第34話 怪我
「どうした?坂田その手は?」
慶一道は秘書課の坂田を引き止め
聞いた、ぐるぐる巻きの手からは
少し赤い血が滲みでていた。
「い・え・・チョット💦
昨日柄にもなく料理してまして
手を切ってしまいました。」
「時間やるから病院行けよ。
そうだ、大仏部長、付いて
ってくれ。」
「いえ、大丈夫です。」
「ダメだダメだ、コッチが
痛くなるオレ血が苦手なんだよな‼⤵」
「副社長どうしま・・・坂田君?
ウワッ痛そう( *o* )」
「部長悪いが病院連れて
行って。」
「分かりました。
坂田君車、玄関に回すから
待っていなさい。」
そう言うと部長は部署を駆け足で
出て行った。
奏月と副社長に
抱えられた坂田を、玄関に回
した部長の赤い車に乗せた。
「では、行って参ります。」
運転席から部長、大仏恋子が
玄関先に立つ奏月と慶一道に
声をかける。
「頼んだぞ、部長。」
慶一道は頷きながら恋子に
言うとバタンとしまったドアを
見届けた。
部長の運転する車は
滑るように出て行った。
それから
部長は昼過ぎに会社に戻ってきた。
「どうだった?部長。」
「はい。
坂田君は早く帰しました・・・が?」
「ん?なんだその奥歯に挟まった
様な言い方は?」
「いえ、最近、坂田君なんか
変じゃありません?
思い詰めたような?
元気が無いような?」
「いや?そうかな?奏月
どう思う?」
「エッ‼ 別に普通じゃないで
しょうか?。」
「ん﹏お医者様の話では
あの怪我は、包丁じゃないん
じゃないか・・・と、
フルーツナイフにしても切れ
過ぎだと言われました。
七針も縫ってありますし
それに最近何か 暗いし、
考え事してボーっとした
時があるし。」
部長は顎に人差し指を立てながら
うーんと唸っていた。
「さっきも私に何か言いかけて
気まずい感じで口ごもった
んですよ。」
「じゃあさ
考え事してて、
切ったんじゃない?」
そう言う慶一道を見ながら
奏月は
「いや・・・むしろ彼の行動は
神経質に見えたんですが?」
「ええーっ‼ なんだよ、なんだよ
部長と居る時は考え事?
奏月と居る時は神経質?
意味わかんネ?」
3人は顎を右手の人差し指と親指で
抑えながら同じポーズで首を
捻っていた。
「気になる。女か?」
坂田は25歳、独身
真面目タイプの中肉中背
顔も悪くは無いのに、彼女も
いる様子も無い。
「もうもう、坂田君をあなた方と
一緒にしないでください‼よ。」
副社長と奏月は部長から言われ
バツ悪そうに、ポリポリと耳
の後ろを掻いた。
「ねえ奈緒、朝副社長玄関
に居なかった?
坂田さん達と?なんで?」
お昼休み、結衣ちゃんが
スピーカーの奈緒に聞いて来た。
「え‼ 本当?
気づかなかったよ。」
「へぇー、スピーカーの
奈緒が知らないなんて
変じゃない。」
「もう・・結衣ちゃんってバ。」
結衣ちゃんはズケズケと、言いたい
事を奈緒に言った。
依織は奈緒に気づかって結衣を
諌めた。
「ハハハまぁ、そんな事も
有るわよ。」
奈緒ちゃんはケラケラと
気にもせず、いつも通り笑いとばした。
明るく元気なのが奈緒ちゃんの
取り柄だ、回りがパーッと
明るくなる。
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