛梨に行くって言っとかないといけない。

愛梨を探して屋敷をウロウロしていると使用人の人が何やら慌てふためいている。見た目はまるで子供のような人だった。

「どうしたんですか?」

声をかけると使用人の子?は一瞬驚いてこちらを見た。

「あ、カナトさんですか」

ホッとした様子を見せたので一応大丈夫かな。

「で、どうしたんですか?えーと…」

「セナと申します。実はこの近くの村にとある過激派が襲撃を仕掛けるらしく…」

「近くの村…」

まさかタソマたちの村?

「バナソルタ村というすぐ近くの村です」

「クソッ…!」

俺は走り出していた。

「カナトさん!」とセナの呼ぶ声が聞こえてきたがそんなことは知らない。

屋敷を飛び出してただひたすらに村へ走って行った。だが少しすると直ぐに息が切れてきた。

こういう時は体力の無い自分を恨みたくなる。

だが走るしかなかった。

「タソマ…無事でいろよ…」


村へ着くとそこではお祭りムードで賑わう人達で一杯だった。

タソマを探して村を歩いているとステージを装飾している人の中にタソマを見つけた。

「タソマーッ!」

駆け寄って来る俺を見つけたタソマはすぐにこっちへ来てくれた。

「カナトさん、ようこそお越し下さいました」

「いや、それより…ハァ、ハァ…この村に危機が迫っているんだ」

「危機…ですか?」

「あぁ今日この村に過激派の襲撃があるらしいんだよ」

言い終わった瞬間街の入り口付近から大きな爆発音が聞こえてきた。

行ってみるとそこには武装した数人の男がいた。

1番前の男は大きく息を吸い

「この村は俺たちが占拠する!」

と言い放った。俺は前に出て行って

「クソヤローが絶対させねー!」

と言った。

「ほう、面白い…。ならばやってみろ!」

村に緊張が走り、強い風がふいた。

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