第17話 真実というのは人を大胆にさせるものです
「私と、結婚を前提に……付き合ってくれませんか?」
それは彼女にしてみれば2度目の告白になる。
目を
そして、極めつけは周囲の目だ。
それだけやられて、その告白を断れるだけの人間がどこにいる。
「なぁ、
「やです」
「な、何が……?」
俺が何かを言うよりも先に、彼女は俺の言葉を否定した。
「良いよって言ってくれないと……嫌です」
やっぱり世の中の告白って拒否権がないものなのか……?
だとしたら告白したもん勝ちじゃん……。
めっちゃモテる人とか大変だなぁ……。
と、俺が現実逃避気味に世の常識に疑問を抱いていると、
「ま、待て。
「……はい?」
「……少し、考えさせてくれないか」
ひゅ、と乾いた息が
そして、彼女は喘ぐように何度も何度も呼吸を繰り返して……絞りだすように、言った。
「……ど、どうして、です……か」
「俺は……俺が、
「何でですか!」
「むしろ私の方が先輩に……っ!」
「
俺がそういって彼女を制すと、彼女は周囲の目を気にして……席に座った。
「
「ハル先輩以外の人にモテたって、意味がないんですよ」
「……少しだけ考えさせてほしい」
俺はそう言って……この告白を、保留するように彼女に頼んだ。
だが、彼女はわずかに逡巡すると、
「…………分かりました」
俺が考えていたよりも、あっという間にすっと引いた。
「良いのか?」
言っておいてなんだが、
すると、
「良いんです。……最初は、断られたらって思ってすごく怖かったんですけど、よく考えたら先輩の中で私と付き合うことが考えてもらえるくらい大きなことだって気がついて」
……
「だったら、好きになってもらえば良いんだって思ったんです」
「好きに?」
「はい! だって、ハル先輩が考えてる間に私のことを好きになったら……先輩から告白してくれる可能性だってあるんですよ」
ポジティブなのかネガティブなのか分かんねぇな、こいつ。
「それに……ハル先輩、知ってますか?」
「何が?」
「ハル先輩が私の頼み事を断ったことってほとんど無いんですよ」
「そうだっけ?」
でも、後輩のわがままくらいは聞いてやろうと思うのが先輩なんじゃないだろうか。
「だから、きっと今回のやつも……きっと」
……んんん?
最後にぽつりと
「もうこのお店、出ましょうか」
「……そうだな。居づらいし」
周りの視線をあまりに集めすぎた。
俺たちは全然手を付けてなかった飲み物を全て飲み干すと、逃げるように店を出た。
それで、俺たちは最初の目的だった茶碗を買いに雑貨屋に向かった。
「……良いのか? それで」
「はい。私も先輩とお揃いが良いです」
結局、俺たちが買ったのは……夫婦茶碗ではなかった。
俺が選んだお茶碗の1サイズ小さいものを
「……じゃあ、帰るか」
「その前に、1つ寄っていきたいところがあるんですけど……良いですか?」
「ああ、別に良いよ」
ショッピングモールから出ると、すでに夕刻だった。
太陽が半分沈みかけて、綺麗な夕焼けが見えていた。
「こっちです」
「ん? どっか行くの?」
「秘密のスポットです」
秘密、ね。
俺は少し楽しみにしながら、バスに乗り込んで揺られること十数分。
降りたのは、閑静な住宅街だった。
山を造成して作り上げた場所で、俺たちが住んでいる街より少し離れた場所にある。
「こっち側には全然来たことがなかったな……」
「私はむしろよく来るんです。1人になりたいときに」
「そんな時があるのか?」
1人暮らしをしている俺にはその感覚はよくわからない。
「そりゃありますよ。親と喧嘩したときとか、先輩にアピールしたのに振り向いてくれなかった時とか」
「…………」
ズキッと心が痛む。
「なーんて、冗談です。先輩が振り向いてくれないのは、私に勇気がないからですし」
まるで勇気を出したら俺が
「ここですよ」
住宅街の間を抜けるようにして、
だが山の真ん中に作られたそれは、落下防止用のフェンスの向こうに、俺たちの街を一望することができる、そんな小さな穴場スポットだった。
「……これは、凄いな」
「でしょう?」
そういうと、ちょうど太陽が西の向こうに沈んでしまい夜の闇の向こう側に無数の家の光が咲いた。
「ここは誰も使わないから、私だけの秘密の場所なんです」
「……良いのか? 俺に教えても」
「はい! だって、いつかここに先輩と一緒に来たかったんです」
「ありがとな。こんなに良い場所を教えてくれて」
「いいえ」
俺より頭1つ分小さい
「思い出を、ください」
そういって、俺の後頭部に手を回して引き寄せるように――唇を重ねた。それは余りに突然のことで、俺は何一つとして彼女の勢い任せになってしまい……勢い余ってしまい歯がぶつかった。
「〜〜〜っ!!」
それにくらっとするが、それは
「……やっぱり、初めてだとドラマみたいに上手にできないですね」
俺は
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